特定の顧客に向けて個別にさまざまな案内を送信できるダイレクトメール(以下、DM)は、インターネットが普及した現在においても、販促や来店促進のための便利かつ効果的な手法として広く活用されています。しかし、その便利なツールも一歩使い方を間違えれば思わぬ問題につながりかねないリスクをはらんでいます。

この記事では違法なDMの送達で失敗しないために知っておくべき「信書」の規制について解説します。

いつものDM、どう送っていますか?

インターネット通販の発展を受けて運送サービスは目覚ましく発展し、モノを送る手段は数十年前と比べて豊富になりました。民間の運送会社各社が宅配便やメール便といった特徴のある新しいサービスを開発しているので、商品のみならずサンプルやカタログなどの送付に、そうした運送サービスを利用している企業も少なくありません。

けれども、特定顧客に宛てたDMを送付する際には少々注意が必要です。というのも、「信書」に当たる文書を定められた手段以外で送付すると違法となる場合があるからです。

信書の意味

そもそも「信書」とは、どのようなものを指すのでしょうか。例えば、誰か特定の人物に対して宛てて送る、いわゆる「手紙」や「はがき」などはこの「信書」に該当します。では、納品書や領収書などはどうなのか? など、いろいろと疑問が湧くかもしれませんね。そのようなときには、総務省のガイドラインが参考になるでしょう。

総務省が公開している「信書のガイドライン」(※1)では、以下のように定義されています。

信書とは

「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と郵便法及び信書便法に規定されているもののことです。

  • ・「特定の受取人」とは
    差出人がその意思又は事実の通知を受ける者として特に定めた者です。
  • 「意思を表示し、又は事実を通知する」とは
    差出人の考えや思いを表現し、又は現実に起こりもしくは存在する事柄等の事実を伝えることです。
  • ・「文書」とは
    文字、記号、符号等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物のことです(電磁的記録物を送付しても信書の送達には該当しません。)

※1: 総務省|信書便事業|信書のガイドライン

例えば、特定の相手に宛てた手紙や納品書・領収書の類、証明書の類などが信書に当たり、こうした信書に当たる文書は原則として日本郵便の提供する手法(※2)で送付することが定められています。

※2:ゆうパック、ゆうメール、ゆうパケット、クリックポスト以外の日本郵便のサービス。例えば普通郵便。

参考:信書を送ることができるのはどのようなサービスですか? – 日本郵便

このルールに違反した場合は郵便法第76条違反に問われ、3年以下の懲役又は360万円以下の罰金を課せられる場合があります。ヤマト運輸がこの問題を受けて2015年に「クロネコメール便」を廃止したのは、記憶に新しいところです。

レターパックの利用

上述のように、信書をゆうパックやゆうパケットなどで送ることはできませんが、「レターパック」で送ることは可能です。

レターパックには「レターパックプラス」「レターパックライト」の2種類があります。重量制限はどちらも4㎏ですが、レターパックライトのほうは厚さの制限は3㎝までとなっています。レターパックプラスは集荷も可能で、届け先へは対面で配達されます。また、配達時に受領印や署名をもらうため、より確実な送付方法といえるでしょう。

ただし、どちらのレターパックも「一部の切取りその他の加工をしたものは引き受けられない」など、注意すべき条件がありますので、事前に確認しましょう。

※レターパックの送り方は以下のページで確認できます。

レターパック – 日本郵便

信書便事業者の利用も可能

日本郵便以外の運送会社が一切信書を送達できないのかというと、そういうわけではありません。信書便法に基づいて総務大臣の許可を受けた企業は「信書便事業者」として信書の送達を行うことが可能です。例えば、佐川急便には信書を送達するための「飛脚特定信書便」というサービスがあり、このサービスを利用して請求書や証明書などの信書を送ることができます。

ダイレクトメールは「信書」なのか?

それでは、DMは「信書」に当たるのでしょうか? 実は、同じDMであっても文書の内容によって信書かそうでないかが決まります。

前出の「信書のガイドライン」によれば、文書自体に受取人が記載されている文書や、特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文書は信書に当たります。一方、受取人の名前が記載されず、不特定多数に配布することを前提として作られたチラシやパンフレットなどは信書には該当しないとされています。

しかし、受取人の具体的な名前が記載されていないものでも、信書に該当するケースがあります。
例えば「○○カード会員のみなさまへ」「△△化粧品ユーザーの方へ」など、
商品の購入や契約関係など差出人が特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている場合は信書に該当するため、注意が必要です。

※総務省「信書の定義について ~ガイドラインの基本的考え方を中心に~」

昨今のDMでは文書そのものに顧客の名前を差し込むことが増えてきていますが、こうしたDMは信書に当たり、メール便といった指定外の手法で発送すると違法となってしまうのです。

逆に、文書自体に受取人の名前が記載されていないチラシのようなものは信書には当たらないため、メール便で送付しても特に問題はありません。また、ネット通販業者が商品を発送する際に添える納品書やあいさつ状などは、信書であっても宅配便に同封することが認められています。この場合、あくまでも荷物が主で文書が従の関係であり、かつ無封(封をしない)の状態である必要があります。

個人情報保護法にも注意

顧客にDMを送付する際、宛先の情報はどこから得ていますか?

「自社にある顧客のデータベースから」というケースが多いのではないでしょうか。ここで注意したいのが、そのデータベースをどのような情報から作成したか、ということです。

例えば、展示会やセミナーなどのイベントで得た名刺をもとに顧客データベースを作成したとしましょう。その場合、名刺を渡された時に「こちらの住所宛てにDMを送付させていただきます」などと相手に利用目的を伝えていなければ、そのデータベースを使用してDMを送ることは、個人情報保護法違反となってしまいます。

以前であれば、取り扱う個人情報の数が5000人分以下であれば、その企業は「個人情報取扱事業者」にはあたりませんでした。しかし個人情報保護法は平成29年5月30日から新しい内容で施行されており、現在は、例えば1000人分のデータベースであっても、上述のような方法で作成してDMを送ることは許されません。もちろん、不正な手段で取得された名簿の住所にDMを送ることも問題となります。

DMを準備・送付する際には、個人情報保護法の観点から問題がないよう、十分に留意するようにしましょう。

「信書」を理解して安心・安全なDM発送を

このように、「信書」の定義は知ってしまえば比較的明快なものですが、日々のDM発送業務のなかで、ちょっとした手違いにより不正な手段で信書を送ってしまうリスクは少なくありません。DMの発送に携わる方は下記のページを一読のうえ、信書に関する理解を深めておきましょう。分かりやすい動画による説明も公開されています。

総務省|信書便事業のページ

なお、こうしたリスクを回避しつつ安全かつ効率的にDMを発送できるという点で、DM発送業務のアウトソーシングも有効な手段のひとつです。専門知識を持つ担当者にDMの内容に応じた適切な送達手段を選定してもらえば、意図せぬ失敗を犯す心配もなくなります。また、DMの企画・作成から発送までをトータルに支援するサービスなら、業務効率やコストの面でもメリットがあります。

貴社が定期的に一定量のDMを発送しているのであれば、一度、DMの設計段階からアウトソーシングを検討されてみてはいかがでしょうか?

共同印刷ではDMの企画・デザイン~製造、配送までをトータルでサポート可能です。
お客さまの課題に応じたご提案をしておりますので、お気軽にお問合せください。

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DM(ダイレクトメール)

(2019年7月更新)

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