ヨーロッパの中でも人気の旅行先の一つであるドイツ。そのイメージといえば、民族衣装に身を包んだ人々やビール、ソーセージなどを連想する人が多いのではないでしょうか。このイメージは、世界最大級のビールのお祭り”オクトーバーフェスト”に由来しているのかもしれません。

「O’zapft is!」(酒が出たよ!)の掛け声で始まる、ビールの本場として有名なミュンヘンの”オクトーバーフェスト”は、毎年9月中旬から10月初めの16日間続き、その起源は1810年にさかのぼり、200年以上の歴史がある祭典です。地元民だけではなく、世界各地からの観光客を巻き込んだ、まさに世界最大級の民族祭と言われています。

今回は、そんな2世紀以上にわたって続く大規模なドイツのお祭りとその経済効果をご紹介しながら、ドイツ人はもちろん、世界中の老若男女に愛され、リピートされ、消費につなげる秘訣を探っていきます。

オクトーバーフェストの経済効果

国内外から支持されるこのビール祭り。2015年には、42ヘクタールの広大な会場のうち約31ヘクタール部分に144の飲食店が出店しました。過去35年間(1980-2015)の平均来場者数は630万人、ビールの平均消費量は570万リットルとされています。2015年は、約750万リットルのビールが消費され、ビールの価格は1マース(1リットル)あたり10ユーロ強。2016年も、同等の価格になると予想されています。
売上規模では、2014年に会場だけで3億7千万ユーロ強(約410億円強:1ユーロ=112円)を売り上げたと計算されており、来場者一人当たりの支出にして約60ユーロ(約6,700円)。その他、来場者による会場へのタクシーや各種公共交通機関の利用、ミュンヘン滞在中のホテルやレストランの利用、お土産の購入など、会場外でも多大な経済効果をもたらします。

会場では、6つの地元大手ブルワリー(ビール醸造所)が、恒例のヴィーゼンツェルト(Wiesenzelt)と呼ばれる巨大テントを出店します。このテント内で歌ったり踊ったりしている人たちの様子はテレビなどでよく報道されており、ご覧になったことがある方もいるのではないでしょうか。テント内の席は特に人気があり、インターネットでも予約ができますが、混みあう日付・時間帯によっては、夏にはすでに予約が一杯になっている場合もあります。

「本場の体験」が初来場者を満足させ、「変わらない安心感」がリピーターを生む

昨今、世界各地でオクトーバーフェストにあやかったビール祭りが催されており、そこではさまざまなビールが提供され、「本場風」の雰囲気を楽しむことができます。しかし、そんな中でも毎年本場ミュンヘンには、引きも切らず世界中から観光客が押し寄せます。オクトーバーフェストの時期は、ホテル料金も割増になっているにも関わらず、ミュンヘン市内のホテルの予約を取ることは至難の業。そこまで人を惹きつけるオクトーバーフェストの魅力とは一体何なのでしょうか。

ひとつには、ミュンヘン・バイエルンのビール純粋令を守り醸造された(しかも通常のビールよりちょっとだけアルコール度の高い)ビールと、ソーセージやプレッツエル、バイエルン料理等の本場伝統のおつまみの提供が挙げられます。

そして、次なる魅力は、本場のビール祭りの独特の雰囲気を醸し出す、老若男女が身にまとっている南ドイツの民族衣装(男性はレーダーホーゼ、女性はディアンドル)といっても過言ではないでしょう。現地に行ってみると、地元の人々はもちろんのこと、観光客までがかわいらしい民族衣装に身を包み、ビールを片手に”即席地元民”となり、お祭りを楽しんでいます。この時期は特に、ミュンヘンの街中でも多くの人々が民族衣装をまとって歩いているのを目にします。

初めて訪れる人に、思い描いていたイメージを実際に体験させることによって満足させ、リピーターには変わらぬ安心感を与え続けていることが、老若男女に長年支持されている秘訣。流行の移り変わりや、時代の変化が特に速くなってきている昨今、一方でこのように「伝統的なもの」「変化しないもの」に人々は安心感を見出し、惹きつけられているのではないでしょうか。

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毎年変化する関連商品グッズ

ビールや食事は伝統に忠実な一方で、関連グッズは毎年変化を見せ、来場者の購買意欲を刺激します。例えば、毎年デザインが変わるオクトーバーフェスト仕様のビアジョッキや、レープクーヘンと呼ばれるドイツ風ジンジャーブレッドに名前や文字を入れてもらったものなど、毎年訪れるリピーターにもお土産として人気です。

また、女性用民族衣装ディアンドルは、一見あまり変化がないように見えて、実はトレンドがあります。スカート丈やデザインなど、今年の流行を紹介するウェブサイトまであるくらいです。

参照リンク:
Wiesn Trachten – Die neuen Dirndl Trends 2016
Willkommen beim Wiesn Shop
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ビールを飲まない人たちをも惹きつけるオクトーバーフェスト

その他、実は子どもたちやビールを飲まない人々も楽しめるようなお祭りになっているのも、人気の秘訣。オクトーバーフェストはビールの祭典として有名ですが、テント内外ではアルコールフリーのビールも販売され、子ども(もちろん大人も!)が楽しめるような移動遊園地もあります。飲食店がこの絶好の販売のチャンスを見逃すはずはなく、テント外ではソフトドリンクとケーキやパンが食べられるようなカフェやお店も多数出店しています。 オクトーバーフェストでは、元々ビール祭りに興味がない人でも、現地に行ってテントに入ると、それだけで(ビールを飲まなくても)その雰囲気に酔いしれ楽しくなってしまうといわれています。ドイツ人のみならず世界中の老若男女を虜にし大いに盛り上がるオクトーバーフェスト。この2世紀以上もリピートされ、にぎわいが続くお祭りから学べるヒントをいくつかご紹介しました。百聞は一見にしかず。ぜひ本場で体験してみてはいかがでしょうか。

参照リンク:
Daten und Zahlen zum Münchner Oktoberfest
Eine halbe Milliarde für zwei Wochen Wiesn
Das “Wiesnzelt”

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