SNS大国として知られるタイ。特にFacebookとLINEの人気は高く、Thoth Zocial社が2015年に行った調査によれば、総人口約6,500万人に対し、Facebookの利用者 は3,500万人、LINEの利用者は3,300万人と、人口の半数以上を占めるとされています 。また、We are socialが発表した「Digital, Social & Mobile in 2015」では、タイ人が1日にSNSに触れる時間は平均3時間46分にのぼる という調査結果も公表されており、SNSは日課のひとつといってもよいほど、タイ人の日常生活に深く浸透しています。

これらに加え、Instagramも近年急速に存在感を増しており、Digital Advertising Association of Thailand(DAAT)によると、タイではSNS利用者の男女比がほぼ半々であるのに対し、Instagramは女性利用者の割合が約65% という興味深い調査結果があります。これは、女性向けの衣類や美容関連の商品の紹介の場としてInstagramが広く利用されていることに起因していると思われ、ソーシャルコマースの場として今後ますます利用者の拡大が期待されています。

そんな中、タイ国政府観光庁(TAT)とVisa Thailandがタッグを組み、FacebookとInstagramを活用した新たな観光プロモーションキャンペーンを2016年6月より開始し、大きな盛り上がりを見せています。今回は、そんなタイならではのSNSを活用した最新プロモーションについてご紹介します。

ローカル視点からタイの日常を紹介する試み

さらなる外国人観光客の誘致を目的にスタートした観光プロモーションキャンペーン「See Thailand through Local Eyes」。従来の観光キャンペーンの常識を覆し、仏教寺院の黄金に輝く涅槃仏、プーケットの美しいビーチなど、外国人にもよく知られているタイの観光名所はあえて紹介をしていません。観光客向けの絵葉書に採用されてきたような古典的な名所ではなく、タイ人がローカルならではの視点で選んだ各地の見所を世界に紹介しようという、これまでにないユニークな試みとなっています。おすすめの食べ物や、見るべき・訪れるべき場所を一般市民に自由に撮影してもらい、#notatourist 、#VisaThailandというハッシュタグを用いてFacebookとInstagramへ写真を投稿するよう呼びかけを行っています。

集められた写真の数々は公式WEBサイトに掲載され、誰もが自由に閲覧することができます。このWEBサイトでは「食べる」「買う」「泊まる」「リラックス」といった6つの行動別に写真を検索できるほか、目的の都市に絞って写真を探し、旅先での滞在プランを計画するといったことも可能となっています。また、同時にFacebookとInstagramでも写真を公開しており、シェアによる写真の拡散を目指しています。

ショートフィルム“Visa #notatourist Thailand Postcard Reshoot”

今回のキャンペーン開始に先駆け、映画監督・写真家のThanachart Siripatrachai氏が撮影したプロモーションフィルムがYouTubeにて公開されました。映像前半では、撮影方法のレクチャーを受けた一般の人々が、カメラを手に実際に街へ出て行く様子が紹介されています。フルーツ売りの女性やトゥクトゥクのドライバー、ビジネスマンなど、さまざまな職業を持つ人々が街角で写真撮影に挑戦する光景がおさめられており、バックに流れる陽気なタイの民族音楽モーラムの効果もあって、軽快で楽しい映像に仕上がっています。

また、後半では、外国人観光客が土産物店で今回のキャンペーンによって制作されたポストカードを手に取るシーンが登場。ポストカード上のQRコードをスマートフォンで読み取り、キャンペーンサイトに掲載された投稿写真を閲覧する様子が紹介されており、プロモーションの趣旨がわかりやすく説明されています。

シェア欲とイベント参加欲が高いタイ人

キャンペーン開始後約1か月が経過した2016月7月上旬には、Facebookページ「VisaThailandTH」のいいね!数は早くも2,026万人 に達し、Instagramにおける写真の投稿数は「#notatourist」42,000件 、「#VisaThailand」11,000件 にのぼっています。

美しいものを好むといわれるタイ人。特に女性は「美」=「善」という価値観を持つ人が多く、「きれい」や「かわいい」への反応感度が非常に高いといわれていますが、この特性はSNS上でも健在。自分がきれい、良いと感じるものを他人にシェアすることに非常に積極的といえます。フォトジェニックな日常風景や旅先での美しい写真を日常的にSNSにアップしている人は筆者の周りでも多く、日頃の延長でこのキャンペーンに気軽に参加をしている人が多いものと思われます。また、今回投稿されている写真のなかには、自身や家族、友人が写った写真も目立ち、自身のものと思われる結婚式の写真を投稿している人も。SNS上において、自身のアカウントではなく、企業等のページに自撮り写真をアップすることはタイでは珍しくない現象です。

また、TATとVisa Thailandは今回のキャンペーンで投稿された写真をもとに10万枚の絵葉書を制作、世界各地で配布を行い、タイへの観光客誘致活動に役立てる予定とのこと。「あなたの写真が外国人の目に触れるかも?」というユニークな触れ込みは、好奇心旺盛なタイ人の心に大いに響いているようです。さらに、Facebook上で高評価を獲得した写真の撮影者に対してはカメラのプレゼントも用意されており、イベント参加欲の高いタイ人の心に響く様々な仕掛けが用意されていることも、キャンペーンを盛り上げている一因といえます。

開始したばかりにもかかわらず、すでに多くのタイの人々を巻き込んで盛り上がりを見せるこちらのプロモーションキャンペーン。SNS上のシェアによる一層の盛り上がりが期待され、今後の展開から目が離せません。タイ人の気質を見事に活かしたSNSプロモーションのお手本として、さらなる成功のカギを探ってみてはいかがでしょうか!?

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