営業ツールやリクルートツールなど目的や役割は複数ありますが、「会社案内」に共通しているのは、“会社の魅力が存分に伝わり、目的に応じた効果が出るか”です。そして、その目的を達成するためには、経験はもちろん、知恵や技術が必要です。
今回は、会社案内の基本や、効果の出る会社案内制作のポイントについて、制作を担当する共同印刷株式会社 立石 健が解説します。
会社案内の目的
目的は一つではなく、会社によってさまざまです。例えば、次のような目的があります。
- ・営業
- ・求人・リクルート
- ・ブランディング
- ・IR
- ・ブランドの浸透
- ・社会的な信頼性の訴求
- ・歴史や実績のアピール
- ・社風(会社の雰囲気)のよさ(※働き方改革視点/就職・転職活動者向け視点)
など
具体的な事例を3つご紹介します。
●建設コンサル会社
「ビジネス用」「一般向け用」と2種ある会社案内を融合させ、自社のイメージを統一したい。
●大手設備会社のグループ会社
親会社は有名だが、自社の認知度は低い。就職・転職活動者に響くものにしたい。
●派遣・人材教育企業
ブランドイメージをしっかり伝えたい。また、グローバルな実績があることをアピールしたい。
一般的な会社案内のコンテンツと伝えるべきこと
会社案内で効果を出すには、会社案内のコンテンツをしっかりと定める必要があります。
あくまで“会社紹介”が目的のため、誌面に置くコンテンツは、ほとんど変わりません。しかし、前述のように会社案内の目的は会社によって異なるため、それに応じた情報を発信する必要があります。
以下は、会社案内の一般的なコンテンツです。それぞれのページで伝える内容と合わせてみていきましょう。
●「歴史・実績」
…会社の「歴史」を紹介し、ステークホルダーからの「信頼性」を高めることが目的です。
長い歴史があること、成長スピードが速いこと、現在に至るまでの沿革など、自社の魅力を伝える重要なコンテンツです。
●「トップの意思」「会社の理念」
…組織の普遍的な「価値観」や「存在意義」を明文化した経営理念を従業員・顧客・社会に対して明確に表明することで、社会的信用が得られます。また、価値観の共有により結束力の強い会社がつくれるほか、採用においても、就職・転職活動者が経営理念に「共感できるか」という判断をする際の参考にもなります。
●「何をしている会社か」「何が得意な会社か」
…具体的にどのような事業をしているかを説明し、「社会的役割」を伝えます
例:ソリューション、製品、技術、社会的活動(CSR的)
●「どんな社員がどのように仕事をしているか」を伝えるページ
…企業の「雰囲気・社風」を伝えるコンテンツです。社風とは、企業がその歴史のなかで培ってきた文化や価値観です。優秀な人材の確保も企業にとっては重要なポイントです。個人のモチベーションを保つ環境が整っているかや社員の休日の過ごし方などを紹介し、ワーク・ライフ・バランスを重視していることを伝えることで、他社との差別化にもなるでしょう。
会社案内ページづくりで重要なこと
これらのコンテンツを載せるページづくりには、共通して重要なことがあります。
それは、
「誰の視点を最も重要視するか」
「誰に何をどのように伝えたいか」
を明確にすることです。
その上で、次の4つを、一貫性を持って構築できるかがポイントになります。
- 1.コピーワーク:わかりやすいコピー
- 2.デザイン:ブランドイメージが立っており、親近感の湧くデザイン
- 3.製本:思わず手に取ってしまう、興味や目を引く製本加工
- 4.Webへのリンク性:会社案内から自社サイトへ誘導する
ターゲット別にリンク先を変え、会社案内自体を作り分けすることも可能です。
1.コピーワーク、2.デザイン、3.製本は、受け取った人に与える印象を強くすることを目的に行います。
また、3.製本には以下のような例があります。
・タイトルや社名、ロゴなどを特殊印刷にする(例:立体感、ツヤ感、箔押し)
(ラメ加工) (UV印刷) (型抜き加工) (箔押し)
- ・定型サイズ内で、寸法を工夫する(例:正方形、横長、縦長)
- ・製本に折を加える。折り方を工夫する(例:表2・表3や中面)
- ・冊子の角を丸くする
- ・表2、表3にポケットを付ける(例:必要に応じてペラを差し込む)
思わず惹かれるデザイン・クリエイティブとは?
コンテンツが決まったら、次はデザイン・クリエイティブを作るフェーズです。
コンテンツづくりのポイントと重複する部分もありますが、デザイン・クリエイティブは、次のポイントを押さえて制作します。
- ・ターゲットを明確にする
- ・ターゲットイメージに沿うデザインとブランドイメージの適合を行う
- ・シンプルな構成を心がける
- ・ごちゃごちゃさせず、それぞれのページで伝えたいことを明確にする。
- ・直感的に伝わるデザインにする
- ・装丁、製本の個性を出す
■会社案内の制作の流れ
それぞれのポイントを押さえながら、次の流れで制作を行います。
1.ヒアリング~目的・ターゲットの確認
ヒアリングでは、「何を、誰に、どのように伝えたいか」、その効果として「どういうイメージを持ってもらいたいか」「どういうアクションを起こさせたいのか」を聞き出します。
制作業者に正しく情報を伝達するには、社内におけるイメージとコンセンサスをしっかり統一し、オリエンテーションで正確に伝えることが重要です。会社案内の制作には複数の部署や立場の人が関わるため、各所からさまざまな要望が入り、結果として散漫な構成になりがちです。それらをそのまま反映してしまうと、当初のイメージと異なるものになるリスクが高まります。
そのため当社では、社内の統一共有やイメージとデザイン案のブレ防止のため、常に客観的な意見を伝えると同時に、読者(ターゲット)目線を意識してもらうためのサポートを行っています。関係者が全員参加する会議ではファシリテーション役を担って意見統一を促すほか、制作の過程でオリエン内容とのブレが生じた場合は、原点に立ち返り、担当窓口と要望の整理・共有を行います。
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販促物の「イメージと違う!」を回避するためにデザインオリエンの前にやっておくべきこと
2.コンテンツの検討・決定
ヒアリングした内容をもとに、コンテンツを検討、決定します。
3.デザイン、クリエイティブの検討・決定
各コンテンツのデザイン、クリエイティブを検討・決定します。
4.実制作&確認振り返り
伝えたいイメージがきちんと表現されているか、作りたいものからブレていないか。すべての工程で、担当者が統一したコンセンサスを得て、作業していきます。
■まとめ
会社案内に掲載するコンテンツは、目的やターゲットごとに大きく異なります。
ページづくりやデザイン・クリエイティブのポイントを踏まえ、社内で統一されたイメージを持つことで、思わず手に取りたくなる魅力があり、目的を達成できる会社案内を作ることができるでしょう。