街全体がモンドリアンカラーに!デ・ステイル100周年のオランダで見つけた地方創生プロモーション事例

■小国ながらデザイン大国のオランダ。今年注目の、「デ・ステイル」とは?

あまり知られていないかもしれませんが、オランダは建築やアート、デザインで注目を浴びている国のひとつ。著名デザイナーが手掛けたスタイリッシュな家具や生活用品が身近にあるのは当たり前。空港や市役所、図書館や病院など公共スペースはどこもカラフルで遊び心があるおしゃれな空間になっていたりします。

そんなオランダで2017年、国を挙げた目玉となるプロモーションが行われているのをご存じでしょうか。そのテーマは、「デ・ステイル100周年」。

「デ・ステイル (De Stijl) 」とは19世紀にオランダで創刊された芸術雑誌「デ・ステイル」と、この雑誌を中心に起こった芸術運動のこと。運動の中心人物だったピエト・モンドリアンをメインに、現代のダッチデザインまでの100年間のデザインの歴史を振り返るさまざまなPRイベントが、年間を通してオランダの各地で行われる予定です。「オランダは花と風車だけではない、デザインにも卓越した国」であるということを、国を挙げて世界中に発信していこうとしています。

■地方へ行こう!街全体がアートの仕掛けでいっぱい

アムステルダムから電車で40分、古い町並みが残り、歴史の息づくライデン市は、この「デ・ステイル」の発祥の街です。街の歴史的観光地を活かし、6月上旬の週末には「デ・ステイル100周年」のキックオフウィークエンドと称して街中でさまざまなイベントが行われました。無料配布されたパンフレットには、市の観光地図にイベントの具体的な場所と内容が記されており、街歩きを楽しみながら、興味のあるイベントへ行けるように工夫されていました。

ライデン最古の教会である聖ピーターズ教会前の広場は、野外美術館に変身。「デ・ステイル」の作品やアーティストにインスピレーションを受けた20人の現代アーティストの抽象デザインの壁画が並びました。古い石畳の教会広場や中世ヨーロッパの建物と、ビビットな色合いのコンテンポラリーアートのコントラストが道ゆく人の目を引き、立ち止まって写真を撮る人たちが多くみられました。

ライデンの観光名所である「The Burcht van Leiden」は昔の要塞の跡地。ここでは、6月2~4日の3日間のみ、デ・ステイルのミニマムなアートスタイルから発想を得た特設デザインホテルが登場しました。緑の丘のあちらこちらにベールのかかったベッドが数台用意され、普段は泊まることのできない野外の観光スポットで数組が一夜を過ごせるというスペシャルな企画。夜にはミュージカル、翌朝にはヨガレッスンと朝食が用意されるというユニークで興味をひく内容でした。

そして、同じ週末には、駅から旧市街へ向かう途中の広場でも赤、青、黄色のモンドリアンカラーを用いた巨大アートモビールの組み立てショーを開催。飛び入りした参加者が一つ一つモビールのパーツをスタッフに手渡し、クレーン車に釣られたモビールがバランスをよく組み立てられる過程を楽しめる体験型イベントで、特に子どもたちから人気でした。

https://www.visitleiden.nl/en/discover-leiden/specials/de-stijl

■各都市がアートで街をブランディング。その工夫に迫る

今回の「デ・ステイル」のイベントには、おもに二つの目的がありました。一つは、モンドリアンアートの特徴をうまく利用して現代的手法で再現し、モンドリアンというアーティストを多くの人に知ってもらうということ。もう一つは、アートやトレンドに敏感な街をアピールする、シティ・プロモーションとしての位置づけです。

ライデン市同様、モンドリアンのアートが多数展示されている市立美術館のあるデン・ハーグでは、「The Hague Paints the town in Mondorian (デン・ハーグの街をモンドリアンカラーにしよう)」と題して、大々的なシティ・プロモーションを積極的に実施しています。モンドリアンカラーは、赤、青、黄色の三原色の目立つ色の組み合わせ。この色と、垂直線と水平線を組み合わせたモンドリアンアートは建築に応用しやすく、駅の階段、市役所、ホテルなど交通量が多く街の主要箇所、大きな建物に適用されて、すぐにこれらはパッと目をひくアートオブジェに早変わりしました。

https://denhaag.com/en/mondrian

オランダを訪れる観光客は主に首都のアムステルダムに集中していますが、このようなプロモーションを通して他の地方都市にも人々を誘致し、各市がいろいろな形で街をアピールしています。人が集まる駅前や市場などで無料でパンフレットを配布したり、市のホームページなど従来の告知方法でイベントへの集客を図るのはもちろんですが、モンドリアンカラーを使った仕掛けは、視覚的にわかりやすくフォトジェニックであるため、FacebookやインスタグラムなどSNSでも取り上げられやすく、特に若者の間で瞬く間に拡散していきました。

デン・ハーグの観光案内所では、モンドリアンカラーのソックスなど限定グッズも販売しています。また、オランダで定番のチョコレート「Tony’s」ではモンドリアンカラーのパッケージチョコをオランダの限定箇所で販売。少し変わったところでは、トマトの販売会社が、トマトの段ボール箱にモンドリアンカラーを採用していました。

■地方都市で街ぐるみでイベントを盛り上げるためには?

ライデン市では、市内の病院や保険会社でデ・ステイルのアート作品の展示が2ヶ月間無料で行なわれたり、キックオフウィークエンドでは大きなイベントの他にも市内の公園や運河などいたるところでデ・ステイルを題材にした演劇やコンサートが無料で開催され、街全体がとても盛り上がっていました。直接イベントを開催していないカフェやショップ、個人企業もモンドリアンカラーを窓枠にディスプレイし、街全体に統一感をもたらしました。

「デ・ステイル」のPR素材の特徴を活かした、大胆でクリエイティブな企画はまだ多数あります。シティ・プロモーションの成功ポイントは、できるだけ多くの人が足を運びやすく、気軽に参加できるように仕掛けていくことです。企業や施設を巻き込んだイベントの参考として、是非デ・ステイル100周年で盛り上がるオランダの事例をチェックしてみてください。

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