ブラジャー(以下、ブラ)選びは、多くの女性を悩ませることの一つではないでしょうか。友達や彼氏、旦那と一緒に行くのも気が引けるし、定員さんに採寸してもらうのもなんだか気まずい。ピンク色で囲まれた明るい店内、レースで覆われたセクシーな下着たちに囲まれ、思わず逃げ出したくなる人もいるかもしれません。

米国ランジェリー市場の約62%を占めるのが、セクシーを全面に打ち出す「Victoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)」です。ランジェリー界の代名詞となったVictoria’s Secretに対抗し、ここ数年間、全く違った視点からオンラインでランジェリーを販売するEコマース・スタートアップの異端児たちが次々と出現しています。百貨店やブティックで店員との対面販売に気後れする、消費者のニーズに合わせて生まれたスタートアップ企業。
本記事では、そのビジネスモデルやプロモーション戦略に焦点を当て解説していきます。

アメリカで注目されているブラ・スタートアップの特徴とは?

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2012年にサンフランシスコで生まれたスタートアップ「True & Co」。同社では過去5年間でおよそ700万の消費者データポイントを基に、商品化とウェブサイトの適正化をはかっています。消費者のブラサイズはもちろんのこと、見ている商品やカートに入れる商品、返却されやすい商品は何か?など。さらに、一般的にジーンズが6つのパーツで構成されているのに対し、ブラは20のパーツと他の洋服と比べて多く、これも回収したデータを元にスタイルやカラー、サイズ、その他の機能を決めているそうです。
また5つのブラを自宅で試すことができ、合わないものは無料で返品可能です。同様に他のECサイトでも「返品・交換無料」はマストで、消費者が気軽に試すことができます。

もう一つは「メモリーフォームTシャツブラ」がヒットした、サンフランシスコのスタートアップ「Third Love」。アパレルブランド「Aéropostale」の元リテールディレクターと元GoogleデジタルエグゼクティブのHeidi Zakは、タンクトップを着てセルフィーを撮影しその画像から的確なブラサイズを提案するという、画期的なアプリを展開しています。

男性目線の「寄せて上げてのセクシーな私」から「盛らない自分らしさ」へ。

ここ数年でミレニアル世代の消費志向の変化により、ワイヤー入りのブラジャーからAthleisure(アスレジャー:アスレチックとレジャーを合わせた造語で、普段着として気軽に着られるスタイリッシュなアスレチックウェアのこと)志向がますます高まっています。NPDグループの調査によると、ミレニアル世代の約41%は一週間のどこかでスポーツブラをつけていたと回答し、他の年齢層の回答約21%に比べ、ブラジャーに着心地を求めていることが明らかになっています。

このトレンドに乗り好調に売上を伸ばしているのが、2016年にスタートした「Lively」。アクティブウェア、水着、下着デザインの境界線を飛び越え、ファッション性がありながらも着心地のいいブラを開発しました。

今までアメリカにおけるブラのプロモーションは男性目線で、女性に着てもらいたいものを開発し、それを刺激するように「完璧なボディ」のモデルを起用してプロモーションをかけるのが定番でした。今のスタートアップはそれとは真逆の方法をとり、着心地や着ている自分に自信がつくような「女性のための下着」、そしてそれを応援する「自然体」なプロモーションが目立ちます。

2016年にスタートしたLivelyも、スタート直後は草の根キャンペーンからはじめました。まず250人の家族や友人にLivelyのメールを共有してもらい、そのメールの数に対し購入ディスカウントを与えるという方法を取り、2日間で13万以上のメールとウェブサイトでは28万のビジター数(同じ人の複数回訪問はカウントなし)を獲得することができたのです。

またLivelyでは、Instagramを消費者との「コミュニケーションプラットフォーム」として120%活用しています。例えばユーザーが「#needthis」とつけると、その投稿が自動でメールのタイトルとなり商品開発部に転送される仕組みになっているのです。

今まで多くの女性を悩ませていたブラ選び。データサイエンスやテクノロジーを駆使し消費者の悩みを解消し、新たな視点でプロモーションを行う例はランジェリー業界だけでなくさまざまな業界で生かせることでしょう。

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