あのナイキも活用!Eコマースによる買い物体験のパーソナライゼーションとは?

米国の調査会社ガートナーは、2020年までに消費者の意向や意図を、テクノロジーを活用して汲み取るパーソナライゼーションにより、デジタル関連のビジネスモデルで15%の利益増を見込むことができるという予測を出しています。
また、コンサルティング会社アクセンチュア・ストラテジーによると、消費者の約48%が優良顧客であることへの見返りとして特別なサービスを期待するとの調査報告をしています。 

このようにパーソナライゼーションは、今後、買い物体験の魅力度を最大限に高める役割を担い、マーケティングだけでなく経営戦略にも大きな影響を与える可能性を秘めています。本記事では、パーソナライゼーションの導入を進める上で、パーソナライゼーションの特徴および理解しておくべきポイントを、事例も含めてご紹介します。

■Eコマースのパーソナライゼーションとは?

パーソナライゼーションとは、企業側が過去の顧客行動や人口統計といった客観的データ、消費者ごとの購入履歴や閲覧履歴を詳細に把握することで、各消費者が求めるコンテンツや買い物などの体験(エクスペリエンス)、商品のレコメンドなどを行うことを指しています。

パーソナライゼーションの導入が進むことで、消費者に対してそのニーズの違いに関わらず、従来型の均一化していた商品やサービス提供ではなく、それぞれに合わせた商品やサービス提供が可能となります。このように個々のニーズにきめ細かく対応することで、これまで十分に取り込めていなかった顧客ロイヤリティの獲得や、消費者との1対1のエクスペリエンスを生み出すことができます。

■今後の消費動向を左右するカギはパーソナライゼーションにあり

Eコマースにおけるパーソナライゼーションは、単に消費者に向けた商品の販売を促進させる目的だけではなく、その他にも重要な役割を担うといわれています。                       

〇ブランドエクスペリエンスの構築

従来、企業がブランディングやマーケティング戦略を構築する際は、4Pフレームワークなどを活用し、「Product(商品)」、「Price(価格)」、「Place(流通)」、「Promotion(販売促進)」といった要素ごとに検討するほか、ブランドのポジショニングやセグメント、ターゲットなどテーマごとに細分化する形で、最適な市場を見つけ、最適と思われる商品やサービスを開発し、投入することがセオリーとなっていました。

しかし、パーソナライゼーションの導入が進むことで、商品の差別化やセグメントの把握だけでなく、蓄積した膨大な顧客データなどをフルに活用し、個々のニーズに合わせたブランド体験を用意し、自社商品やサービスの価値の最大化を目指すことも可能になります。

〇マーケティング戦略の精度向上

近年まで、マーケティングの手法は限られており、テレビ等のメディアへの露出や新聞および雑誌等の媒体といった既存メディア、あるいは間に入っている代理店や流通に頼らざるを得ないといった背景がありました。DMなどを送るダイレクトマーケティングという手法もありましたが、いずれにおいてもマーケティング戦略は一方通行になりがちで、実際に消費者が何を考え、どう行動し、購買し、満足するのか、つかみにくく、機会損失を多く生んでいました。
しかし、近年、急激に進化を遂げたインターネットやソーシャルメディア(SNS)の普及、スマートフォンの大衆化に伴う形で、企業と消費者がダイレクトに接する機会も増加しています。そのため、パーソナライゼーションを導入し、自社の適切な顧客を個々のデータも含めて精緻に把握することで、独自のマーケティング戦略を構築するだけでなく、マーケティング自体の精度向上につなげることができます。

〇満足度の高いカスタマージャーニーを醸成

企業の各戦略だけではなく購買に対する消費者の行動も多様化しています。上記でも記載の通り、ソーシャルメディア(SNS)など、企業と消費者の接点となるチャネルが多様化したことで、消費者側も複数のチャネルを横断し、情報収集をし、購買行動をとるようになりました。そのため、「消費者目線」とひとくくりにして、消費者動向を理解することや、購買までの行動を把握することが困難になり、戦略や施策を判断するタイミングも遅れがちになります。
しかし、技術の進化によって、顧客データを含むビッグデータの解析や高度化が容易となり、収集して蓄積されたデータをもとに消費者ごとに最適なレコメンデーションをオファーすることが可能になりました。そのため、的外れなマーケティングやコンテンツの提供を最低限に抑え、消費者にとって満足度の高いカスタマージャーニーを構築することがより重要性を増してきたともいえるでしょう。

■顧客が望むスタイルを尋ねるスタイルファウンダー

ここで最新の事例を紐解いてみましょう。世界各地に店舗を展開するスポーツブランド「ナイキ社(NIKE)」では、消費者の買い物体験を最大化するための施策として、「店舗」と「アプリ」の両面から、カスタマーエクスペリエンスの向上に着手しています。
ナイキアプリ(NIKE APP)をダウンロードしてみると、以下のようなタッチポイントを提供しています。

「NIKE+」…登録者の情報に合わせて商品のレコメンド、アスリートによるコーチングコンテンツの配信、消費者に合わせてコンテンツの提供することができるアプリ(アプリ内で商品の取り置きをして、実店舗での購入も可能)
「NIKE iD」…ナイキの人気モデルを、消費者が自分好みの素材やカラーなど、あらゆるディテールにカスタマイズすることが可能なアプリ
「NIKE SNKRS」…スニーカー専用のアプリ。こだわりの一足または最新の一足に至るまで、ニュースや商品の背景(ストーリー)、購入などのコンテンツを提供

また店舗運営においても「NIKE App at Retail」と「ジオフェンシング技術」を活用することで、買い物体験を変える取り組みを行っています。アプリユーザー(NIKE+)である消費者が店舗に来店すると、オンラインおよびオフラインでの在庫確認や商品情報の閲覧、購入特典やクーポンの配布、店舗によっては、スマホによる支払い、更衣室への商品手配、スタイリストとのスケジュール調整まで一括してアプリと連動させることができます。
なお、これらの施策により、カスタマーエクスペリエンスの向上と、オンライン・オフライン両方の売り上げの上昇に寄与しています。

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■まとめ

Eコマースにおけるパーソナライゼーションは、消費者ニーズが多様化する昨今において、企業側に利益の拡大をもたらすだけでなく、商品の販売促進や消費動向の把握、最適な顧客エンゲージメントの構築など、自社ブランドの目的・戦略に応じた情報を獲得することにもつながっています。

独自性のあるマーケティング戦略や施策を実現するために有効なアプローチになると考えられるパーソナライゼーションの導入。今後はますます、消費者もテクノロジーが実現する個々のニーズが満たされるパーソナライゼーション体験に慣れていくことが想定され、ますます企業においての検討の余地は高まっていくでしょう。

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