日本は現在、総人口の25%、すなわち4人に1人が65歳以上の高齢化社会で、国内の個人資産ベースでは60代以上が全体の6割以上を保有しているというデータもあります。そうなれば、当然マーケティングでもシニア層は重要なターゲットとなります。現代のマーケティング上欠かせない、シニア層にアプローチする手法をしっかり抑えておきましょう。

◯シニアとひとくくりにするなかれ! 多様なライフステージ

会議や会話の中で「シニアをターゲットにする」という内容で進んでいる時、まず気をつけなければならないのは、そのシニアのイメージをきちんと共有できているかです。と言うのもシニアとひとくくりにしても、その定義は現状曖昧そのもの。50代~と捉えるケースもあれば、定年退職を迎える60歳、年金受給が始まる65歳のケースもあるので、その認識はきちっと合わせる必要があります。
また、シニアは現役世代以上に個々のケースで生活状況の差が大きいのも要注意点。「シニア」が「何歳の、どんなライフステージにある人を指すのか」の定義と合わせて、高齢生活者特有の変容要素についても整理していかなくてはいけません。

行動特性

  • 社会的変容:就労の有無を含め、コミュニティの範囲の変化
  • 健康的変容:健康かそうでないか

性格特性

  • 世代背景変容:過去の経験から形成される価値観とその変化
  • 心理的変容:消費や生活に対する意欲の変化

地域特性

  • 経済的変容:収入・支出の変化

シニアという曖昧な言葉で話を進めず、特性を整理した上で、個別のターゲティングを行わなければ、シニアのインサイトを突くことは難しくなります。

◯抑えておくべきシニアへのアプローチの基本

シニアは、前述の通り、ライフステージや行動特性などで細かく分類しなくてはいけませんが、サービス内容やプロモーションにおいては、共通して抑えておくべきコミュニケーションのルールがあります。

その1 親近性

慣れ親しんだ商品・サービスに対する信頼性が高く、新しいものへの乗り換えに消極的という傾向があります。また、共感も重要なキーワードとなり、具体的な例では50代までは見栄えがするモデルが起用された広告が好まれるのに対し、60代以上は同年代に近いモデルの広告が好まれます。

その2 わかりやすさ

わかりやすく、かつ丁寧なコミュニケーションが信頼を獲得する上で欠かせない要素となります。シンプルでメリットがはっきりしているサービス、落ち着きと安心感のあるプロモーションが求められます。

その3 対人コミュニケーション

人と人で直接コミュニケーションをとることは、シニアとの関係性構築においてとても効果的です。言語的コミュニケーションに加え、顔の表情や視線、姿勢、対人距離、接触などの非言語コミュニケーションを通して、シニアの価値観の「受容」と「共感的理解」がなされ、信頼関係が生まれます。

このような傾向はありますが、「比較」「クチコミ」といった全世代に共通する要素も当然持ち合わせています。アクティブシニアに「年寄り扱い」のメッセージを送ってしまっては、きっと拒否されてしまいます。「どのようなシニア」に対して、「どのようなメッセージ」を送っていくのか。適切なコミュニケーションを設計しましょう。

◯『大人の休日倶楽部』に見るシニアマーケティング

シニア向けサービスとして人気を集めているのがJR東日本『大人の休日倶楽部』。年会費数千円の会員組織で、会員限定の割引やツアー、趣味の講座などを行っており、入会資格は50歳以上、東日本エリアでは吉永小百合さんのCMでもおなじみです。
時間的余裕のあるシニアに向けた、旅をキーとした鉄道利用。オトク感の高いシニア割引。シニア層の会員組織化による顧客ロイヤリティ向上と囲い込み。「年寄り臭さ」のないネーミングと、同年代のモデルを起用した落ち着いたプロモーション。
などなど、シニア向けのサービス・プロモーションとして参考になる点が多々あるので、一度調べてみるとシニア向けコミュニケーションの理解が大きく進むのではないでしょうか。

シニア層は個人的な特性に加え、それぞれの年代が経験してきた時代背景により、意識や行動に違いがあるため、5年後、10年後の「新しいシニア」は現在のシニアとは全く異なるターゲットとなります。しかし、マーケティングの重要ターゲットである点は今後も変わりません。各種マーケティングデータや、統計データを踏まえ、シニアとの適切なコミュニケーションを常に意識していく必要がありそうです。

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