総務省が「ビッグデータ・ポータル」の試行的運用を2023年1月31日(火)から開始しました。人流データやPOSデータ、決済情報などのビッグデータやその利活用方法などが一元的に集められています。今後、ビッグデータの利活用そのものと、取り扱えるデータの存在、手法がますます日本で認知、実践されていくと考えられます。そこで今回は、ビッグデータのマーケティング利活用の重要性と活用事例をご紹介します。
■これからのマーケティングにビッグデータはなぜ重要か
総務省の「ビッグデータ・ポータル」の試験的な運用が始まったことからも、今後、日本国内でビッグデータ利活用、およびビッグデータマーケティングがますます活発になる見込みがあります。
なぜビッグデータを用いることが重要なのでしょうか。そもそもビッグデータとは何か、というところから解説します。
●ビッグデータとは
ビッグデータは、大きく「構造化データ」と「非構造化データ」に分かれ、特に近年は、非構造化データが膨大に増えていることから、非構造化データも含めた利活用推進が期待されています。
・構造化データ
構造化されたデータのこと。
例:業務データ、企業データベース、POSデータ、顧客データなど
・非構造化データ
構造化されていない多種・多量なデータのこと。
例:音声データ、ブログ・SNSデータ、映像・動画データ、電子書籍データ、GPSデータ、センサデータなど
●ビッグデータ活用の重要性
特に近年は、IoTやクラウド、SNSなどのデジタルデータがネットワーク上で増えてきたことから、革新的なサービスやビジネスモデルの創出、的確な経営判断、業務の効率化などに利活用することによって、ビッグデータによる付加価値創造を実現することが求められています。
総務省の研究結果によると、経済成長を実現するためには、源泉として「生産性向上」「労働力増加」「資産蓄積」が必要であり、この3つを生み出すためにはビッグデータの流通・蓄積量の増加、ビッグデータ解析技術の発展が重要であると述べています。
特に企業のマーケティング活動においては、ビッグデータを解析することによって、顧客の行動・インサイトなどの精密な把握ができ、施策の成果改善につながるほか、施策スピードの向上にも寄与します。
■マーケティングに活用できるビッグデータの種類
マーケティング分野におけるデータ活用というと、従来はPOSデータや購買データ、Webアクセスデータなどがイメージされましたが、現在は、さらに使えるデータの種類が増えています。ここで、現在、マーケティングに活用できるビッグデータの種類をご紹介します。
●総務省「ビッグデータ・ポータル」で取り扱うデータ
ビッグデータ・ポータルで取り扱っているデータは、下記のものがあります。
・人流データ
・交通データ
・キャッシュレスデータ
・購買データ
・企業データ
など
このうち、人流データは、近年特に注目を集めています。人流データは、人が「いつ・どこに・何人」滞留しているのか、または移動しているのかを把握できるデータです。まちや施設に設置のカメラやセンサーの性能が向上したことや、携帯電話の基地局情報やGPS情報が取得できるようになったことから、人流データの取得が進んでいます。
人流データは、まちづくりや観光、交通、防災といったさまざまな分野で活用できるほか、マーケティングにも活用できます。マーケティングでは、ユーザー像の興味・関心に合わせた店舗情報の発信や販促施策の実施、ユーザーの趣向・行動パターンに基づいた広告配信などの活用例があります。
●その他のデータ
・人工衛星データ
・学生の学習データ
など
その他、上記のデータも活用できるようになってきました。人工衛星データは近年、新しいマーケティング活用の可能性が見出されており、例えば、人口衛生から得た農作物の生育状況や収穫時期のデータを元に、農作物の供給量や価格の需給予測を行うことで、販促・マーケティングに生かすといったことが行われています。
今後も、さらに活用できるビッグデータの種類が増えていくでしょう。
■ビッグデータのマーケティング活用事例
ビッグデータは、さまざまな組織や企業で活用されています。ここでは人流データと販売データを活用した事例をご紹介します。
1.人流データの活用事例
画像出典:ビッグデータ・ポータル「第6回東京都市圏パーソントリップ調査報告書におけるビッグデータの活用事例」
国は、一般統計調査としてパーソントリップ調査という都市における人の移動に着目した調査を行っています。東京都市圏交通計画協議会は、その補完的な調査として、パーソントリップ調査では把握していない「休日」と「外国人」の活動状況を「携帯電話基地局データ」「Wi-Fi接続ログ」「GPSログ」から集計・活用して把握する取り組みを実施しました。
分析の結果、携帯基地局によるビッグデータより、休日のほうが平日よりも鉄道沿線外まで多く移動が広がっていることがわかり、平日と休日では人が集中する場所が異なることを定量的に把握できました。
また、外国人の滞在場所は、東京駅から新橋駅周辺、上野駅から秋葉原駅周辺、浅草・スカイツリー周辺、お台場など、都心の主要駅や観光地に集中していることを把握できました。
2.販売データの活用事例
岡山県を中心にスーパーマーケットを展開するマルイは、「店舗の売り上げデータ」や「在庫情報」「カード会員情報」「電子マネーの利用率」など、さまざまなデータを一元管理できるプラットフォームを構築し、データ活用を成功させています。
かつては経験則を元に発注量を設定していたことで、商品の売り切れが生じ、販売機会の損失が発生するという課題がありました。そこでデータの抽出や分析などをするためのBIツールを用いることで、データプラットフォームを構築し、店舗の販売データから商品ごとの売れ行きをリアルタイムに把握したり、競合対策のマーケティング施策をデータに基づき素早く実施したりすることを始めました。また、各店舗において、データに基づく施策を早期に打てる体制作りも実施しました。
結果、販売機会の損失は減少し、店舗によっては精肉の売り上げが2割近く増加し、粗利率は4店舗平均で7~8%向上させることができました。
■共同印刷のビッグデータのマーケティング活用実績のご紹介
データ活用の際には、どのようなデータを使って、どうかけあわせて施策が実施できるかを検討する機会は多いのではないでしょうか。その参考になるよう、共同印刷のビッグデータの活用サービスを2つご紹介します。
1.クレジットカード利用明細の活用サービス
クレジットカード利用明細は、カードを利用した際の「利用日」「店名」「決済金額」「支払区分(支払い回数など)」などを含むデータで、全国で大量に決済される、まさにビッグデータと呼ぶにふさわしいデータです。
ですが、多くのクレジットカード会社では、利用明細上の店名はわかっても、その店がどこにあって、何のお店かはわからないため*1、利用明細をマーケティングに活用することは非常に限定的になってしまいます。(決済金額、利用回数程度のマーケティングしか行えない)
*1店舗とのアクワイアリング契約を行っていない場合
当社では、マーケティングに活用いただくために上記のようなクレジットカード利用明細に対し、店舗の業種、住所・位置情報(緯度・経度)を付加する「データエンハンスメント」サービスをご提供しています。
「データエンハンスメント」を行うことで、利用業種、利用地域の把握ができるためユーザーのプロファイリングが可能となります。例えばクレジットカードを特定の「普段使い」の店舗だけで利用していた顧客に対して、ほかの「普段使い」の店舗での利用を促す施策を実施することができます。
2.人流データの活用サービス
スマートフォンと位置情報サービス・アプリの普及により、GPSから取得される大量な位置情報の集まり=人流データも、現代に代表されるビッグデータとなりつつあります。
人流データも単なる緯度・経度のデータの集まりでしかないため、このデータだけではマーケティングに活用することは困難です。
当社の「人流データエンハンスメントサービス」により、人流データに店舗(業種)情報や滞在・移動中といった行動の状態が付与できるため、マーケティングへの活用の可能性が広がります。
「人流データエンハンスメントサービス」により分類されるセグメントごとの活動エリアや嗜好に合わせ、サービスを訴求することで、必要な人にピンポイントで広告を届けることができ、広告価値を高められる可能性があります。
また小売店舗においては、競合店舗への来店状況(曜日ごとの来客者数、買い回りユーザー数)などの把握に役立てられる可能性があります。
まとめ
ビッグデータのマーケティングへの活用は、今後、さらに加速していくと考えられます。活用できるデータの種類も増えており、これからはいかに組み合わせながら活用し、それを分析、可視化できるかが重要になってくるでしょう。
マーケティングに最適なデータエンハンスメントやプロファイリングをご要望の際には、共同印刷の「データエンハンスメント」サービスがご支援いたします。今回ご紹介したサービスを含め、詳細についてはダウンロード資料をご覧ください。
関連資料
-
共同印刷のデータエンハンスメントサービス
資料をダウンロード