Amazonの返品カウンターが顧客活性化のカギを握る? 米国『Kohl’s』の挑戦

日本では、ガソリンスタンドやコインランドリーなど、コンビニと他業種・業態とのコラボ店舗が増えつつあります。同様にアメリカでも、消費者にとって必要不可欠なサービスとタイアップすることで集客に繋げるデパートチェーン「Kohl’s」があります。このKohl’s は「商売敵」とも言える「Amazon」をうまく活用しながら顧客獲得や売り上げを伸ばしています。今回は、この事例から店舗活性化のヒントを探ってみたいと思います。

「Kohl’s」 と「Amazon」の思惑

そのKohl’sが2017年9月から新たな秘策、「Amazonとの提携」を打ち出し評判を呼びました。ロサンゼルスやシカゴに、Amazon で購入した商品を返品できる「リターン・デスク」と「アマゾン・スマート・ホーム・エクスペリエンス」を開設したのです。

しかも、Amazon 専用の売り場も常設し、スマートスピーカーの「Amazon Echo」に始まり、エコー・ファミリーにファイアーTV・ファイアータブレット・キンドル電子書籍リーダー・アクセサリーなどのサービス関連商品を販売。Amazon スタッフも常駐し、製品説明やデモンストレーションも行っています。Amazonにおいては、「OtoO」戦略の一環として実店舗による販売促進の役割を果たし、すでに店舗として実績のある立地、安定した集客が見込めるKohl’sへの出店は願ってもないことだったでしょう。

Kohl’sにおいては、返品に来たAmazonの顧客を自社に取り込むという狙いは明確です。ゴードン・ハスケット氏の調査によれば、提携以来、リターン・デスクのある店舗への集客数は、それを持たない店舗より約8.5%上回り、返品に来た人の約56%が『Kohl’s』の新規顧客となったそうです²。さらに、顧客は返品した店舗での滞在時間も伸びているようです。

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アメリカ人の「返品」に対する考え方

日本では通常、商品の返品は不良品などの理由がない限りあまり多くはないと思います。しかし、アメリカでは商品が不良品でなかろうと、レシートがあれば何の遠慮もなく返品するのが当たり前です。そのため、Kohl’sの返品カウンターはいつも行列。食べかけのクッキーを返品しようとしている人を見かけたこともあります。

アメリカに住んでいて感じることはとりあえず買ってみて、気に入らなければ返品すればいいという感覚です。そのため、返品に対するルールがとてもゆるく、レシートさえあればほぼなんでも受け付けてくれます。
しかし、Amazonの返品は自分で郵便局へ行き、手続きをしなければならないので、面倒で時間もかかります。「返品の手間をかけたくない」、「返送料の支払いが省ける」、「梱包が面倒」などの理由から、「オンライン購入したものの返品は店舗の方がよい」と答えた人が70%もいるのです。

一方、Kohl’sへ持ち込めば時間も節約でき返品手続きもしてくれるため、消費者にとっては非常にありがたく便利です。そして、Kohl’sにとっても日本とは比べ物にならないほどの返品数(来客数)が見込め、その顧客を取り込むという戦略は、商売敵のデスクを置くことになっても元が取れる話と言えるでしょう。

返品のみの来店者にもクーポン配布

Kolh’sの集客方法といえば「クーポン」や新聞広告、会員向けには郵便広告やメール配信、ネット広告など、とにかく割引クーポンを配布するのが王道です。そしてKohl’sの商品を何も買わず、返品だけの顧客にも次回の買い物で25%オフになるクーポンを配るのです⁴。ただし、利用期間は7日間限定なので「使わなければ損! 何か買わなきゃ。」と思わせ、返品だけの来店でも集客につなげていくという戦略を取っています。

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今後の実店舗ビジネスの起爆剤となるか

Kohl’sでは、2017年度の売上高が前年比で約3.9%と伸びており⁵、第2・四半期の利益も前年同期比4%増の45億7000万ドルと予想していました。実際は予想が外れたものの、店舗売上高は3.1%増という結果になり、2018年度の業績見通しを引き上げました。もちろんAmazonを店舗内に取り入れた結果とは言いきれませんが、新規顧客の獲得において、Amazonは大きな役割を果たしていると考えられます。今後、全米1,158ある全店舗にAmazonのリターンデスクとアマゾン・スマート・ホーム・エクスペリエンスが常設された場合、さらなる飛躍と相乗効果が期待できると予想されます。

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まとめ

Kohl’sとAmazonは同業者であり一般的には客を奪い合う存在と思われますが、敵をうまく取り込むことで自社の集客に繋げるKohl’sのやり方は学ぶべきところが多いと言えるでしょう。今年も間もなくホリデーシーズンがやって来ます。アメリカの返品に対するマインドを逆手に取り、Amazonを取り込んだこの奇策は、2年目の2018年、どのような結果を出すか楽しみです。

¹https://corporate.kohls.com/content/dam/kohlscorp/company/purpose-and-values/2017_Factbook%20Kohls.pdmjj8okf
²https://www.detroitnews.com/story/business/2018/05/07/amazon-returns-boost-shopper-traffic-kohls/34668463
³https://www.zdnet.com/article/kohls-to-offer-amazon-returns-as-two-retailers-cozy-up-on-omnichannel
https://www.businessinsider.com/how-to-return-amazon-orders-at-kohls-2017-11
https://corporate.kohls.com/content/dam/kohlscorp/company/purpose-and-values/2017_Factbook%20Kohls.pdf

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