台湾ではSNSの利用率が非常に高く、コンビニなどをはじめとした各社のプロモーションには、SNSが欠かせない集客手段となっています。SNSの中でも、特に facebookやLine、Instagramを中心に商品の割引やポイントなどの優待、PRなど、顧客に直接働きかけるプロモーションとしてごく当たり前になっています。例えば、Lineでは割引チケットを提供し店舗でチケットをスキャン、購買につなげる方法も多く取り入れられています。消費者が即時性やお値打ち感によって、購買にいたる割合は高いとされており、各社工夫を凝らしたプロモーションが展開されています。今回は台湾でのSNSにおける、顧客を店頭まで導くプロモーションを事例として紹介、考察としてまとめます。

台湾人はスマートフォンの普及以前より、Eメールやメッセージ機能を使い、友人・知人に転送、情報をシェアすることが大好きな民族です。例えば、旅行にいい場所やニュースで取り上げられたこと、ショッピングでのお得な情報など、様々な情報を共有する風潮があります。それを示すのが資策會?業情報研究所(以下MIC)の調査で、台湾人が最も信頼する情報として、友人・知人間口コミ情報77.7%、ついでSNSでの口コミ情報44.8%という結果になっています。それによって、企業もこれらの消費者動向をもとに「バスマーケディング」を主体としたプロモーションを展開しています。さらに、3大電子機器(パソコンやスマートフォン、家庭用電子機器)を買う前に82.7%の人がSNSで検索し、ついでグルメ関連61.3%、旅行49.1%、コスメ関連38.8%、家電36%と並び、購買前のSNS検索は欠かせないということも判明しています。

また、毎日使用するアプリとしてMICによる「行動App消費者調査分析」では、『Facebook・LINE・YouTube・WeChat・Instagram』が上位5つとなっており、2017年5月の資策會創新應用服務研究所(創研所)FINDチームの報告では、台湾人はひとり平均4つのSNSアカウントを持っていることも明らかになりました。Facebookが90.9%、LINEが87.1%、その後にYouTubeの60.4%、PTT(掲示板)37.8%、Instagram32.7%、微信、Twitter、Dcardと並んでいます。

SNSの特性を活かし消費者を導くプロモーション事例

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1、Facebook
台湾では、上述のように脅威の使用率を誇るFacebook。年齢幅も小学校高学年~55歳以上のシルバーエイジまでと実に多様です。そして、『チェックイン』機能を使って投稿する利用者が多く、企業では該当店舗にチェックインしてくれた消費者に「割引」や「ちょっとしたプレゼント」をする、その風潮や習慣を利用したプロモーションが日常化しています。また、Facebookでは企業がプロモーション投稿をすると消費者がコメントを残し、友だちの名前をタグ付けすることがあります。台湾人は「良い」と思った投稿に関しては気軽にシェアするので、企業自体が拡散にやっきになる必要もありません。

台湾の消費行動で日本と違うシステムが、お店側が発行する「統一發票」というレシート。これは消費者には宝くじのようなもので、2ヶ月をひとまとめとし当選番号が発表されます。「台湾セブンイレブン」では、この統一發票レシートをセブンイレブンのアプリに登録を促し、プレゼント提供するプロモーションをしています。例えば『台湾セブンイレブンの運営統一グループの組み合わせ商品1万組・フェイスマスク2000組・セブンイレブンコーヒー』が当選品のプロモーションもありました。これは、消費者が日常使用する製品などがもらえるちょっとしたお得感や幸福感を演出し、気軽にアプリ登録させることに繋げる仕組みです。アプリへのレシート番号登録で、消費者の購買行動などの収集と把握、また、分析して次回のプロモーションにも役立てるのです。

2、Line
Facebookのセキュリティ問題が発覚して以来、個人発信を控える傾向になり、その代わりに多く増えてきたのがLineでの連絡やシェア。企業側においてもFacebookに比べると、より「パーソナライズ」したプロモーション展開が可能というメリットもあり、Lineによる割引や優待、プレゼントなど、消費者へのプロモーションが増えている傾向にあります。

例えば、「夢時代」という大型ショッピングモールではFacebookに加え、さらにLineでの集客も熱心に行っています。夢時代とLineフレンドになると、定期的にイベントやプロモーションのお知らせが入ります。Facebook内での投稿なども当然ありますが、時間帯によって消費者が情報を見逃すこともあります。しかし、Lineでは個人への直接通知が可能で、通知が入れば消費者がチェック、購買行動につながる確率がさらに高まります。例えば、あるプロモーションでは化粧品などの臨時ブースで70%引きの特売を行い、女性消費者の購買と心を掴みました。例えプロモーションによる直接的な購買にならなくても、「実店舗へ足を運ぶ」ということが他店舗誘導への足がかりになり、ショッピングモール全体での売り上げ増加や活気に繋がっています。

台湾で展開する「ユニクロ台湾」も、Lineの会員獲得によるプロモーションを行なっています。まず、Lineで消費者にアプリをダウンロードさせて会員登録を促します。会員になると店舗で使用できる優待割引券が発行されます。Line上で定期的に情報を通知、消費者がそれをチェックし、気になる商品があれば実店舗に向かう。購買そのもの以上に目に触れる機会を増やし店舗誘導へ繋げ、消費者の購買と潜在顧客へのプロモーションに繋げています。これらの事例以外でも、どの企業もLine通知は通常1日1~3回くらい送り、常に企業のサービス・情報に目を向けさせるに仕掛けになっているのです。

3、Instagram
Instagramでは『フォトジェニック』、いわゆるインスタ映えの手法で、人目を引く旅や観光の素晴らしい景色や、思わず食べたくなる美味しそうなグルメ写真を投稿、たくさんの利用者を魅了します。台湾では、特に「マイクロインフルエンサー」を起用したプロモーションが多く見受けられます。この場合は写真と共に店舗情報を記載、利用者が実際に実店舗まで足を運ぶという仕様です。Instagramでは、ブログよりコンパクトにまとめられ、「写真」という目を引きやすい視覚情報によって容易に閲覧でき、発信力についてもより即時性を高めたプロモーションを展開することが多いようです。

ファミリーマート台湾では、発売前の新商品をInstagramに投稿、実店舗への誘導プロモーションを展開しています。Instagramでは、視覚的な注目度が非常に高いので、新しいパッケージや可愛い包装、綺麗な写真を余すことなく使い訴求を高め、顧客の誘導の手立てにしています。最近では「仙女紅茶」という新製品をアップし、発売前の新商品で消費者の目を引き、さらに期間限定での販売によって、次の販促までの消費者の渇望をより高め、購買意欲と実店舗誘導を促す手法をとっています。

まとめ

このように台湾のSNSを徹底活用したプロモーションからは、企業側の一方通行発信ではなく、消費者の習慣や関心を活用したよりフレキシブルな双方向のプロモーションであるということが伺えます。SNSそれぞれの特徴を掴み、商品やサービスの告知、情報拡散、割引、クーポン発行、実店舗誘導を使い分けプロモーションを展開しています。さらに、サービスなどにおいてもマス(大多数)ではなくよりパーソナライズされた、消費者と密度の高い関係性を築いた上での提供になってきています。日本では台湾ほどSNSの使用率は高くないものの、店舗誘導のためのプロモーションやパーソナライズされたサービスは、販売戦略に一役買ってくれる要素になりそうです。

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