IT技術の発展に伴い、マーケティングを取り巻く世界は劇的に変化しました。
「データありき」でマーケティングを考えるのはもはや当然のこととなり、マーケティングにおけるデータ分析の重要性はますます高まってきています。
そんななか、昨今改めて注目を浴びているのが「データマイニング」というキーワードです。

そもそもデータマイニングとは

データマイニングとは、大量のデータを人口知能や統計学などの技術を用いて解析し、そこに潜むパターンやルールなどを見つけ出す技術です。
データマイニング自体は決して目新しいキーワードではありませんが、ビッグデータ処理やAIなどの技術の進化を受け、ここ数年改めて注目を浴びつつあります。スマホの普及やIoTの普及によって、得られるデータの量や質にも大きな変化が起きていることも、背景のひとつにあるといえそうです。

データマイニングについて語られる際にしばしば取り上げられるエピソードの1つに、「おむつとビール」の話があります。

●おむつとビールのエピソード●

米国の大手スーパーマーケット・チェーンで販売データを分析したら、おむつとビールを一緒に買う顧客がいるという傾向が明らかになりました。「一見、何の関係もなさそうなおむつとビールが、なぜ一緒に買われているのだろう?」ということで調査をしたところ、母親に頼まれておむつを買いに来る男性が、ついでに自分の缶ビールも購入しているらしい、ということが判明。そこで、おむつの隣に缶ビールを並べて陳列したところ、缶ビールの売り上げが増加しました。

データマイニングの手法を用いてデータをさまざまな視点から眺め、深掘りすることによって、この例のように、表面には現れないつながりや法則などを発見できる可能性があります。

データマイニングと顧客関係性管理

通販会社やクレジットカード会社など、膨大な数の会員を持つ企業の多くがデータマイニングにより成果を挙げています。

たとえば通販会社では、性別、年齢などの顧客の属性と購入履歴を分析することで、「誰に対して、どの商品を、どのようにアプローチすれば売れるのか」といった傾向を割り出し、これを販売計画の策定に活用してきました。最近はスマホのような携帯端末の普及によって、「思いついた瞬間に物を買う」ことが可能となってきていますので、分析の軸に「いつ」という要素が加わりました。O2Oへの取り組みが進み、複数のチャネルをまたいでの分析に注力する企業も増えてきています。

また、クレジットカード会社では、顧客の属性情報とカードの利用履歴をもとに分析を行い、その結果をDMへの反応率向上などに役立てています。クレジットカード会社には年齢や性別といった一般的な属性情報に加えて、勤務先、家族構成、複数の店舗での購入履歴といった豊富なデータがあり、多様な観点から分析を行うことができます。
データ分析時のアプローチにはいくつかの手法がありますが、たとえば、キャッシングの利用促進を目的としたDMを送付する場合、事前に「キャッシングを利用しそうな会員」の予測モデルを作成したうえで、マイニングによってモデルに近い会員を抽出します。そのうえで抽出した会員に実際にDMを送ってレスポンス率を検証し、結果に基づいて予測モデルを調整する…という具合にPDCAをまわしていきます。

顧客と「繋がる」ためのデータマイニング

一般にデータマイニングにおいては、分析に用いるデータの量と種類が豊富なほど、得られる知見の幅や精度を上げていくことができると考えられています。このため、昨今では社内に蓄積された顧客情報だけでなく、外部から得られる情報を合わせて分析することで、顧客に対するより深い洞察を得ようとする試みに注目が集まっています。

米国内に900を超えるケアセンターを持つノースカロライナのCarolinas HealthCare System(以下、CHS)の行っている試みも、データマイニングに積極的な事例のひとつです。CHSでは顧客に関するさまざまなデータを業者から購入し、自社の持つデータと紐づけて分析することで、顧客の健康に関するリスクを事前に察知しようとしています。
将来的には、肥満治療中の顧客がスイーツ・バーでケーキを食べた直後に、CHSの担当医師からお叱りのメールが届くようなことが実現するかもしれません。

個人情報の売買が禁じられていない米国ならではの事例ではありますが、日本においても、DMP(Data Management Platform)のようなソリューションを組み合わせて活用することで、同じような効果を狙えるようになっていくでしょう。

データを活用し顧客一人ひとりと長期的な関係性を築く

また、最近のデータマイニングのトレンドとしては、SNSを活用したソーシャルリスニングという手法も盛り上がりを見せています。SNS上のデータをあわせて分析することで、顧客アンケートや従来の市場調査では得られない、「生の声」に基づくインサイトを得ることができると期待されています。

顧客関係性管理において何よりも重要なのは、一人ひとりの顧客に対する深い理解に基づいて、長期にわたってよい関係を築いていくということ。
個人情報を収集されることに拒否感を覚える顧客はまだまだ多く、データマイニングの実践には慎重な配慮が必要ですが、「データに基づいて顧客を理解する」という考え方は、今後、次第に一般的なものとなっていくはずです。

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