地元に密着し、そこで暮らす人々に愛される企業を築くことは、容易なことではありません。企業の利益を追求するだけでなく、そこで働く地元の人々の生活をどのように潤し、その環境をいかに守り向上させていくかが重要なポイントになります。そこで今回ご紹介したいのが、地域との結びつきを深めながらブランドの設立を成功させた「マーリー・コーヒー」。レゲエミュージシャンのボブ・マーリー氏の息子であるローハンさんが、故郷ジャマイカで立ち上げたグルメ・コーヒーブランドです。
マーリー・コーヒーのゴール
ボブ・マーリー氏の息子ローハンさんは、12歳で故郷のジャマイカを去った後、米国のマイアミ大学やカナディアンフットボールリーグで活躍していたフットボール選手です。そんな彼がフットボールの世界から引退した後、友人に「ジャマイカに土地を買わないか」と持ちかけられたのは、27歳の時でした。
その土地を自分の目で確かめてみよう……そんな思いでジャマイカを訪れたローハンさんは、豊かな土地に生える果樹や美しい水の流れに感動。その場で土地の購入を即決します。この時、現地の人々と会話を交わし、その土地や住民に関する情報の収集を行った結果、ローハンさんはそこで名産物のコーヒー作りをすることに決めました。
さっそく、輸出免許やオーガニック認定、コーヒー栽培者ライセンスなどの取得に乗り出したものの、ビジネスは難航します。厳しい状況にありながらも、ローハンさんは企業設立当時に自分で立てた「利益を出せるビジネスを作り上げるならば、地域の人々の生活もより良くしてあげたい」というゴールを忘れませんでした。
オーガニックコーヒーへのこだわり
「オーガニック」と耳にすると、それは企業が消費者に商品の魅力をアピールするための宣伝文句のように感じるかもしれません。しかし忘れてはならないのが、オーガニック栽培は環境にも優しいプロセスであるということです。
コーヒー豆を栽培・収穫する過程においては、その地域の川や飲料水が汚染されてしまうという問題が発生することがあります。「地域の人々の生活」に重きを置いているマーリー・コーヒーでは、化学薬品を使わないオーガニック栽培を行うのはもちろんのこと、水質汚染への対策も惜しみません。
こちらはマーリー・コーヒーのプロモーションビデオです。マーリー・コーヒーが目指す「Sustainable Farming(サスタイナブル・ファーミング)」について語っており、環境問題への取り組みや地域との密接なつながりについて説明しています。
Marley Coffee Sustainable Farming
カルファルニア大学のSustainable Agriculture Research and Education Program (SAREP)によると、 Sustainable Farmingとは、「環境衛生」「経済的採算性」「人々の社会的・経済的平等」を結合させたスタイルの農業です。マーリー・コーヒーではコーヒー栽培が盛んなエチオピアで水質保護の活動を行っている「Water Wise Coffee」というプロジェクトと提携しており、環境問題への取り組みや多くの募金を行っています。
地域の人々の生活を豊かに
マーリー・コーヒーの募金は環境問題への取り組みだけでなく、地域の人々の生活向上のためにも行われています。こちらの動画はマーリー・コーヒーが農場に隣接した地元の学校に寄付を行った時のものです。
Marley Coffee Presents Check to Chepstowe School
動画の中でローハンさんは「このコミュニティーに住む人々は、我々のために働いてくれている。この募金はそういった人々への恩返しの一環であり、当然のことである」と言っています。
企業が入りこむことで、その地域の環境を壊すことをしない。そして地域の人々の生活をより豊かなものにできるよう、最善を尽くす。マーリー・コーヒーの成功の裏には、地域との結びつきを深めるために行ってきた数々の努力があるのです。
地域との関係性を企業の強みにする
企業を育てる過程において、地域の協力を得ることは大切なステップになります。そしてそのためには、マーリー・コーヒーのように強い信念を持ってブランド作りを行うことが大切といえるでしょう。地域の人々に対しての自社のアピールポイントとは何か。そしてそのアピールポイントを、実現し人々の役に立つためには一体どんなことができるのか。これらをしっかりと考えることで、地元との結びつきが強い企業を作り上げることが可能になり、成功につながるのです。