台湾と言えば、小籠包や魯肉飯、水餃子などの肉を使った料理のイメージが強いですが、実は国民の約13%にあたる250万人以上がベジタリアンと言われ、これは世界でもトップクラスの数です。台湾には、道教・仏教・儒教を信仰する関係で肉や魚を食べない人が多くいます。そのため、一般のレストランでも、普通の食事をする人と一緒に楽しめるよう、ベジタリアン向けの食事が準備されているほど菜食は浸透しているのです。台湾ではベジタリアン料理を「素食」と呼び、肉や魚に似せたボリューム満点なものが特徴です。今回は、台湾の実情から紐解くインバウンド対策のヒントをご紹介します。

「ヘビーリピーター」が多い台湾観光客の現状

2018年JNTOの調査によると、訪日観光客数3,119万人のうち台湾人旅行者は約476万人にのぼります。台湾の人口2,359万人から考えると5人に1人が日本へ旅行していることになります。さらに驚くべきは日本を訪れる観光客のうち、80%以上がリピーターで来日回数が6回を超えるヘビーリピーターも3割近い28.9%を占めます。そのため、ツアー観光客よりも個人旅行で東京や大阪などの主要都市以外へも訪れるという特徴があります。また、台湾から地方都市への飛行機便も数多く、新潟や広島・宮崎と言った地方都市への訪問者もいます。

この状況から台湾の親日ぶりが伺えますが、ベジタリアンにとっては、日本への訪問は悩みも多いようです。上述のように国民の10%以上がベジタリアンということは、単純計算でも訪日台湾観光客の1割が該当することになります。一部の旅行会社では、ベジタリアン向けの旅行も扱っていますが数少ないのが実情です。朝食ではホテルのビュッフェ、昼食や夕食においては旅行会社がホテルや旅館と提携した特別食や精進料理が提供されます。個人旅行の場合は、一般レストランにベジタリアン向け料理がないこと、提供してくれるレストラン自体も数少なく探すのに一苦労だといいます。

さらに、肉を使用していなくても出汁自体に魚や動物由来のものの使用が多く、わからないことがよくあります。そのため、ベジタリアン向けのような料理があっても見た目で判断できず、注文できないことがよくあるそうです。日本へ来ても食事が楽しめず、毎日サラダやパンなどの「冷食」と呼ばれる冷たい食事、持参したカップラーメンという声が聞かれます。温かい食べ物を好む台湾人にとっては、かなり辛い体験と言えます。

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素食ランチ。中央手前から野菜炒め、大豆肉の酢豚風、胡麻団子、かぼちゃのカレー風春巻、マーボーナス、五穀米

台湾のベジタリアンと飲食店の対応は?

ベジタリアン大国とも言える台湾においても、他国と同じようにベジタリアン(あるいはヴィーガン)によって、食べるものが異なり下記のように4つに分類されています。

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しかし、ベジタリアンのほとんどが宗教に関係しているため、植物であっても「五葷(ネギ、ニラ、にんにく、玉ねぎ、ラッキョウ)」を食べないのが基本。所説ありますが、仏教(台湾では大乗仏教が主流)や道教では『興奮作用があり欲望を増長させる』ためとされているそうです。そのため、国内の素食と言えば、肉・魚・五葷が入っていないことが基本条件となります。

台湾の一般レストランでも、素食、または素食アレンジ可能なメニューをいくつか準備していることがほとんどで、メニューに明記されたり、材料の表示があったりします。さらに内容を見て、自分が素食者であることを店員に伝えれば素食用の食事を出してくれるのです(材料に肉や魚がなくても五葷が含まれる場合もあるため)。

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「可素」は素食向けアレンジ可能、「可?素」は?素向けアレンジ可能の意味。

訪日客の高い評価「材料表示」と「繁体字」メニュー

台湾で紹介されている、日本でのベジタリアン向けレストランとして「Mumokuteki café」や「阿古屋茶屋」などがあります。2軒ともベジタリアン専門店ではありませんが、「メニューに材料表示がされている」ことに評価が多くあります。言語の違う海外で簡単な英語やシンボルマークなど、わかりやすく内容が表記されているのは非常に大きな安心材料です。

ベジタリアン対応にあたっては、専門店のような大掛かりな規模で考える必要はありません。上述であげた台湾の一般レストランのように、メニューアレンジや材料表示によって十分対応可能です。日本では、海外の旅行客にも馴染みのある天ぷら(野菜)や豆腐、ご飯などベジタリアンでも食べられるものがたくさんあります。そのため、わかりやすく内容を表記するだけで選ぶ側の安心と選択肢が広がり、外食での気軽な食事も可能となるのです。

また、もう一つ評価されているのが「繁体字のメニュー」です。昨今の中国や台湾からの訪日客増加で、中国語のメニューを準備するところもありますが、多くは「簡体字」。中国で使用される「簡体字」と台湾の「繁体字」は似て非なるもの。台湾人の75%が自分たちは中国人ではないという認識を持つという調査結果もあり、繁体字のメニューは予想以上に好感度が高いようです。

台湾の訪日客を取り込むために欠かせないSNS

JNTOの資料では、観光やレジャーの予約を「ウェブサイトから」という人が60%近くにのぼり、2015年からの統計を比べても確実に増えています。また、「Tabiko」や「食べログ」などの予約専用アプリやネット予約の方法を紹介しているものもあり、それらがSNS上で拡散されたりシェアされることもあります。台湾人はSNSを利用する割合が非常に多く、人口の90%以上がFaceBook、87%以上がLineのアカウントを持っているという統計もあります。

そのため、予約だけの利用のみならず「下調べの手段」としてSNSを使用する割合も高くなっています。特に、素食向けのレストランなどは旅行雑誌やガイドブックに掲載されていることが少なく、過去に訪日した人たちのSNSから情報を得る手段が取られています。ウェブサイトやSNSは、言葉が通じない旅行客には安心であり、店舗側にとってもメニューや予約の注意点、情報を記載でき、双方にとってメリットがあります。

SNSによって、過去に一躍人気になった例は数え切れません。最近では、東京に半年ほど留学していた女性が日本の友人に頼まれ、簡単な日本語と台湾語で台湾の観光地やグルメを紹介した動画が10日で50万回以上再生され有名になりました。他にも、北京オリンピックで内村航平選手が好んで食べていたブラックサンダーが、台湾のブロガーに紹介され爆発的な人気になった例や、鎌倉高校前の風景が「スラムダンク」の聖地と紹介され、観光客が大挙しておしかけた例などがあります。

これらの事例を見てもわかるように、台湾の訪日客の取り込みにはSNSでのプロモーションは絶対的に不可欠であることがわかります。ベジタリアンやヴィーガンといった食の多様化に対応できる店舗は大きな強みとなるので、SNSで周知させれば自店舗への来店とリピートが約束されるのです。さらに言えば、インフルエンサーのような人々から情報発信をしてもらうことも大きな効果をもたらす方法の一つと言えます。

台湾紹介動画:

インバウンド対策のポイントをおさえて、さらなる集客を!

東京オリンピックを控え、加速の一途をたどる海外観光客。ちょっととした工夫で自店舗への誘導は可能となります。また、インバウンド対策としてすべてを自分で行うだけではなく、客観的な立場から外部の調査を受けるのもよいでしょう。訪日客にとっての今ある店舗の状況や利便性、満足度の把握、あるいはメニューにおいても、タブレットを活用した多言語対応なども1つの方法です。

共同印刷では、多くの企業が抱える「インバウンド対応」や「省人化」に対応するソリューションとして、タブレットによる『接客アプリ』やバーコード1つで商品情報を多言語で伝える『Payke』など、お客さまの課題に応じたご提案をしています。
2020年のオリンピックに向け、「何か対策をしなくては…」と思いながらも、どこから手をつけたらいいのかわからないという方は、是非一度お気軽にお問合せください。

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