アメリカ・ミネソタ州東部に位置するショッピングモール「モール・オブ・アメリカ」。
その広さ、店舗数、内容などから全米最大級のショッピングモールといわれています。ヤンキーズスタジアム7個分すっぽり入るという4階建ての巨大施設には、Macy’sやH&M など国内外の人気ブランド520店舗が立ち並んでいます。また、50を超えるのレストラン、全米最大の屋内遊園地Nickelodeon Universeや水族館、チルドレンミュージアムや映画館などさまざまなエンターテイメントが網羅された総合施設なのです。

昨今のショッピングモール経営は集客や売り上げ面で厳しい状況の中、年間400万人以上の全米ナンバーワンの訪問客数を誇るモール・オブ・アメリカはなぜこんなに人気なのでしょうか?

■モール・オブ・アメリカでちょっと話題のあのチーム

eMarketerによると、今のインターネット使用者の73%がカスタマーサービスにおいて幅広い連絡方法のオプションを好むという結果を記載しています。特にこの傾向はミレニアル世代(18歳から37歳まで)が敏感なようです。
一昔前であれば、お客様窓口番号に電話をかけるのが一般的でしたが、今ではメール、ウェブサイトでのチャット機能やソーシャルメディアを通じて、会社に簡単にコンタクトを取れるようになりました。

モールを訪れる10人に1人が観光客だというモール・オブ・アメリカ。そんな多様な客層に対応するためのテキストサービスやSNSのメッセージサービスを使ったカスタマーサービスが卓越している、と各種のメディアで話題になっています。一体他のモールのサービスとどこが違うのでしょうか?実はその裏には顧客をとりこにする、あるチームの存在があったのです。

■かゆいところに手が届く。卓越したSNSカスタマーサービスで顧客の心をわしづかみ

それは「Enhanced Service Portal (略してESP)」と呼ばれる顧客とのデジタルコミュニケーションを統一する7人のチーム。

Social Meteor.comによると、このチームはモール・オブ・アメリカのソーシャルメディアチャンネル(ツイッター、フェースブック、ユーチューブ、インスタグラム、ピンタレスト、フォースクエア、タンブラー等)をモールの営業時間中絶えず管理しています。このチームのミッションは、ずばり「モールを訪れてくれた人に一番親切なソーシャルメディア体験をしてもらうこと」。モールのソーシャルメディアチャンネルからさまざまな情報を発信しているほか、モールに来ている人達のソーシャルメディアの会話を見つけて、コメントしたりしています。

Mobile Commerce Dailyの取材によると、SNS戦略のキーワードとして(1)Active Listening(2)Connecting(3)Engagingの3つを掲げ、ゲストの声を聞き、モール・オブ・アメリカのブランドとして的確な答えを素早く提示するため、日々ソーシャルメディアスペシャリストとしてさまざまなトレーニングを受けています。

例えば、ゲストがツイッターであるイベントについて会話していて、何か困惑しているようであれば、ESPチームがその会話に積極的に入っていき問題解決をしていくのです。

このチームはただ単にゲストの悩みを解決するだけでなく、ソーシャルメディア上の会話の中でイベントのフリーパスやギフトカードを提供するなどしてゲストを驚かせ、喜ばせる努力をしています。また、ソーシャルメディアで対応する前には必ずゲストのプロフィールを読み込みコミュニケーション方法に変化をつけるようにしているのもESPならではの気配りなのです。

またESPチームはGeofeediaというソフトを使い、モール内で飛び交っているソーシャルメディアの動きをすべてトラックしているのです。ゲストの使うスマートフォンで全て場所がタグ付けされています。この場所を特定することにより、素早くゲストに対応することができるのです。実はこの場所タグ付け機能は、犯罪防止のツールとしても一役買っています。窃盗したところをビデオに撮影してソーシャルメディアに投稿したり、トイレでタバコを吸っている写真を見つけた場合、その投稿時間などですぐにどこで犯罪が起こっているかを確認しセキュリティー部に報告することができるのです。

またモール・オブ・アメリカ内では、店舗案内などの情報をいつでもテキストメッセージ経由で質問でき、2分以内に返事がもらえるサービスが好評です。例えば、ゲストが食べるところを探している場合は、何箇所かゲストの好みに合わせたレストランをおすすめし、予約までとるという徹底したサービスを展開。そうしたゲストへのきめ細やかなサービスを続けた結果、マーケティングコンサルタントのFrederic Gonzalo氏のレポートによると、2015年では1万6千件以上の利用があったというから驚きです。

■ゲストに消費行為そのものを「体験」として楽しんでもらうことが生き残りのカギに?!

全米最大級の広さを誇るモールで、毎日のように全米最大級の客数であっても、一人ひとりのゲストを大切にし、ゲストとの距離感をぐっと近くするESPチーム。今後も、デジタルサイネージを利用した新しいインタラクションの可能性など、他にもゲストを巻き込みファンにしていく作戦があるようで、まだまだその勢いは止まりません。消費者が店舗に出向き買うという行為を「体験」として楽しむ昨今、このチームはモール・オブ・アメリカの生き残りにかかる特効薬なのかもしれません。
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