元気な老後を過ごしたいというのは日本も海外も同じ。いわゆる「アクティブシニア」層は、日本のみならず、ここアメリカでも一定数、存在します。健康への関心も高く、日々心豊かに暮らすために習い事にも積極的に参加する傾向があります。

気になるそのラインアップはというと、ヨガ教室や瞑想教室など、スピリチュアルなものから、陶芸や絵画などのアーティスティックな作品作りまで、その幅はとても広いです。なかでも、ここ最近、徐々に人気が高まっているのがバレエ。シニア女性に特に支持されている、人気の理由はどこにあるのでしょうか?筆者が住むボストンで特にシニアに人気のボストン・バレエからその秘訣を探ります。

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■60歳以上のシニアが在籍するボストン・バレエ

ボストン・バレエは、アメリカ屈指のバレエ団のひとつ。市民にも開放されており、付属のバレエ教室があります。生徒の年齢上限はなし、心身の障害の有無も関係ありません。チュチュに憧れる幼い子どもたちから、バレリーナを目指す若者、そして、60代の手習いどころか、70代、80代のシニアまで、それぞれが自分のペースでバレエを楽しめる場所、それが、ここボストン・バレエ学校です。

■なぜシニアは習い事としてのバレエに興味があるのか

日本では、子どもたちの習い事として人気が高いバレエ。アメリカでは、その優美でしなやかな体の動きによって体幹を鍛えたり、優れた芸術性を楽しむ習い事として、すべての年代から支持されています。

特にシニア層には、指先の細やかな動きだけでなく、大きな動きで身体全体のバランスを整えることが体力維持、またけがの予防につながるとして、注目されています。同じような目的で、太極拳やヨガも人気を集めていますが、バレエにはほかにはないとても重要な要素があります。それは、「乙女心を刺激する魅力」です。いつまでも健康で、かつ美しく、かわいらしくいたい、というシニア女性の心理をくすぐるのが、バレエだったのです。

■乙女心をくすぐるものといえばやはりこれ!

小さな女の子がバレエに興味を持つ理由のひとつに、バレエならではの衣装があります。これは女性の永遠の憧れではないでしょうか。

ボストン・バレエ学校の大人向けのクラスは、服装は自由となっています。バレエシューズさえ履いていれば、憧れだったレオタードやタイツ姿で参加するもよし、Tシャツにスパッツという軽装でもOKです。最初は自前のTシャツで、という気軽さが、まずはバレエを始めるシニアのハードルを下げています。しかし、慣れてくると、思い切ってレオタードに挑戦するシニアが増える傾向にあります。ボストン・バレエ学校の紹介動画にも、レオタードを着て笑顔でレッスンを受けるシニア女性が映っています。

レオタードを着たくなる心境の変化は、レッスンに慣れてくるからだけではありません。講師は常に踊りの後で、生徒たちに鏡に映る自分をゆっくり見つめるよう指導します。そして、「さあ、自分にキスして、brag myself! (自分を褒めてあげて!)」と声をかけます。

「そこには、いつもの自分とは違い、少し若返ったように見える自分がいる。それがレッスンを続ける理由よ」。シニア層の生徒たちからはこのような声が聞こえてきます。ピンと背筋を伸ばし、レッスンを笑顔で楽しむ自分が愛おしくなる。そんなポジティブな雰囲気がレッスン全般にあふれているのです。

■お得なシニア割引を打ち出し、シニア層を囲い込む

ボストン・バレエ学校では、60歳以上のシニアであれば、レッスンの参加費が1回12ドルになるというシニア割引適応されます。講師陣は、ボストン・バレエが誇る、元プロのバレエダンサーたち。これほどのハイレベルな指導者のレッスンを割安で受けることができるというお得感も、シニア獲得に結びついているようです。

また、音楽はすべてピアニストによる生演奏。ピアニストにはそれぞれに個性があり、ジャズっぽいアレンジをきかせることもあれば、正統派のクラシック演奏の場合もあり、参加するたびに違うジャンルの生演奏を楽しむことができるのも魅力となっています。

健康にもよい、ボストン・バレエというブランド力、気軽に参加できる価格設定、そして、シニア女性の永遠の憧れや乙女心に火をつけるアプローチ。体を優しく鍛えながら、美しい立ち居振る舞いや姿勢を学び、踊る楽しさを体感できるバレエは、生き生きとアクテイブに暮らしたいシニア層の関心を引く要素が詰まっている習い事と言えそうです。

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