最近ではリアル・Web問わずさまざまなプロモーションの手法が生まれています。そんななか、メルマガは“古く、効果が期待できないツール”と捉えられることもしばしばですが、マーケティング全体のなかできちんと役割を設定し、それに沿った運用を行うことで“まだまだ使えるツール”です。
今回はメルマガの効果を上げる(=コンバージョンを獲得する)ための基本となるポイントをご紹介します。
メルマガの4つの効果指標を把握する
メルマガの最終的な目的は、おそらく商品やサービスの購買、問い合わせや資料請求と言った場合が多いかと思います。しかし、その前段階となる各指標も見逃すことはできません。
1.到達率(不達率)
メルマガがユーザーに届いているかの指標です。通常は90%後半(かなり100%に近い)の数値となりますが、もし低いようであれば、配信システムや配信時の設定を確認して下さい。
2.開封率
メルマガがどれくらい開封されているかの指標です。メールの内容や配信対象にもよりますが、10%~30%程度が目安で、ひと桁の場合は運用の見直しが必要です。
3.クリック率
メルマガ内のリンクがどれだけ参照されたかの指標です。一般的にはこれがコンバージョンに最も近い指標となります。開封したユーザーがどれだけクリックしたかを測定するために、「開封済みクリック率(配信数ではなく開封者数を母数と捉えてクリック率を測定)」という形で判断するケースもあります。
そうするとメルマガの課題がどのステップにあるかを的確に把握できます。
4.解除率
メルマガは通常「配信者の情報」と「メルマガ解除への誘導」を添えて配信します。その解除への誘導からどれだけの解除が行われたかの指標です。メルマガが必要とされていないコンテンツになっていないか検討するための数値となります。
[具体例]
10,000人にメールを配信し、届いたのが9,950通、メールを開いた人が2,500人、メール内のリンクをクリックした人が300人、解除した人が10人の場合
到達率 99.5%
開封率 25.0%
クリック率 3.0%(開封済みクリック率 12.0%)
解除率 0.1%
となります。
メルマガの指標を改善する手法とは?
上記の4つの指標を改善したい場合にどういった手法があるのかを個別にご紹介します。
①到達率改善の手法
- ・メルマガ登録時にセキュリティー等の設定について明記する
特にスマホのキャリアアドレスへの配信では、デフォルトのフィルター設定でキャリア以外のドメインからのメールが届きにくい状態が多くあります。フィルターの設定や、ドメインの指定受信についてのフォローをしておくと効果的です。
- ・配信対象アドレス(ドメイン)、デバイスに合わせた配信フォーマットを検討する
上記のフィルター設定と同じく、フィーチャーフォンへの配信ではHTMLメールが届かないケースが多くあります。最近では多くのメールシステムがレスポンシブデザイン(デバイスによる表示の切り替え)や、マルチパート配信(HTMLとTEXTを両方作成し、HTMLが届かないユーザーにはTEXTを配信する)に対応しています。
- ・定期的なアドレスのクリーニングをする
アドレスの変更や、セキュリティーに引っ掛かっている場合などで、長期間届かないアドレスについては定期的な整理も場合によっては必要となります。
②開封率改善の手法
- ・SNSで告知
読者のなかには、普段メールチェックをあまり行わない人もいるでしょう。しかし、その場合でも、SNSのチェックは習慣的になっていることも。メルマガの配信をSNSで告知することで、そうした読者に気付いてもらいやすくなります。
- ・件名を工夫する
開封率に最も影響する要素と言われるのが件名です。デバイスによってメール一覧に表示される件名の文字数が異なるので、できる限り短く、キャッチーで、ターゲットインサイトを突くコピーが必要です。また、定期的に開封してもらえるユーザーが多いメルマガであれば、媒体名や会社名を件名に入れるのも効果的です。
- ・配信する日時を工夫する
一般的に“メルマガが開封されやすい日時”というものがあります。
時間では「朝の通勤時」「昼休みの前後」、曜日では「月曜日」、「火曜日」が高いと言われています。読者の行動に合わせて配信時間を変えるシステムもありますが、そのようなシステムを使用しない場合は、配信日時を固定することでメールを読むことが習慣になり、継続的な購読を期待できる可能性もあります。
ただし、開封率が下がってきている場合は、ほかの曜日や時間の配信を試してみるのもよいでしょう。上述の通り、一般には「火曜日」「月曜日」の開封率が高いと言われていますが、そうした曜日には、ほかの企業のメルマガも集中して送られるかもしれません。そのため、自社のメルマガが目立たずにスルーされてしまう可能性もあります。
③クリック率改善の手法
クリック率についてはメールの内容、配信ターゲットによって大きく異なりますが、いかにターゲットニーズにマッチした情報を提供できるかが重要となります。
- ・カスタマイゼーション
全ユーザーに同一のメールを送るのではなく、宛名の差し込みや個別に内容をカスタマイズしたメールを配信することで大きくクリック率を改善するケースがあります。
- ・文面はシンプルに
読者が知りたいことを端的に分かりやすく伝える文章になっているか、確認しましょう。だらだらと長い文章を掲載して、「しつこい」「くどい」といった印象を持たれないようにしなければなりません。「企業の言いたいこと」をすべて盛り込むのではなく、読者目線で作成することが大切です。詳しい情報についてはリンク先でチェックしてもらうといった工夫をしましょう。
- ・ステップメールの活用
ぜひとも伝えたいことがたくさんあるけど、一度に伝えるのは難しい……といった場合は、ステップメールの活用も検討するとよいでしょう。例えば、商品サンプルを送付した顧客に対し、まずは到着確認を兼ねたあいさつメールを送り、少し時間をおいてから商品の感想を尋ねるメールを送信。さらにサンプルを使い切るころを見計らって、初回購入特典付きのメールを送る……といった具合にシナリオの流れを作り、複数回にわたって情報を送信する方法です。
この場合、メルマガ内のリンク先候補は以下の通りです。
- ・初回のメール:サンプル使用者の感想が掲載されたページなど
- ・2回目のメール:商品の詳細情報や開発秘話のページなど
- ・最後のメール:商品購入ページなど
ユーザーが購入時の各ステップに必要な情報にたどり着けるよう、適切なリンクを設けましょう。
※ステップメールの詳細については、こちらをご覧ください。
→ステップメールを5分で理解できる!自社の事例とノウハウを公開
- ・リンクを適切な位置に
メルマガ内のリンクは、分かりやすい位置に配置しましょう。文章の合間に入れる場合は、「詳細を見たい」と思わせる文の直後にリンクを入れ、CTAボタンを配置する場合には、どんなアクションにつながるのかを明確に示す必要があります。「ほしいものリスト」に商品を保存できるのか、「商品の詳細」を見られるのかといったことが、ひと目で分かるようなデザインにしましょう。
- ・件名と本文の内容をそろえる
基本的なことではありますが、件名と本文の内容は一致させる必要があります。
一見、簡単なことにも思えますが、件名に凝りすぎたり、あとから件名を変えたりすることでだんだんと本文と合わないものになってくることもあるので注意が必要です。特に本文の冒頭は件名とぴったり合っていると感じられるものにしましょう。本文を読み始めたときに件名とのギャップがあると、信用を失いかねません。
④解除率改善の手法
- ・配信頻度、時間の工夫
あまりに配信が頻繁すぎると「うっとおしいメール」として解除されるリスクが高くなります。また、深夜・早朝等のように、通常であればメールが邪魔になる時間での配信も避けたほうがよいでしょう。
- ・脱マンネリ化
これはすべての指標に共通しますが、同じような内容でメルマガの運用を続けているとユーザーは飽き、メールを必要としなくなります。定期的に変化を付けるような内容のメールや、フォーマット・デザインの見直しなどを行い、マンネリ化をできる限り防いでいくのも重要です。
読者のセグメント化・配信リストの見直し
開封率、クリック率、解除率の改善を目指す際には、読者のセグメント化・配信リストについても見直してみましょう。
メルマガ配信リストの作成時には、業種・地域・年齢・性別・企業規模、過去の購買履歴(購入額、カート放棄含む)・Webサイトの行動履歴などによって読者のセグメント化を行いますが、現時点で適切なセグメント分けや配信リストができているでしょうか。
例えば、業界全般のデータが掲載されたホワイトペーパーを資料請求したユーザーと、特定の商品に関する詳細情報の資料をダウンロードしたユーザーとでは、求める情報が異なるためセグメントを別にして、配信リストを分ける必要があるでしょう。
コンテンツの見直し
メルマガをもっと読んでもらうためには、コンテンツの見直しも行いましょう。
例えば、商品のプロモーション用にメルマガを配信する際には、単にその商品の特徴を表すだけでは、物足りない場合があります。以下のような要素があると、より魅力的なメルマガになるでしょう。
- ・ストーリー性
その商品を使ってみたら、どのようなストーリーが生まれるか、商品が誕生するまでにどのようなストーリーがあったかといった「物語」があると、読者の興味を引きやすいとされています。
- ・独自性・希少性
自社が企画したセミナーやイベントの様子をリポートしたり、競合製品にない特長を動画で見せたりするなど、他社のメルマガにないコンテンツを含めると、差別化を図りやすくなります。スタッフの裏話も、「ストーリー性」と「独自性」の両方を兼ね備えたコンテンツとして、読者を魅了することが期待できるでしょう。
- ・エンターテインメント性
クイズ形式、面白い動画へのリンクなど、読者を「楽しませる」コンテンツも魅力的です。例えば、「○○と××、髪の悩みで多いのはどっち?」といった問いかけのあと、「答えはこちら」とリンク先の動画へ誘導するといったように。一方的に情報を伝えるのではなく、読者にも一緒に考えてもらうことで、コンテンツに引き込む方法です。
「メルマガ」から「メールマーケティング」へ
ここまでメルマガのコンバージョン向上のための方法をご紹介してきましたが、今マーケティングでCRMを中心としたOne to Oneが重要視されているように、メルマガでもユーザーごとに寄り添った動きは必須です。
CRMツール、MAツールの活用でユーザーに個別最適化した「シナリオメール(ステップメール)」「レコメンドメール」が以前よりも手軽に運用できるようになってきました。
しかし、そこにはコンテンツとしてだけでなくマーケティング的な視点での総合的な設計が求められます。メルマガからメールマーケティングへ。メールはまだまだ“有効なツール”です。なんとなく配信してしまっているメルマガは、ぜひ一度見直してみてください。