業績向上に向け、自社アプリを開発する企業も増えてきました。しかし、開発したアプリが実際に顧客に受け入れられ、コンバージョン(成果)につなげられている企業はどのくらいあるでしょうか? 今回ご紹介するアメリカのドラッグストアチェーン大手Walgreenは、ユーザーのニーズに応えるアプリを作り上げることで成功を収めている好例です。どういったポイントに重点を置くことで、顧客にとっても企業にとってもプラスとなるアプリを作り上げたのか、参考にしてみましょう。
処方薬のオーダーを手軽に
Walgreenには、医師からの処方箋をもとに処方薬を調合する薬局のほかに、食品や化粧品、日用用などのさまざまな売り場があります。もちろん、処方箋以外のものの買い物を目当てに店舗を訪れる顧客もいるでしょうが、やはりドラッグストアにとって重要なのは処方薬を自社でオーダーしてもらうこと。そのついでに買い物もしてもらえれば、一石二鳥というわけです。
消費者に自社の薬局で処方薬をオーダーしてもらうために必要なのは、注文を簡単に行えるようにすること。その課題をクリアするために、Walgreenはアプリに「Refill by Scan(スキャンで補充)」という機能を付けました。処方薬の補充が必要になった際にユーザーがしなければならないのは、薬の容器に付いたバーコードをスマホのカメラ機能を使ってスキャンすることだけ。アプリで採取された情報に基づいて処方された薬は、ユーザーが選んだWalgreenの各支店の薬局で数時間後に受け取ることができます。
外出先や旅行先で処方薬の補充が必要になった場合でも、最寄りのWalgreenの店で薬を受け取れるため、非常に便利です。このほか、定期的に再処方が必要な薬に対するオーダーのリマインダー(処方薬がなくなる時期に、「もうすぐ再オーダーの時期ですよ」と連絡が入る)や、オーダーを入れた処方薬の準備ができたといった連絡が、ユーザー宛に通知されるようにもなっています。
写真プリントがスマホから直接できる
Walgreenのもう1つの人気サービスとして、写真のプリントがあります。店舗の中に写真現像コーナーがあり、消費者は店頭の端末から直にプリントをしたり、オンラインで注文しておいて店舗でピックアップしたりすることができます。この人気サービスをさらに便利で使いやすくするために、アプリに追加されたのが写真プリント機能です。
アプリを使うことで、ユーザーはスマホ内に保存されている写真を簡単にプリントできるようになりました。また写真のプリントだけでなく、フォトカードやコラージュの作成、ポスターやキャンバスプリントといった、さまざまなアイテムの発注も可能となっています。これにより2010年には1%未満だったモバイル経由のプリントオーダーも、2014年には40%にまで伸びたそうです。
商品の位置までわかるロケーション機能でさらに便利
Walgreenのアプリには、店内のどの位置に商品が並んでいるかを検索し、マップ上で確認できる機能も搭載されています。
ユーザーが選択した店舗の情報ページに「フロアマップ」「プロダクト・ロケーター」といった項目があり、探している商品を入力すると、店内のどの棚にその商品があるのかを提示してくれます。膨大な種類の商品が並ぶ店内で必要なものを探し歩くのは意外と手間がかかるため、欲しい商品の位置をピンポイントで確認できるのは、時間のないユーザーにとってはうれしいことです。
使ってもらってこそ、アプリは価値がある!
企業にとってアプリ開発のゴールは、ユーザーにダウンロードしてもらうことではありません。大切なのはそのアプリを、いかに活用してもらい、企業のプロモーションの成功や売り上げにつなげていけるかです。Walgreenのアプリから学べるのは、「消費者のニーズを考えたうえで」ロケーション機能やカメラ、支払いや情報検索といった、アプリならではのメリットを活かし、実店舗でのサービス向上へとスムーズにつなげることの重要性です。アプリの真価を発揮させるには、ユーザーから「使う価値がある」と思われる機能を搭載する必要があるということを、念頭に置きましょう。