2015年末頃から、2016年はIoT元年になると盛り上がりを見せ、実際に年初は様々な話題が出ていました。しかし、いつの間にかトーンダウンし話題もVRに取って代わられた感もあるIoT。IoT元年の2016年がどのように過ぎていったかを振り返ります。
「あれ?鍵かけたっけ?」の不安を解消するスマートロック
最近コンシューマー向けで注目を浴び、各社が商品展開をしているのがスマホで家のカギの開閉が可能な、スマートロックシステムです。ドアに専用の装置を取り付けスマホでカギの開閉操作を行うと、装置が動きカギが開いたり閉まったりするという仕組み。
スマホでいつでもカギの状態をチェックできるため、朝家を出てしばらくして「あれ、ちゃんと鍵かけたっけ?」と不安に思うことも、確認しにわざわざ家に戻ること(戻ってもたいていちゃんと閉まってますよね)も、カギが見当たらなくて家に入れないなんてこともなくなるかもしれません。(スマホをなくしてしまっては元も子もありませんが)
革新的イノベーションよりもまずは不便の解消
IoTが浸透しきれていない背景には、「IoTが生活にどのように貢献するのか?」という点で消費者がイメージ出来ていないという点も影響しています。(そもそもIoT自体なんのことだ?というケースもまだまだあります)
そのため、全く新しいツールやソリューションよりも、カギの閉め忘れやその不安を解消するような、日常の不便・不安を解消できる身近なサービスから導入が進んでいくことになりそうです。共働き家庭の増加を受けて、学校から帰宅した子供の様子が分かるサービスなども多く開発が進んでいます。
急速に進む工場のIoT導入
消費者向けへの浸透が足踏みしている一方、製造の現場ではIoTの導入が進んでいます。工場などにIoTを導入するステップとしては、第一段階でIoT機器を導入し各種データを取得することによる「情報の見える化」が行われ、第二段階で「データの分析」、第三段階で分析を元にした「改善・最適化」、最終段階で「自動化」となります。効率的な生産・管理の仕組みが求められる工場では、「スマート工場」「IoT工場」の実現に向けて動き出しています。
具体的な例としては
- 各部門、機器で使用しているエネルギー
- 人やモノの動き、流れ
- モノの流れ
等を定量的に測定し、ムダがないか?どうすれば改善できるか?を検討し、人員の配置やマニュアルの調整、ラインの再構築を進めていくことになります。
懸念されていたセキュリティーリスクが顕在化
10月にアメリカの大手動画配信サイトNetflixやSNSのTwitterへアクセスできなくなる障害が発生。その原因はセキュリティーの脆弱なIoT機器を乗っ取り、特定のサーバへのリクエストを大量に送ることで負荷を掛けてシステム障害を発生させるウィルスの影響と見られています。
IoTの浸透により、ネットワークに接続されるデバイス数は爆発的に増加。そのセキュリティーリスクは以前から指摘されていましたが、実際に大規模な障害へと発展するケースが出てきました。
セキュリティー問題は今後のIoT普及のボトルネックとして、業界全体で取り組むべき課題となっていきます。
まずは業務ツールとしての普及が先行か
上記のように消費者向けの製品では、使用シーンや用途の限定が難しくセキュリティーの管理が膨大なものとなることもあり、やはりまずは業務用での各種IoTデバイスが先行して利用され、家庭用としても普及していくという流れになりそうです。
静かに過ぎてしまったIoT元年にも思われますが、業務ベースでは確かに普及が進んだ1年と言えるのではないでしょうか。