消費者の思考や嗜好が急速に変わりつづける昨今。それに合わせるように、オンラインと店舗の位置づけにも変化が見え始めています。オンラインで商品リサーチをした後、実際の店舗で試着して購入するというのが通常のパターンでした。
しかし、アメリカの高級百貨店「Nordstrom」とメンズファッションブランドの「Bonobos」はその常識をさらに顧客目線で進化させ覆したのです。彼らのオンラインと店舗のシームレスな誘導事例を参考にしながら、未来型店舗の形について考えていきましょう。

オンラインの顧客データを駆使し、店舗でのサービスに最大限活用する「Nordstrom」

アメリカの高級百貨店で知られる「Nordstrom」。ここでは顧客行動のデータを駆使し、来店したお客さまへの徹底的でキメ細やかなサービスがなされていました。多くの人は来店する前にウェブサイトなどで商品をチェックしますが、Nordstromではウェブサイトに訪れた人のサイト上における動向を追跡し、どのタイミングでどの商品を、そしてどこのチャンネルでプロモーションをかけるかという分析をしています。
また“Pinterest”を使い、ユーザーがピンをした商品は流行商品として、店舗で宣伝しているのも特徴でしょう。

また、オプトインアプリ(利用者に個人情報などの利用について承諾を得たアプリ)を使い、ユニークなパーソナリゼーションサービスを取り入れています。

お客さまご自身がオプトインした同社のアプリを使い店舗に足を踏み入れると、瞬時にアプリからお客さまのプロフィールや購入履歴が店舗に配信されます。その情報を店員が見て接客することにより、お客さまそれぞれの好みに合わせた買い物体験を実現することができるのです。

これがショップ? ネイルや仕立てサービスまであるのに、“在庫を持たない”コンセプトストア

新しい試みに対し、臆することなくチャレンジする同社では「マイクロコンセプトストア」として「Nordstrom Local」という、在庫を一切置かない小型店舗を2017年秋、カリフォルニア州のロサンゼルズにオープンしました。

ショールーム型の店内にはスタイリストが常駐、コーディネートの提案サービスはもちろん、オンラインで購入した商品をピックアップしたり、返品することも可能です。

さらに、それだけではありません。パンツやジャケットの仕立て、ネイルサービスやジュースやコーヒー、ビールやワインなどの“Barサービス”まであるという、ショップというより、もはやラウンジのような空間になっているのです。

サンディエゴ州立大学で「マーケティング・ブランドマネジメント」を教えるLisa Haddock教授は、これはまさに「retail-tainment(リテール – テイメント→“リテール”と“エンターテイメント”をかけた造語で、ショッピング自体が娯楽になる体験を提供すること)だ」とLA Times紙でコメントしています。楽しくて、独創的でなおかつパーソナルな体験ができるこの空間。ワインを飲みながら、ネイルサービスでリラックスし、スタイリストがコーディネートを提案してくれる。このようなサービスを前面に提供することで商品を買うという行為を超え、消費者の心へさらに深く残るような店舗になっているのではないでしょうか。

“Ninja”がお出迎えする商品の買えないお店。急成長する「Bonobos」の戦略とは?

実は、このような在庫を持たない店舗の事例はNordstromが最初ではなく、アメリカで既に“E-commerce”ブランドが先駆けて行っていました。それが、2007年にニューヨークで創業したメンズウェアブランドの「Bonobos」。

「自分に合うチノパンをつくりたい」という想いで始めたこのECブランドは、ミレニアル世代男性のハートを上手く掴み、瞬く間に急成長しました。チノパンの成功を受け、カスタマイズシャツのパイロットを手がけていた2015年、お客さまがカスタムシャツを作るとその場でオンライン注文していた、というその行動に目をつけ「ガイドショップ」と名づけて実店舗をオープンしたのです。

商品の購入もできず、在庫もない「ショールーム型」のガイドショップ。まず、ウェブサイト上で“1時間のアポイントメント”をとり店頭へ向かうと、「Ninja」と呼ばれるコンサルタントが“キンキンに冷えたビール”でお客様をお出迎え。店内には数人しかいないゆったりとした空間の中で、自分の体へ完璧にフィットした洋服を選んでもらえます。

選んだ服はウェブ上でオーダーをすると、1~2日後には自宅へ届けられ、買い物後に商品を持ち歩く煩わしさも解消されるのです。また、ガイドショップで計測したサイズはその場でそれぞれのアカウントに保存、後でオンラインで購入する場合にも、サイズを測らず購入できるので便利です。

「Nordstrom」と「Bonobos」の両者に共通するのは、お客様の時間を最大限に活かし“パーソナルなサービス”を提供しているということ。従来のオンラインやリアル店舗のポジションという概念を破り、その両方をお客様とサービスがシームレスに行き来できるようにしたことで、他のブランドとは一線を画したポジションへつくことができたのでしょう。日本でもこのようなサービスが当たり前になり、お客様の時間を有意義に活かす日がくるかもしれません。

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