新型コロナウイルス感染拡大による「緊急事態宣言」や「外出自粛要請」をきっかけに、2020年4月から5月にかけてのEC利用は2019年、2018年よりも増加傾向となりました(総務省「家計消費状況調査」2020年11月)しかし、実店舗への買い物欲求が失われたわけではないようです。そこで今回は、消費者意識の変化を追うとともに、実店舗販促やマーケティングの方向性に活かす方法について解説します。

■コロナ禍を受けて意外と高まる実店舗ニーズ

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コロナ禍を受けて、消費者の意識は大きく変化しました。

Googleマーケットインサイトチームがインテージと共同で企画し2020年8月に実施した「新たな行動様式と生活ニーズに関する調査」の結果によれば、新型コロナウイルス感染症発生後、利用が増えたサービスのトップは「総合ショッピングサイト」で25.0%、次いで「テイクアウト」で17.4%、「QRコード決済」で14.6%となりました。

このように、EC利用によるネットショッピングはコロナ禍における消費者行動においてメインともいえる存在になったことは、周知されています。

しかし、視点を変えると、実店舗への買い物欲求が失われたわけではないことが見えてきます。

2020年4月~5月に緊急事態宣言が日本で発令され、人々は外出自粛要請から実店舗に行くことを控えるようになりました。同調査によると、「ネット通販で商品を買うことに躊躇がなくなった」と回答した人は31.3%でしたが、「買い物はネットよりも店舗のほうがいい」と回答した人も35.1%でした。この結果からは、「買い物はECでも実店舗でも同様に楽しみたい」という気持ちを、消費者は持ち続けていることが分かります。

実際、実店舗における買い物ニーズが高まっていることが顕著に現れているデータもあるようです。

また、化粧品やコスメ購入時の利用チャネルの変化にも、実店舗における買い物のニーズが高まっていることが顕著に現れています。百貨店や大型ショッピングセンターで購入する人は、緊急事態宣言が解除されて以降も伸び続けているのです。

これは経済が危機的状況に陥ると、口紅のようなちょっとしたぜいたく品が売れる「リップスティック・エフェクト(口紅効果)」と似た現象と言えるでしょう。「困難な状況に日々向き合っている自分へのささやかなご褒美」という感覚が潜んでいることが推測できます。

出典:Think with Google「調査から読み解く、新たな生活様式の中での人々の「ホープ」」

Googleの分析によると、ECへの傾倒は「外出自粛」が背景にあるために、実店舗の買い物における買い物ニーズはより高まっており、むしろ「ささやかなご褒美が欲しい」という欲求も垣間見えるとされています。

■口紅効果とは

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実店舗販促を行う立場としては、このような消費者意識の変化を受け、コロナ禍における「口紅効果」に似た現象は、注目に値します。ここで、「口紅効果」とは何なのかを理解しておきたいところです。

「口紅効果」とは、端的に言えば、好景気なときにはブランドバッグなどの高級品を積極的に購入するような消費者が、不景気になると口紅に代表されるような、高級志向は保ちつつも、財布に優しい少額の“ちょっとした贅沢品”を買い求めるようになる現象のことです。

現在のコロナ禍における状況は、この口紅効果そのものではなく、「似たもの」といわれています。つまり、コロナ禍で「外出自粛」になり、家計も不安定になるなか、従来の楽しみが失われつつある危機的な状況下において、「これまで購入していた贅沢品を、せめて少額でも手に入れたい」「ちょっとしたご褒美が欲しい」という欲求や、「あえて実店舗で実物を手に取って眺めながら贅沢にショッピングを楽しみたい」という欲求があるという、ある意味“逆転”の現象が口紅効果と似ているといわれているのです。

■実店舗への“ちょっとした贅沢志向”を販促・マーケティングにどう活かすか

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では、こうした“ちょっとした贅沢志向”を実店舗販促やマーケティングに活かしていく場合、どのような方法が考えられるでしょうか。考えられる主な施策を挙げてみます。

●お客様に“ちょっとした贅沢”を促す
食材や物品などの店頭販売や、食品のテイクアウト・デリバリーなど、実店舗がかかわる販売の機会において、お客さまに“ちょっとした贅沢”を促すことがまず考えられます。

例えば、コンビニエンスストア大手のローソンは2020年10月にご褒美スイーツ「ウチカフェスペシャリテ」シリーズの新商品の発売を発表しました。コロナ禍によって生じた日々の疲れやストレスを解消するための「ちょっとした贅沢」や「癒やし」を提供することが目的で、見た目が少し贅沢で、厳選された素材を使用するなどのスイーツを打ち出しました。

このように、高額ではないものの、ちょっとした贅沢やご褒美を通じて消費者の欲求を満たせる商品を開発・提供することは一案です。

●お客さまに買い物そのものを楽しんでもらえる実店舗ならではの体験を提供する
「実店舗で買い物を楽しみたい」という要求を満たすためには、ECでは得られない体験を提供することも一つの方法です。例えば、実店舗ならではの「五感をフルに使って商品を試せる」というメリットを際立たせるために、デジタルサイネージなどを活用して映像や音を使って商品をアピールしながら、香りや感触、使い勝手など実際に商品を手に取って確かめられる販促什器を用意する方法があります。これは無人で行えることから、新型コロナ感染対策にもなります。
有人接客はできるだけ避け、ソーシャルディスタンスを確保しながら安心・安全に買い物を楽しんでもらえる対策を徹底しながら、いかに店舗体験を提供するかが重要です。

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●ECと実店舗を両方活用する
コロナ以前から、オンラインとオフラインの融合により、顧客体験をより良いものにしていこうとする「OMO(Online Merges with Offline)」の流れがありました。コロナ禍においてはECと実店舗の両方の活用が、ますます重要になってきました。
顧客によって、購入までの道筋、つまりカスタマージャーニーは異なります。実店舗で商品を確かめてからECで購入する、ECである程度希望の商品を絞り込んだ後、実店舗で購入を最終決定するなど、さまざまなジャーニーがあるなかで、どのようなジャーニーをたどってもストレスのない状態を作っておくことが重要です。購入を促すためのアプローチ方法やタイミングもコロナ禍の現状に合わせて検討することで効果を出すことができるでしょう。

まとめ

コロナ禍による「外出自粛」が生んだ通販・ECへの傾倒は、決して実店舗への買い物欲求を消失させたわけではありません。むしろ、抑制による反動ともいえる、ちょっとした贅沢志向も出てきています。「買い物は通販・ECでも実店舗でも同様に楽しみたい」という消費トレンドもとらえると、「OMO」の流れはさらに強まり、通販・ECと実店舗を両方の活用が重要になるのではないでしょうか。

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