ブランディングから購買意欲の喚起まで---フォトクリエイティブの可能性

マーケティングのツール・メディアにとって、写真や映像などのビジュアルは、課題を解決するための重要な要素です。製品・サービスの特長をわかりやすく見せたり、ブランドの世界観をエモーショナルに見せるなど、イメージを瞬間的に訴求できます。
今回のHintClipはフォトクリエイティブの可能性についてフォーカス。共同印刷グループの撮影スタジオ「播磨坂スタジオ」の立ち上げに携わり、日々のフォトクリエイティブをマネジメントする柏本栄一郎に、HintClip編集長の杉山毅がインタビューしました。 

お客さまの想いを“カタチ”にして、「売り」につなげ

杉山 広告などでのブランディングからカタログ・ECなどでの販売促進のための写真・映像まで、さまざまなフォトクリエイティブを行うなかで、フォトクリエイティブの役割とは何だと考えていますか。

柏本 ブランドに関わる人たちの想いや価値を、写真や映像という“カタチ”にして伝えることです。撮影やデザインの現場には、お客さまの技術開発者、マーケティング担当者、クリエイティブディレクターなどさまざまな立場の人たちが関わっていて、立場ごとに課題や要望は異なります。そうした課題や要望を細やかに聴き取り、いかにまとめて“カタチ”にするのか、日々スタッフとアイデアを出し合いながら取り組んでいます。

杉山 なるほど。フォトクリエイティブは、お客さまのマーケティングにおける課題をビジュアルで解決するソリューションとも言えますね。お客さまの課題や表現のイメージを理解した上で、求められた以上の“カタチ”を創り出せると最高ですね。
一方で、お客さまには、クリエイティブのクオリティだけでなく「売り」につながるかという「結果」も求められます。

柏本 たとえよい写真や映像が撮れたとしても、最終的に商品・サービスの「売り」につながらなければ、マーケティング課題を解決したとは言えず、失敗となります。そういう厳しい現実がありますから、常に緊張感がありますし、日々の研鑽が非常に重要です。

メディアとフォトクリエイティブの変遷

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杉山 近年、広告や販促のメディアは、紙とテレビが中心の時代からWebよりへと大きくシフトしています。フォトクリエイティブの現場では、どのように対応していますか。

柏本 デジタル撮影になってから、マルチメディアユースが当たり前となり、スタジオでやることが増えました。当スタジオでは、撮影後の現像からレタッチ、メディアごとのデータの作りこみまで一貫して行う体制になっています。そこまでやってフォトクリエイティブ、ということです。
デジタルレタッチ合成の要望も増えているので、企画段階から合成を前提とした撮影手法を取り入れています。デジタルレタッチは外注する会社も多いですが、私たちは少数精鋭で品質を高くしたいという思いから、イメージを左右する重要なレタッチだけでなく、ほとんどを撮影したフォトグラファー自身が行っています。 

杉山 確かに、カメラがデジタルになってスタジオではやることが増えましたね。合成を前提とした撮影手法も、フォトグラファーだからこそ最適な設計ができるわけですね。

柏本 そうですね。播磨坂スタジオではフォトグラファーだけではなく、“フォトディレクター”という職種のスタッフが撮影をサポートしています。彼らは撮影のすべての工程を設計・管理するのが役割です。具体的には、お客さまのオリエンテーションから、撮影の段取りとチーム編成、スタイリストなどのスタッフのブッキング、スタジオやロケ場所の手配、撮影からレタッチ、納品までのスケジュールと予算の管理を行います。
フォトディレクターが、デジタル化で複雑化したフォトクリエイティブの現場をサポートし、撮影スタッフの負担を軽減しています。

アクセスがよく、マルチユースで、気持ちのいいスタジオが欲しかった

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杉山 改めて、共同印刷グループの運営する播磨坂スタジオについて説明してください。

柏本 交通アクセスのよいマルチユースなスタジオです。山手線の内側では数少ない大型の撮影専用スタジオで、多目的スタジオや自然光スタジオ、キッチンスタジオなどを備えており、スチール撮影と動画撮影に対応しています。

杉山 多様な機能を持っていますね。どのようなコンセプトで設計したのですか。

柏本 “気持ちのいいスタジオ”を作りたかったのです。当スタジオは、お客さまやクリエイターが、リラックスして撮影に集中できるように配慮した空間です。桜並木のある播磨坂に面した独立建屋で、都心とは思えない閑静で緑豊かな環境に立地していることも特長です。
一般的にスタジオは外光が入らず閉鎖的なのですが、自然光を使った撮影の依頼が多かったこともあり、最上階には外光がたっぷり入るスタジオを作りました。開放感があり、スタッフもお客さまも快適に撮影ができます。2階には大きな窓のビューラウンジを作りました。桜の季節にはソファーに座ってお花見ができることもあり、とても好評です。
このクリエイティブに適した環境が、お客さまやスタッフのモチベーションを高めて、クオリティの高い写真や映像を創り出しています。 

杉山 クリエイターが考えたクリエイターのための空間ということですね。
緑の多い立地や建物の外観なども含めて、ブランディングにも配慮がされていると感じます。 

柏本 「播磨坂スタジオ=ハイクオリティ」というブランド価値を伝えるために、立地や建物、設備、インテリアに加えて、ロゴマークのデザインにもこだわりました。日頃からお世話になっているアートディレクターの松永真さんにお願いし、スタイリッシュなロゴマークを創っていただきました。当スタジオのブランディングに活用しています。

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クリエイティブのネットワーク力とマネジメント力で“播磨坂クオリティ”を生み出す

杉山 多様なフォトクリエイティブに取り組んでいますが、播磨坂スタジオの強みはどのような点ですか。

柏本 お客さまの課題を解決し、満足していただく“播磨坂クオリティ”です。
それを支えているのが、「ネットワーク力」と「マネジメント力」です。
ブランディングのための広告など、高いクリエイティブのクオリティが求められる写真・映像にはフォトグラファーとクリエイティブディレクターがコンセプトを共有しながら、ファッション、ビューティー、インテリア、フードなどのジャンルごとに、優秀なスタイリストやヘアメイクアーティストなどの撮影スタッフをブッキングし、最適なチーム編成を組みます。この信頼できる専門性の高いクリエイティブスタッフの「ネットワーク」が“播磨坂クオリティ”を支えています。
また、カタログなど撮影点数の多い撮影では、フォトディレクターや熟練の商品管理スタッフなどによる「マネジメント力」が強みです。限られた予算とスケジュールのなかで、効率よくクオリティの高い写真を撮影するための設計を行い、円滑に運営管理するノウハウは、長年の経験で培われたものです。また、大量の撮影商品の出入庫や梱包の管理も重要です。お客さまからお預りした撮影商品を大事に取り扱うことも含めて“播磨坂クオリティ”だと考えています。 

印刷会社のスタジオならではのマルチメディア対応

杉山 クリエイティブの感性や技術だけではなく、お客さまのために、きめ細やかなところまで対応するのが“播磨坂クオリティ”なのですね。
お客さまからは、マルチメディアユースについてもいろいろと要望があると思いますが、デジタル対応について教えてくだい。 

柏本 印刷会社の強みを生かして、最新のハイエンドデジタル撮影と高度なデジタルレタッチ技術を駆使した高品質な画像を提供しています。
印刷適性に合わせたRGBtiffデータの作成から、マルチメディアユースに対応した各種デジタルデータの生成までを行っており、あらゆるニーズに適応する画像データの作成が可能です。 

杉山 スタジオには、印刷の仕上がりをその場で確認できる環境が整っているのですか。

柏本 スタジオ内にプリプレス・スペースがあり、オペレーターによる画像加工やCMYK変換作業が可能です。そのため、撮影立会い時に、印刷仕上がりを想定した色再現やイメージがその場で確認できます。カラープルーフ(簡易校正)も出せるので、お客さまに好評です。

高度なセキュリティ管理

杉山 広告やカタログのクリエイティブでは、新製品の撮影なども多いと聞きました。新製品の情報が漏洩したり、タレントやモデルが外部の人の目に触れたりすることがないように機密性が求められると思いますが、どのような対応をしていますか。

柏本 当スタジオでは、新製品の撮影などに対応して、情報セキュリティの管理を高い次元に設定しています。入退出は専用ICカードとSECOM管理システムを併用し、徹底したセキュリティ管理をしています。当グループの社員でも、都度申請し貸与される専用ICカードでないと入退室ができません。
また、写真・映像データを取り扱うパソコンは、情報漏洩のリスクを下げるという観点から、社内LANにはつないでいません。機密案件に関しては、撮影後のセレクトで未使用となったデータも含め、撮影したすべてのデータをお客さまの目の前で削除し、ハードディスクには残さないルールとなっています。 

杉山 独立した建屋で、自前のスタジオだからこそできる徹底した対応ですね。

テクノロジーとセンスが「ないもの」を創りだす

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杉山 最近の撮影の現場では、お客さまからどのような要望が多いのでしょうか。特長や対応策を教えてください。

柏本 業種によって違いはありますが、共通して“デジタルレタッチ”に関する要望が多いと感じています。当スタジオでは、先ほど説明したとおり、“デジタルレタッチ”をフォトグラファー自身が行います。
例えば、ファッションでは、アパレルのサイズ感の微妙な調整やシワの修整。インテリアでは、素材の質感、色調、床、壁、窓などのシチュエーションの作り込み。ビューティーの撮影では肌色やシワ、シミはもちろんのこと、肌の質感や髪の毛の1本に至るまで修整します。 

杉山 撮影したフォトグラファー自身がレタッチをすることで、クオリティの高い仕上がりになるのが強みですね。撮影によっては、かなり難易度の高い合成も行われているようですが。

柏本 最近では、“ないモノ”をコンピューターグラフィックスで創り出しています。
例えば、オフィス家具メーカーの撮影では、「現場に無い家具を画像で創る」依頼があります。お客さまの事情で、1セットしかないデスクとチェアを、7点組み合わせて、1つの部署のオフィス空間を創り出すといった要望です。角度やスタイリングを変えたデスクとチェアを別々に撮影して、CG合成することで、リアルに見える空間を創り出しています。こうした合成は従来のデジタルレタッチの範疇を超えているため、「2DCG」というサービス名でご案内しています。
カメラやソフトは日々進化を遂げていていますが、大事なのは、フォトグラファーが仕上がりをイメージした撮影方法を設計するスキルと撮影後のデジタル・レタッチをリアルに仕上げるセンスを持っていることです。 

ニューノーマル時代のスタジオのリモート対策

杉山 新型コロナウイルス対策や働き方改革でリモートワークなどが広がり、撮影の現場も変わらないといけない状況です。具体的に、どのような対応をしていますか。ニューノーマル時代のスタジオのリモート対策について教えてください。

柏本 確かに新型コロナウィルスによって、お客さまに撮影に立ち会っていただくことが難しくなっています。そこで、当スタジオでは、撮影に立ち会わずともハイクオリティな撮影ができる方法を用意しています。
一つは「ZOOMによるリモート撮影対応」です。リアルタイムで、動画と音声でやりとりできるので、その場で修正も確認できます。もう一つは「NAS(Network Attached Storage)による確認対応」です。撮影データが多い場合でも、ストレージ上でまとめて確認できるため効率よくチェックが行えます。
実は近年、地方のお客さまが東京での撮影を希望されることが増えており、撮影に立ち会えないお客さま向けのリモート対応に取り組んでいました。リモート対応に熟練したタイミングで新型コロナウィルス対策の要望も出てきたため、スムーズにリモート対応へ移行できています。 

※「ニューノーマル時代のスタジオのリモート対策」については、詳しい情報を記事末のダウンロード資料にてご提供します。

フォトクリエイティブの今後の可能性

杉山 最後に将来の話題です。これからのフォトクリエイティブは、どのように変化していくと考えていますか。写真や映像の可能性について、聞かせてください。

柏本 通信技術やカメラ、レタッチソフトなどが進化することで、クリエイティブの表現方法も広がります。よりインパクトがあり、印象に残る写真や映像が創れるでしょう。また、撮影後の画像確認がより早く、高画質になれば、撮影立ち会いなどが減り、お客さまの業務も効率化します。
写真・映像の表現を進化させ、お客さまの働き方も変えるため、常に最新の機材や通信環境を整備して、新しいフォクトクリエイティブの開発に挑戦し続けたいと考えています。
これから、写真や映像の世界がどのように変わっていくかを想像するとワクワクします。

杉山 お話しを聞いて、新しいクリエイティブ表現が生まれ続けることで、写真や映像がマーケティング課題を解決する役割が、ますます大きくなると感じました。今後の播磨坂スタジオの取り組みに期待しています。

[まとめ]テクロジーがクリエイティブを進化させる時代

テクノロジーの進化が、撮影、レタッチ、確認プロセスの高品質化・効率化を推進するだけではなく、クリエイティブ表現の高度化・多様化を進めることにつながります。
例えば、通信分野では5Gの導入により、PCやスマホなどのデバイスも進化し、より高画質で滑らかな写真や映像が求められます。映像では8Kカメラの撮影により照明の考え方が変わったり、動画データを写真データとして使用することも可能となっています。テクノロジーがクリエイティブの発想や手順を変えているのです。
デザイナーやフォトグラファー、シネマトグラファー(動画カメラマン)などのクリエイターが新しい表現に挑戦することが、広告や販促物の受け手である生活者に、ワクワクする消費体験を提供することになるでしょう。

柏本栄一郎.jpg柏本 栄一郎 
日本広告写真家協会(APA)会員 新写真派協会会員

【略歴】 日本大学芸術学部写真学科卒業 共同印刷株式会社SPC入社 同社SP&ソリューションセンター フォトクリエイティブ部 部長 現在、子会社 株式会社コスモグラフィック在籍
【受賞歴】
「インターナショナル・カレンダー・アワード」(ドイツ)銀賞受賞。「全国カレンダー展」5回入賞。「アニュアル・カタログ・アワード」(サンフランシスコ)インターナショナル・コンシューマー・カタログ部門銀賞受賞。「アニュアル・カタログ・アワード」(ボストン)インターナショナル・コンシューマー・カタログ部門金賞受賞。
インテリアの撮影を中心にモデル撮影、フード撮影、商品撮影などイメージを重視した多種多様な撮影をこなす一方、クリエイティブ・ディレクター、フォト・ディレクターとしても幅広く活動している。

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