【対談】共同印刷×COTOVIA CI・デザインにとどまらない、顧客や社会と共創価値を生み出すデジタル時代のブランディングとは?<後編>

企業にとってブランド戦略は欠かせませんが、その効果は数字では測りにくいものです。効果測定やゴール設定に悩んでいる企業の担当者さまも多いのではないでしょうか。

未来を創るブランド育成の在り方、ブランディングをどのように業績に結びつければよいのか、活動目標の立て方や、評価軸の決め方など、株式会社コトヴィア 代表取締役 荻原実紀さまに、共同印刷株式会社 Hint Clip編集長の神がお話を伺いました。

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【この記事は連載です】
【対談】共同印刷×COTOVIA CI・デザインにとどまらない、顧客や社会と共創価値を生み出すデジタル時代のブランディングとは?<前編>

【対談】共同印刷×COTOVIA CI・デザインにとどまらない、顧客や社会と共創価値を生み出すデジタル時代のブランディングとは?<中編>
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◆消費者における「真の豊かさ」を求める価値観への変化

神:マーケティングでは、「価値創造」という言葉がよく使われますが、消費者における価値の考え方も変わってきているのでしょうか。

荻原:成熟した社会となり、消費に対する考え方、お金に対する捉え方も多様化しているように思います。共感できるものや自分の人生を潤すもの、ライフスタイルをより良くするものなどに対価の価値を置くようになりつつあります。その要因は、社会情勢や経済状況、情報技術の進歩など色々な背景が複合的にありますが、情報ネットワーク化によって便利になっていくのと同時に、人と人、人と情報、人と地域、人と社会、人とシステム・・・など、あらゆるものが知恵や知識、共感や共鳴、人と人との絆、信用や信頼、やりがいや生きがいなど、「目に見えない価値」をベースに「つながり」合う関係性が広がってきています。単純にモノとお金を交換するGive&Take、等価交換による貨幣経済とは別の価値観です。応援したい人にお金を使ったり、お互いに贈り与え合ったり、価値を共有したり、別のところに循環させていく Give&beGivenやGive&Shareの価値観で、クラウドファンディングやシェアサービス、ソーシャルビジネスなど、新たな仕組みや事業も生まれています。シェアオフィスやシェアハウスも一般化しています。ネットワークを使いながら仕事をして多拠点生活を送る人、自分の能力を生かして全く違う分野に知恵を分配し複業化していく人なども増えてきています。
 ますます個が問われる時代といわれていますが、自分自身がどう在りたいか、どう生きたいか、どう社会に関わりたいかといった自分軸に基づいて生きていくこと、つまり「自分自身の存在価値」が求められます。一人ひとりの意識や思考が変わると、つながり合っている先へと伝播していきます。消費行動も変わっていきます。そこには、お金以上の感動に値する価値や、心を満たす「真の豊かさ」を求める志向があるのではないでしょうか。そうした傾向にある世の中の流れを捉えた場合、企業自身も自社がどういう存在であるべきか、どんな価値創造や独自性にビジネスの主軸を置いていくのか、今後のブランディングをどのように捉えるか、考えていく必要があるのではないかと思います。

◆コーポレートブランドを持つことで得られる副次的な効果

神:感動や共感など、心を満たすものに価値がおかれる傾向にあるのですね。コーポレートブランドを持つことで、副次的な効果も得られるのでしょうか

荻原:企業としての志が明らかになる(見える化・言語化・ビジュアル化される)と、あらゆる行動の大きな指針になります。視覚的にも記憶に刷り込まれていく印象効果もあるでしょう。それらが安心や信頼にもつながっていきます。また、向かうべき方向性が明確になることで、社員の士気が上がり、明確なビジョンを掲げることで、そのビジョンに共鳴した人たちが社員として入社するなど、採用活動への効果が期待できます。また、ブランドイメージは消費者の信頼につながりますから、ブランドイメージが上がれば、徐々に株価も上昇していくといった副次的な効果はあると思います。

神:ブランディングに注力している企業の一つとして、スターバックスが思い浮かびます。マスメディアを使ったプロモーションをあまりしていなくても、「スターバックスっておしゃれ」「スターバックスのコーヒーカップや紙袋を持って街を歩くとかっこいい」という高いブランド力を構築しています。

荻原:マーケティング戦略や商品開発はもちろん、販促物一つ作るにしても、大切にしていきたい概念からなるブランドポリシーを脱しない形で行い、ブランドコアを軸に一貫したデザインポリシーやブランドポリシーを守り続けている企業だと思います。顧客接点においても、スタッフはどのような対応をするべきなのか、社員教育がブランディングの延長で行われています。すべての事業活動に一貫性を持たせ、その企業の「らしさ」を追求することで、顧客満足度が向上し、ブランドの信頼や価値の構築につながっていると思います。

◆ブランド育成のために横串連携のコミュニケーションが重要

神:ブランドを育成し続けるために、組織単位で取り組めることはありますか?

荻原:前提として「価値観の共有」は、とても大事ですね。組織の運用体制においては、チーム・部署・組織間で横串連携のできるコミュニケーション体制が重要です。年度ごとに組織体制が変わり、所属部署が変わることもあると思います。部署異動や定年退職などで担当者が変更になったり、代表取締役社長が交代されたりすれば、人が変わったことでこれまでの価値観を変えたくなることもあるでしょう。実はそこが危険なところで、引き継ぎで失敗するケースや、ブランディングがうまくいかなくなるケースが結構あります。刷新するにしても、今あるポリシーを生かしながら、どう新しくしていくのか。価値観を共有しながら、築きあげた価値をしっかりと継承していく仕組み、社内教育体制が必要だと思います。

◆ブランド戦略は特効薬ではない。業績に結び付けるために必要なこと

神:ブランディングは形がなく、評価軸や目標の設定が難しいと感じます。ブランド戦略を業績に連動させるために必要なことを教えてください。

荻原:ブランディングは、数字では表しにくい世界です。新しいブランドができたからこそ、その世界観を求める取引先や消費者もいらっしゃると思います。企業としての在り方や方向性を定めたわけですから、今後の事業活動や社員の行動一つひとつにもそれが現れないと、一貫性のあるブランドとしては育まれません。地道な継続性が必要です。ブランド戦略は特効薬ではありません。新鮮さを失わないように、時々、プロモーション部門やマーケティング部門と一緒に色々なことを仕掛けていく。地道な継続性の蓄積によって業績に現れてくるものだと思います。

神:確かに特効薬ではないですが、社員にとっては必須であり重要なものだと思います。会社は一日の大半をすごす場所ですので、会社への満足度が高ければ、仕事のモチベーションアップにつながります。業績にも影響する、とても重要なことだと思います。

◆ブランドコアを基に活動目標や評価軸を設定する

神:ブランディングは業績に直結しない部分もあるので、活動目標が立てづらく、難しいと感じています。ブランディングにおける活動目標や評価軸はどのように設定すればよいのでしょうか?

荻原:事業計画、事業目標、活動目標、経営目標などをブランドの理念に基づいて見直した時にどうなのか、という事業活動の価値観の基本となる概念があります。価値判断の評価軸のなかに、ブランドコアの考え方を入れ込んでいく。ブランドポリシーに沿ってブランドをどのように育成していくか、さまざまな事業活動がブランドポリシーに沿っているかを評価していくことも、活動目標の一つになると思います。社員の人事評価においても、その人がどのように成長したかを判断する評価軸として、ブランドコアを基にするという考え方があります。

神:成果軸についてはいかがでしょうか。

荻原:WebやSNSに関しては、PVやフォロワー数の推移といった成果軸は出せると思います。上司や社内を説得するための材料の一つとしての数値は出せると思いますが、それが本当にブランド育成につながっているかどうか、めざしている方向に近づいているかどうかは、多角的に検証が必要です。KPI(重要業績評価指標)を求めるご担当者も多いのですが、PVやフォロワー数の推移だけをブランディングの成果として判断するのは危険だと思います。むしろ業務単位ではかるKPIよりも、上位概念にある企業全体の目標を戦略的に定めるKGI(重要目標達成指標)、そして最近ではゴールをめざすためのOKR(目的と主な成果)という組織の達成目標と個人の結果を連動してみる指標も注目されていますよね。ブランディングは価値を積み重ねていく行為ですから、価値を推しはかる際にブランドコアに基づいた定性的な評価や、ブランディングによって構築される関係性のプロセスを重視することも重要かと思います。印象調査などを行い、ブランドイメージがステークホルダーにどのような印象で受け取られているか、ブランドとして望ましい姿として感じ取ってもらえているのか、顧客の深層心理も捉えながら、定期検診していくことも大事ではないでしょうか。

◆「心の価値を創造する」コトヴィアさまの今後のブランディングの展望

神:コトヴィアさまの今後の展望をお聞かせください。

荻原:私たちは、「Emotional Design Power for People」(※1という創業理念を大事にしています。人々の生活や暮らしを豊かにして、心に潤いを与える感動価値を創出し、次世代を担う人々や企業、社会づくりをサポートする存在でありたいという思いです。

Social value(社会的な価値)、Cultural value (文化の創出)、Human value(人間的な共感)、Environmental value(環境の素晴らしさ)の4つの軸で、エモーショナルバリュー(感動価値)を創出し、結果的にビジネスバリューが上がっていくと考えています。

1 Emotional Design Power for People
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荻原:今も昔もブランディングの考え方は変わっていませんが、ブランディングの在り方は変わりつつあります。モノがない時代に何かを作る成長段階とは違い、今はモノにあふれ価値観が多様化している成熟化した時代です。企業も公益性を求められ、社会課題を解決する事業や商品でないと売れなくなってきていると感じています。量よりも質を重視した成長へと価値観を変えていく必要があるかもしれません。社会のためだけでなく、関わりある業界や地域のため、地球環境のため、さらには地球上のあらゆる生命のためによいかどうかを問われつつあります。自社の事業内容や商品・サービスは、社会にとって有益であるのか。長期的かつ持続可能で「真の豊かさ」を求めていくために、どのようにつながり、どのように展開していくか。こうした視野で、CIやコーポレートブランド、自社の在り方を見直す時期なのではないでしょうか。
 時代の変遷と共に消費者の価値観が変化しつつあるなかで、よりクライアントに寄り添って、喜びや笑顔があふれる理想とする未来を描き、エモーショナルな価値の創造をサポートしていければ幸いに思います。

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