前編では中国を中心とした海外のキャッシュレス化状況と、そこから見える日本のキャッシュレス化推進に向けた課題をご紹介しました。後編では引き続きELESTYLE株式会社CEOの盧 迪(Lu Di)氏と共同印刷の決済・キャッシュレス事業を担当する仁島光則の対談で、課題を乗り越え日本のキャッシュレス化加速に向けて取り組むELESTYLEの事業と、そこから見えるキャッシュレス推進のカギをご紹介します。

ELESTYLE株式会社
2019年に基本サービスとなるマルチモバイル決済プラットフォーム「elepay」のリリースに加え、中小企業やスタートアップ向けにキャッシュレス決済導入に必要なシステムをパッケージ化した「One QR」プラットフォームを開発。モバイルキャッシュレス決済の市場シェア拡大に向けて事業を展開中。
共同印刷はトータルソリューションオフィスの重点取組施策である「ファイナンス分野でのサービス開発」、「データ流通支援事業」でのシナジーを見込み、2019年同社に出資。
主に以下の取り組みで連携を進めている。

  • ・決済を伴うサービス開発の基盤となる技術情報の確保
  • ・地域ポイント、仮想通貨と決済サービスが同じプラットフォームで運用できる技術提携先
  • ・決済サービスに関するデータ収集基盤
  • ・エンハンスメントサービスの新たな活用先

キャッシュレスはただの決済ではなく、サービスの入り口

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仁島:現在ELESTYLEではキャッシュレス化に向けてどのような取り組みをされていますか。

盧:日本はSuicaなど、当時としては先進的なサービスを持つモバイル先進国でしたが、いまは遅れてしまっています。決済方法が乱立し、加盟店となる事業者は困ってしまう状況です。さまざまな決済方法に対応しようとすると、APIやインターフェースがすべて異なっていて、開発や導入のコストが高くなります。入金も各決済でバラバラにされるので、確認するのも管理するのも手間がかかる。この複数の決済サービスのインターフェースを一本化して、開発と導入の負荷を下げるのが当社の「elepay」や「OneQR」というマルチモバイル決済プラットフォームです。

仁島:日本の場合は現金信仰とも言える現金に対する高い信頼性があり、キャッシュレス化が進んでも現金を持たないということはないと思います。とはいえ、キャッシュレスに向けて進んでいくのは間違いありません。今後は現金、クレジットカード、QR決済、NFC決済が並列するのでしょうか。

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盧:現金には現金のメリットがありますが、消費者が便利さを求めいているのは間違いありません。Suicaもとても便利で、日本の決済の多様化状態は変わらないと私も思います。だからこそ、決済の多様化を事業者が受け止められ、キャッシュレス化を進めるためには当社のサービスが必要になると思っています。複雑なものを簡単に。手間なものをお手軽に。それが当社プロダクトの存在価値ですね。
また、“キャッシュレス”はただの決済ではありません。その先に加盟店や消費者に利便性をはじめとした付加価値を提供する“サービスの入り口”なのです。QRを読み込めば裏ではウエブやシステムが立ち上がります。私たちはウエブサービスを開発しているのです。ただ現金がQRに変わるのではなく、その先の付加価値を目指さなければいけません。

仁島:たしかに、新型コロナウイルスによる状況が後押しになった面もありますが、Uber Eatsがあっという間にシェアを広げましたね。決済は入り口で、その先に新しい価値あるサービスを提供したのが要因かもしれません。

盧:そうですね。AlipayやWeChat Payのように、キャッシュレス決済と連動したサービスの充実が消費者側のキャッシュレス普及のキーです。日本ではまだそこが弱いんです。例えば当社がいま開発している“オフィスでお菓子などを販売するサービスを対象としたキャッシュレス決済システム”。現状のオフィス販売は100%現金です。それをキャッシュレスにすることで、消費者は小銭がなくて買えないことがなくなりますし、事業者にとっては現金回収が不要になります。今は回収のコストが必要なことに加え、回収にいくまでどの程度売れて、その商品の在庫がなくなっているかもわからない。キャッシュレスにすることによって事業者と消費者の両方にメリットをもたらす仕組みです。

仁島:日本には自動販売機が大量にありますが、これもすべてキャッシュレスになれば飲料の補充だけで現金の回収や補充が不要になって効率が高まりますよね。そのうえ在庫もわかるようになる。共同印刷では、今さまざまなビジネスシーンやチャネルへのキャッシュレス展開の提案をしています。

盧:「現状はほとんど現金の領域」をキャッシュレスに切り替えられるマーケットがいいですよね。NFC決済もすごく便利ですが、利用できるシーンが限られています。事業者側が設備を整える必要がありますし、返金対応も大変です。

決済により事業者と消費者がつながり、そこに付加価値が生まれていく

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仁島:キャッシュレスの普及には決済の先にあるサービスが重要とのお話がありましたが、中国では具体的にどのように利用されているのですか?。

盧:例えばAlipayやWeChat Payには信用スコアというものがあり、いろいろな場所で使うたびにスコアが上がります。このスコアが高いと長期のビザの発行ができたり、何かを借りる時にデポジットが不要になったりといったメリットがあります。そうなれば、契約や売買の際に、自分の信用を証明したり相手の信用を担保するためにかけているコストが不要になります。信用は自分の利便性にもつながりますし、適切な商取引を続けることが社会にもいい影響を与えるという仕組みです。
また、購買データや行動データとアプリの機能を利用して、さまざまなレコメンドや広告プラットフォームとしても利用されています。

仁島:日本では会員数で考えるとポイントカード運営企業が、かなりの数の国民のデータを把握していますよね。しかし最近、ポイントカードの勢いが下火のような気がします。いかがでしょうか。

盧:そうですね。ポイントカード運営企業が苦戦しているのは、「利用シーンの幅」の問題に要因があると思います。例えば楽天のように、一つのIDで通販はもちろん、旅行・証券・保険・電話もすべてつながっているとユーザーの利便性は高まります。ポイントカード運営企業は、そこが少し弱いと思います。これは先程お話した決済の先のサービス充実の必要性と同じ話ですね。

仁島:最近キャッシュレスと関連するトピックスとして、日本ではライブコマースが活気づいています。やはり中国でも活発に利用されているんでしょうか。

盧:流行っていますね。有名人やインフルエンサーのライブコマースには、やはり人が集まるので、商品を紹介して購買へ誘導というのはよく行われています。

仁島:さすがに中国のスケールはすごいですね。ライブコマースのイメージは中国でもテレビショッピングのようなものですか。

盧:そうですね。ライブコマースでは、すぐに購入ができるように画面には決済用のQRコードが出ています。そうしないとコンバージョンが落ちてしまいます。クレジットカードよりもずっと手軽で、購買動線として優れていますからね。

仁島:なるほど。ではELESTYLEとしての将来的な展望も決済の先の付加価値にあるのでしょうか。

盧:我々のビジョンは日本のキャッシュレス化を加速させることです。現在は20%程度のキャッシュレス決済比率を40%、60%、80%と高めるプロセスを加速させること。日本のキャッシュレス多様化による、事業者の導入負荷を少しでも軽減し、早く、楽に、安く導入できるようにすることで、消費者にも利便性を届けることです。
今はお金を出して商品を受け取って、それで終わりです。しかしキャッシュレスになれば、そこが始まりになる。決済をしたから事業者と消費者がつながる。そういうサービスを作っていきたいですね。

仁島:共同印刷もそのプロセスの後押しに加え、その先のサービスの充実に取り組んでいきます。昨年の共同印刷とELESTYLEの事業提携から引き続き、今後もキャッシュレス推進のパートナーとして決済の先の付加価値を生み出し、事業者と消費者に届けられるようサービス開発を進めていきましょう。

マルチモバイル決済プラットフォーム「elepay」
導入期間が短く、低コストで、多様な決済方法を一本化

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「elepay」を活用した決済プラットフォーム「OneQR」
店舗や商品登録をするだけですぐにモバイル決済のサービスを利用できます。
「OneQR」はこんなシーンで利用されています。

  • ・オフィス無人販売
  • ・小売店での支払い
  • ・飲食店でのモバイルオーダー(店内外での注文・支払い)
  • ・無人駐車場や駐輪場
  • ・ビジネスホテルのTVでの有料コンテンツ利用
  • ・自治体の税金収納
  • ・宅配ロッカーの受け取り

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「elepay」「OneQR」に関する問い合わせはこちら

ELESTYLE株式会社

CEO

盧 迪(Lu Di)

中国で日本からのオフショアによるガラケー向けウェブサービス開発を経験し、その後来日。オフショア関連の大手企業に駐在し、プロジェクト管理、開発を担当。2011年に楽天に入社し、楽天市場の海外展開に向けたECプラットフォーム構築に携わる。2016年起業し、CTOとして飲食店向けのサービスを立ち上げ。2018年からELESTYLE社のCEOに就任し、elepayとOneQRサービスを立ち上げた。

共同印刷株式会社

トータルソリューションオフィス

仁島 光則

メーカー系システムエンジニア、家業の印刷会社経営を経て、2006年2月に共同印刷へ入社。主に業務支援サービス(Commo-View、Form α、証明写真アプリ)の企画・開発や、交通系IC乗車券の物販システムの開発を経験し、2018年よりキャッシュレス決済事業に専従している。

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