リアル×デジタル時代に見据えるべき購買行動パターンとインサイト

2018年6月に開催された本セミナーでは、購買行動とともに大きく変化する消費者インサイトに基づき、購買体験の価値を最大化させる方法や、効果的なプロモーション施策の考え方を、ケーススタディを交えてご紹介しました。

本記事では株式会社アーキセプトシティ 代表取締役 クリエイティブディレクター 室井淳司さまによる講演をご紹介します。

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空間づくりとは顧客体験づくり
リアル(店舗)における購買体験
事業構造によるブランド形成
モノづくりメーカーからサービスブランドへ
事例紹介:未来のモビリティ社会をつくる。トヨタ自動車「e-Palette」
リアル(店舗)のEC化、ECのリアル(店舗)化
事例紹介:オンラインスーツがオンラインで購入可能。紳士服のコナカ「DIFFERENCE」
事例紹介:試着から購入、接客まですべてオンライン。「Warby Parker」
事例紹介:ECサイトで自動車を販売。アリババの「自動車の自動販売機」
事例紹介:事業構造と購買行動を一つの文脈に。アリババが運営する「盒馬鮮生」
まとめ「すべての企業はサービス業へ」

空間づくりとは顧客体験づくり

私はもともと広告会社で、主に空間づくりを中心にしてきました。空間づくりとは、店内でクライアントの商品を消費者にどう体験してもらうか、また、顧客とブランドとの関係性をどうデザインするかということです。

空間づくりを手がける中で、お店の開発や新業態開発を依頼されるケースが多くありました。
昔は、「どんな価値があるお店を作りたいか」について、よくクライアントと話しましたが、最近はお店単体ではことが済まなくなっていて、「デジタルを踏まえた全体のカスタマジャーニーをどう作るか」という話に移行しています。

また、そういった課題が経営課題となっていることも多く、企業の社長や役員などトップの方々と、会社としてどう取り組んでいくかという相談をするケースが増えてきました。ECとリアルをつなげるとなると、組織の変更も必要になってくるためです。

リアル(店舗)における購買体験

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デジタルを踏まえる前の店舗の価値について事例を二つ紹介します。

一つ目は、青山フラワーマーケットです。

例えば商店街に花屋さんがあるとします。そこでは花が種類ごとにバケツに入って店頭に陳列されています。お客さんは花屋さんに行って「バラを二輪ください」や「2000円で素敵な花束を作ってもらえませんか」という購買体験をします。

しかし青山フラワーマーケットさんでは、値段ごとにブーケをつくり、ブーケごとに「キッチンブーケ」や「デスクブーケ」と名前をつけています。
そうすることで、これは300円で購入できるデスク用の花束だと認識され、それが価値になっています。

私たちが普段小売店で商品を買う際は、欲しい商品を選んでレジに持っていきます。
そういう一般的な購買体験を、花屋さんという業界に持ち込んだのが青山フラワーマーケットというお店です。

とても面白いと思うのは、「日常に花がある生活を作る」をコンセプトにブランド開発をしているので、出店戦略一つとっても主に駅ナカや駅チカに出店している点です。
消費者の日常的な導線上に出店していくことによって、花のあるライフスタイルを手軽に手に入れられるという意識を作っていった。これが青山フラワーマーケットが花業界でイノベーションを起こした考え方だと思います。

二つ目はドン・キホーテの事例です。

ビックカメラやヨドバシカメラのような、物量やポイント制度などが充実している量販店が先行してどんどん出店する中、後発のドン・キホーテが参入してシェアを伸ばすのはなかなか難しい。
そのため、ドン・キホーテは「お店における体験」を価値としてブランディングし、独自のポジションを築いていきました。

ドン・キホーテは、「ジャングルで宝探しをするようなブランド体験をお客さんに提供すること」をコンセプトにしています。
ドン・キホーテのお店の入り口に大きな水槽が展示してあるのを見かけると思いますが、これはジャングルに入っていく時のお客さんの気持ちをマインドセットするためにおいているそうです。
きれいな熱帯魚ばかり泳いでいるわけではなく、アロワナのような熱帯雨林に居そうなグロテスクな魚も泳いでいます。

ドン・キホーテはお店に入ると天井から商品がぶら下がっていたり、両隣にものが高く積んであったりしますが、一般的な量販店で言えば、一番売れ筋のメイン商品は目の前にあって、店舗のどこに何があるかというサインが見渡しやすくなっています。
またサインのフォントも、遠くから見ても視認性が高いゴシック系のフォントを使っていることが多いように思います。
しかしドン・キホーテは全部手書きです。 

このように、後発の量販店でも機械感のなさをお店の中に作るなど、独自の体験を築いたところがドン・キホーテの秀逸だと感じる点です。

*事例の詳細は『体験デザインブランディング コトの時代の、モノの価値の作り方』をご覧ください。

事業構造によるブランド形成

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最近はお店を点でとらえない傾向にあります。
お客さまがどのように来店して、どう商品を体験して帰っていくか。
またEC購入のように来店しないという選択肢も含め、全体の顧客体験を作っていく必要があります。
もちろんお店にどういった価値を持たせるか、どういったブランド体験を提供するか、ということも引き続き重要です。

最近は事業構造自体がシフトしているので、購買行動だけを単体で考えてもなかなか将来像がつかみにくいと感じています。
テクノロジーは日々進化していくので、新しい技術ができればそれを購買体験の中に組み込み、新しい購買体験を作ることは可能です。

しかし、それをアップロードし続けた結果、どこに行くのかという点が不明瞭です。
事業構造をもとに、どのように自社が顧客と付き合っていくのかを考え、自分たちがやっているそのアップロードが正しい方向に向かっているのか判断する必要があります。

事業構造がシフトする上で、いま世の中に起きているのは「モノからコト」という流れです。
例えば「カメラを買うのではなく旅行にいく」のように、モノを買うという消費は、「習い事をする」や「旅行する」というコトの対比文脈として語られることがほとんどです。
モノというのは、本質的にはコトが集まって形になったものだと私は思っています。

モノづくりメーカーからサービスブランドへ

日本には優秀なメーカーがたくさんあります。
メーカーが商品を作るということは、商品を通してお客さんが得られる「コト」を作っていることになります。
メーカーさんは「コト」づくりの会社といえると思います。 

例えばトヨタ自動車のかっこいい車があったとします。
この車を買って、自分の家の駐車場に置いて毎日見る。
そういう人にとっては、インテリアとしてコトの文脈が成立していますが、それ以外の人にとっては、購入して、乗るのではなく駐車場に置いておくわけですから、ただの鉄の塊です。 

しかし大半の人は、見るために車を買うわけではありません。
所有することが目的ではなく、この車に乗ってあんなところに行ってみたいなぁ、という体験を買うわけです。
この車を買ったらキャンプに行きたい、ドライブに行きたい…そうした、購入の先にあることを買っているのが事実で、車自体が価値なわけではなく、車を介して得られる体験こそがお客さまの価値である、と考えることができます。
見方を変えるとトヨタ自動車は旅行やキャンプのデザインをしている会社ではないかとも受け取れます。 

こういうことが「コト」のデザインだと思っています。

「モノからコト」という文脈がありますが、実は消費の対象が移ってるわけではありません。
モノが世の中に溢れ、皆豊かになっている中で、それらのモノを使っていかに自分の人生を幸せにしていくか、というところに意識が移っているのだと思います。 

事業構造の話でいえば、いくつか要素はありますが、一つはデジタル化が進展しているということです。

モバイルはその代表例です。
普段持っているモバイルから、いろいろなサービスに気軽にアクセスできるようになりました。
パソコンが主流だった時代は、パソコンからアクセスする必要があるので場所が限られていましたが、今は自分が普段肌身離さず持っているモバイルから、あらゆるサービスにアクセスできるようになっています。 

二つめは新しい生活者、ミレニアム世代の台頭です。

日本ではミレニアム世代というと、ボリュームとして小さいように見られますが、グローバルで見るとそのボリュームはとても大きい。
そこに対して商品開発やサービスを提供していかなければ、グローバルで通用しなくなり、日本に閉じた会社になっていきます。
これからはこのミレニアム世代をいかに攻略するかが重要になっていくと思います。 

三つめはシェアリングエコノミーです。
ミレニアム世代のような新しい消費者が、モノを持たずに利用することで、豊かな生活を手に入れています。
それを提供するシェアリングプラットフォームというものもどんどん増えています。
それが新しいマーケットとして育っている限り、その流れに沿って自社の需要を考えていくことが必要だと思っています。 

所有から利用へというのはメーカーのキーワードです。
メーカーはメーカーではなく、サービスブランドになっていくというのがこれからの文脈だと考えています。 

自社の事業構造をどうやってシフトしてくかの将来像を考えた時、今を起点にして10年後20年後を見据えるようなやり方では実はうまくいきません。
極論で未来を考えていくのがおすすめです。 

自社が所属している産業、カテゴリは将来どうなるのか、極論を考えるということです。そこからバックキャストでタイムスケジュールに落としていくと、10年後までにこれを、5年後までにこれを、2年後までにはこれをやる必要がある、そういったことが具体的に見えてくるのではないかと考えています。

実は今起きている事業構造の変化というのは、大きなパラダイムシフトの表れです。
今の状態からアップデートするだけでは恐らく対応できないような時代になってくるのではと考えています。

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事例紹介:未来のモビリティ社会をつくる。トヨタ自動車「e-Palette」

今年2018年1月にトヨタ自動車さんが発表した「e-Palette」という構想をご紹介します。
トヨタ自動車の社長が「トヨタ自動車はメーカーから“モビリティサービスカンパニー”に移行する」と発表しました。 

トヨタ自動車は、「Fun to Drive」を掲げ、モノづくりに強くこだわっていた会社でしたが、「モノではなく、サービス(モビリティサービス)を提供する会社に移行する」ことを宣言したのです。

これは非常に大きなパラダイムシフトを意味しています。
日本のトップのメーカーがこのようなことをビジョンとして掲げたことを念頭に、もし本当にこのような世界が来た時には、自分の会社はどうなっているかを改めて考えてみるのがいいのではと思います。 

「e-Palette」は、IOT端末で、基本的には自動運転の車です。(https://youtu.be/orqyAtbknKA

それぞれの車にいろいろな機能やユニットが入ります。
一つの同じ箱が、お店になったり、ラウンジになったり、ホテルになったり、使い方はさまざまです。
例えばお客さまがECサイトで気に入った靴を選んで購入すると、その商品は「e-Palette」に積まれてお客さんのもとにやってきます。
お客さんはそこで試着し納得すると、着用したまま「e-Palette」を出ます。
するとその時点で決算が完了するというシステムです。
お店がそのまま自分のもとにやってくるということです。 

逆の場合も可能で、商品を売りたい人の所に「e-Palette」がやってきて、商品を「e-Palette」に積み込む。
それぞれの商品を載せた「e-Palette」が一箇所の場所に集まることによって、そこに一時的なマーケットができる、ということも考えられます。 

買いに来ている人からすると、オフラインのマーケットですが、売る人からするとオンラインのマーケットになるという考え方です。

注目したいのはトヨタ自動車はこの「e-Palette」を作って、お客さんに売ろうと考えているわけではないということです。
こういった社会を作り、お客さんに課金で使ってもらうことによって、世の中のインフラを作っていくという考え方です。 

これによって実現されるのは、移動の多様性です。

例えば、一人で「e-Palette」に乗る時は、タクシーになるかもしれない。
大勢で乗る時はバスになるかもしれない。
そうしたモビリティサービスを提供していくということです。 

また、いろいろなユニットが積まれることによって、「実際にお店が自分のところにやってくる」という、“新しい店舗と物流の融合”という考え方の提案をしています。

今、世の中で言われている「Online・to・Offline」の文脈には、まだこの世界観はありませんが、物を売りたい人からすると、オンラインで「e-Palette」を予約し、自分の商品を詰め込んで、購入者が集まる場所へ行く。
この流れは完全にオンラインです。
物を買いたい人からすると、「e-Palette」が集まるマーケットにいって商品を買うので、オフラインの購買体験になります。
しかし、「e-Palette」で購入する際は、顔認証で決算を済ませられるので、決済システムはオンラインになります。つまりオンラインとオフラインが入り混じった形態になっていることが考えられます。 

街というのは、建物が建ち、そこで人が商売をし、住み、コミュニティが作られて、初めて街といえます。
その街は地場産業が衰退し30年くらい経つと、街自体が消えてしまう可能性もあります。
しかし、この「e-Palette」が作る街は、もしかすると1日や2日で消えてしまうかもしれません。
2日だから街じゃないのかと言われると、決してそんなことはありません。
そこで経済活動が行われ、人が住み、消費活動をすることで、いわゆる「街」が作られていくのです。
そういった考え方をトヨタ自動車は打ち出しているのではないかと私は思っています。 

こうなるともうトヨタは自動車メーカーではありません。
もしかすると都市開発をする会社かもしれないし、インフラの会社かもしれないし、イーコマースの会社かもしれません。
それほど、自分たちの産業がこの後どう変わっていくのかということを、改めて大きな視点で見る時代になってきていると思います。 

これらの構想を自社だけでやろうと思うと当然難しい。
トヨタ自動車もいろいろな企業、パートナーと組んで実現しようとしています。
今回トヨタ自動車はこの構想をAmazonと組んで実現しようとしていると発表しましたが、このように今自分にないリソースはどんどん外と組んで実現していく。 

つまり、事業自体でどのようにブランドを作っていくかということです。
昔だと、自社らしい車とはどういう車だろうか、どういうデザインがいいだろうかというように、モノを作る考え方でブランドを作っていましたが、今は事業自体をどのように編成するかによってブランドを作る時代になっているということです。 

リアル(店舗)のEC化、ECのリアル(店舗)化

ミクロの視点で消費者の購買行動を見てみると、そこにも大きな変化が起きていることがわかります。

一つはリアルのEC化とECのリアル化です。
リアル店舗をずっと展開していた旧来型のブランドが、ECの領域にどんどん進出してきています。
逆に、ECで展開しているお店は、事業を拡大するプロセスにおいて、ECでモノを売ることに限界を感じています。
ECでモノを買うときに実際に商品を確認できないことや、人の顔が見えないということは消費者にとって不安要素です。
そのためお店に行って購入したいという購買行動が起きていることも事実です。
EC展開の企業は、お客さまにいかにリアルに商品を体験してもらうか、を課題として抱えています。 

事例紹介:オンラインスーツがオンラインで購入可能。紳士服のコナカ「DIFFERENCE」

一つめは、紳士服で有名なコナカが展開している、DIFFERENCEというオーダースーツのブランドです。(https://difference.tokyo/

仕組みとしては、一度来店した際に自分の体の寸法を測ります。
そうすると、その寸法がデジタル上でストックされます。
そのため、2回目以降はモバイル端末からスーツがオーダーできるという仕組みです。
モバイル端末上で生地を選び、その生地で自分の体にあったスーツが作れる。
そういった購買体系をデザインしているのがこのDIFFERENCEです。
これはリアル(店舗)のEC化の事例です。

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事例紹介:試着から購入、接客まですべてオンライン。「Warby Parker」

二つめは、アメリカのWarby Parkerというメガネメーカーです。

この企業はECで商品を売るという前提で起業した西海岸の企業です。
しかしメガネという商品の特性上、お客さんには画像だけではなく商品を確認したいというニーズがあります。
それに対しWarby Parkerは「Home Try-on」というサービスをつくりました。
好きな商品を5つ選んで、5日間自由に試着することができます。(https://www.warbyparker.com/

 お客さんが試着をオーダーすると、家に実際の商品が届きます。
それを試着し、気に入った商品があれば購入するという購買体系です。 

また、Instagramを活用した顧客とのコミュニケーションも注目です。
例えば試着用にメガネ5つ選びましたが、どのメガネが自分に合うか分からないということはありませんか。
そういう時、自分がメガネをつけた画像を#warbyhometryonでアップすると、お店のスタッフからアドバイスが貰えるようになっています。
このような接客まで含めて、ウェブサイト上で完結しているのがこのWarby Parkerの例です。 

さらにWarby Parkerはリアル領域にも進出してきています。
店舗展開をはじめ、現在は70店舗ほどです。ECサイトの企業がリアル(店舗)に進出している事例です。 

事例紹介:ECサイトで自動車を販売。アリババの「自動車の自動販売機」

三つめとして、中国のアリババの事例を紹介します。

アリババが自動車の自動販売機を作るという記者発表がありました。

お客さんが自動車を購入する際、購入する車を一度試乗したいというニーズが必ずあります。
そうなると、ECサイトで自動車を販売するのはなかなか難しい。
ではどのタイミングでお客さんに試乗体験をしてもらうのが一番いいのか。
そこで自動販売機というサービスが出てきました。 

これは自動で試乗体験をしてもらうための場所として機能しています。
試乗までの流れとしては、ビルの1階のフロアにレセプションがあり、そこでチェックインをします。
チェックインの際には既に顔認証が済んでいるので、モバイルを持って指定の部屋に行くだけで自動で扉が開き、自分が乗りたいと注文した車の鍵が出てきます。
その鍵で車に試乗、気に入ったらその場で購入も可能という購買体験の設計になっています。
このように、最近のEC企業は、いかにお客さまに対してリアルな体験をしてもらうかをとても大事にしています。 

Online to Offlineという言葉がありますが、今は、「お客さんの元に商品が届く」、「お客さんが商品確認にお店へ行く」など、オフラインが主の体験となっています。
しかしテクノロジーの発展により、VRを含めたデジタルツールですべてできる可能性もあります。
つまり、オンラインの中でどのように体験を完結させるかということが、EC企業にとって課題になると考えています。 

事例紹介:事業構造と購買行動を一つの文脈に。アリババが運営する「盒馬鮮生」

もう一つ中国の面白い例があります。
事業構造とお客さまの購買行動全体をいかに一つのコンセプトとするか、というブランドデザインをしている企業があります。
アリババが運営する「盒馬鮮生(Hema Xiansheng、以下Hema)」というスーパーマーケットです。
https://www.freshhema.com/

普通に来店して買い物(オフライン)もできますが、オンライン購入も可能です。
ECサイトで購入する際、中国で社会問題化しているのは、購入した商品が本物かどうかということです。Hemaは消費者のその心配を見事に解決しています。 

Hemaの場合、ECサイトで購入をすると、自分の住んでいる場所から3キロ圏内にあるお店にオーダーが入ります。
店にはECサイトから注文された商品をピックする専門スタッフがおり、そのスタッフがモバイルで注文を確認しながら、店頭でどんどんカゴの中に商品を入れていきます。
オーダー商品をすべて入れ終わると天井のベルトコンベアにカゴをかけ、バックヤードに運びます。
バックヤードでは配送スタッフが何人も待機しており、自転車のカゴに載せて指定されたお客さんの元に届けるのです。 

Hemaは3キロ30分というテーマを掲げており、店舗から3キロ圏内のオーダーであれば、30分で届けますというクイックさを売りにしています。
また、新鮮を届けるというコンセプトも掲げています。“新鮮”を届けるために、実際の店舗の商品を専門スタッフが目利きしています。
そういった透明性の高いオペレーションが消費者の信頼度を高めることにつながっています。 

事業構造の視点でみると、ECサイトでの購入の場合、購買履歴が残ります。
その履歴を分析してみると、地域によって買うものの趣向が異なることがわかります。
それを今度はAIが学習し、各店舗で売れ筋の商品だけを集めた商品構成へと自動でどんどん変わっていくようになります。 

タイムセールなどリアルタイムで商品の価格が変わることがありますが、Hemaでは店頭のプライスタグがすべて電子タグになっているため、ECサイト上の商品価格が変わると店頭の商品の価格も変わります。
オンラインもオフラインもお客さまの購買体験に差がないよう、徹底して取り組んでいるのです。 

他にも生簀で泳いでいる魚をその場で調理してもらうことができるなど、新鮮さをアピールしたサービスを提供しています。
商品のすぐ横にキッチンやイートインスペースがあり、リアル店舗にきたお客さんに対し、取り扱っている商品がいかに新鮮かをブランド全体で表現しているのです。
それが事業構造と購買行動の部分にも落とし込まれている点が、Hemaの優れたところだと思います。 

コンテクストが一本の文脈として成立しているところが、特徴的だといえます。

まとめ「すべての企業はサービス業へ」

「すべての企業はサービス業へ」というように、あらゆる企業が今後サービス業になっていくと考えています

例えばこれまでメーカーはモノを売っていましたが、これからは「利用してもらう」という時代になってくるということです。
そもそもモノ自体がコトの文脈なので、モノを売る必要はなく、コトを提供するためにお客さんに利用してもらうという視点が成立するということです。 

先のHemaの例でいうと、事業構造自体をブランドのコンテクストとして整え、それを軸として、どのように事業構造を作っていくかということが重要になります。

自動車会社であれば、自動車を作ることは決まっています。
それを前提として、これまでは「どんな車を作っていくか」「どんなブランドを作っていくか」を考えていましたが、「モビリティサービスカンパニー」としてのブランドを作ると発表をしたトヨタ自動車のように、ブランドでめざすビジョンというものを規定してから、事業構造も変えていくということも可能になります。 

また“Online to Experience”というミクロの視点も大切です。
リアル店舗を持つ企業がオンライン店舗の展開を始めたり、オンライン店舗からリアル店舗へ展開したりなど、顧客接点は増えています。

最も重要なことは、お客さまが購買に至るまでに、どのように商品を体験してもらうかではないでしょうか。

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