エリア広告における最もスタンダードな手法と考えられていた折り込みチラシやポスティングチラシは、コロナ禍により人の動線が変わったことで、効果が低下しているようです。一方、その代替メディアとして、スマートフォンを利用した位置情報広告が注目を集めています。
今回は、位置情報広告サービス「Smart e-Geo」を担当する共同印刷マーケティングソリューションズ株式会社の橋本良一に、サービス概要やメリット、活用方法について話を聞きました。
ファシリテーター:HintClip編集長 杉山毅
■チラシに代わる新メディア「位置情報広告」
杉山:今回お話を伺う「Smart e-Geo」は、当グループとしては珍しい広告媒体の商品ですね。どんな商品なのでしょうか。
橋本:オンライン広告の一種である「位置情報広告」です。ユーザーから取得したGPSの位置情報を使って、スマホの交通アプリや天気アプリ、SNSアプリなどに、バナー広告やインフィード広告を配信します。
杉山:どんなメリットがあるのでしょうか。
橋本:折り込みチラシやポスティングチラシと比べると、通勤者や通学者など、居住者以外のターゲットにもリーチしやすいですね。比較的低コストで出稿できるのも魅力です。折り込みチラシの約半分のコストで、2倍のターゲットにリーチできるという試算もあります。
杉山:広告手法をチラシから位置情報広告に変える企業は多いのでしょうか。
橋本:そうですね。チラシというメディアはさまざまな問題が生じ始めているようなので…。
杉山:どんな問題ですか?
橋本:新聞折り込みチラシの場合は、新聞の購読者数減少と読者層の高齢化ですね。ある程度のコストが必要なので、継続的に実施しにくいという問題もあります。
また、チラシのような紙の媒体ではオンラインへの誘導が難しいですし、見られたのかどうか全く判断がつかないというのも大きな問題です。
杉山:位置情報広告は、こうした課題を一挙に解決できる可能性があるということですね。
■地域密着型店舗のための「Smart e-Geo」
杉山:「Smart e-Geo」も位置情報広告の一種ということですが、どんなサービスなのですか。
橋本:インターネット広告事業を展開するジオロジック社と当社が業務提携し、位置情報広告の申し込みから配信までワンストップサービスとして提供しています。
通常の位置情報広告と違い、「各拠点で異なるメッセージを送信したい」というニーズにも対応できるサービスです。全国チェーンやフランチャイズの企業にご利用いただくことが多いですね。
杉山:各拠点で位置情報広告を展開するのですか。
橋本:そうですね。とてもわかりやすいのが、ヤマハ音楽振興会さまの運用方法です。
当社は本部と契約していますが、広告の内容は全国約2,400カ所にある音楽教室が、それぞれ独自にバナー広告の文面などを考えて出稿しています。「○○バス停から徒歩○分」など、ローカル性が強くてとてもユニークですよ。
杉山:なるほど。各教室が地域特性などを考慮した、地域に対する訴求力のより強い広告を出稿できるということですね。
導入以前は、ヤマハ音楽振興会さまはどのような集客をされていたのですか。
橋本:マス広告やリスティング広告で知名度を高め、本部のサイトへ誘導し、そこから自宅や職場の最寄りの教室を探してもらう方法が中心でした。
しかし、コロナ禍により勤務場所がサテライトオフィスや自宅に変わり、それまで通っていた教室から足が遠のく人が増えるという課題が顕在化しました。
そこで、当社から位置情報広告を使った新しい手法をご提案しました。具体的には、まず位置情報広告でターゲットの生活圏内に「音楽教室がある」ということを認知していただき、そこで興味喚起してから、直接個々の教室への問い合わせや申し込みのアクションにつなげるという手法です。
杉山:これまではヤマハという「ブランド」で興味喚起していたのを、「通いやすい場所に音楽教室がある」という事実を起点にして、認知と興味喚起を行うようにしたということですね。
しかし、各教室がバラバラに広告原稿を入稿することになりますね。当社としては管理が大変では?
橋本:当社には、細かな原稿を整理し的確に入稿するノウハウがありますから!
杉山:確かに、アナログの時代からチラシやDMで、ターゲットやエリアによって原稿を正確に差し替えるノウハウは培われていますからね。
■共同印刷グループ独自の料金設定と機能で「個別・安価・簡単」を実現
杉山:ジオロジック社は、ほかの広告代理店からの出稿も受け付けているかと思いますが、当社の「Smart e-Geo」の強みは何でしょうか。
橋本:お客さまには「個別・安価・簡単」というキーワードで説明しています。一般的な位置情報広告で、ヤマハ音楽振興会さまのように各拠点で個別にメッセージを出す場合、システムで処理しようとすると出稿料金が最低でも月100万円以上かかります。
かといって手作業で差し替えるにはバナー広告配信用の画像原稿を店舗の数だけ作成する必要があり、膨大な手間とコストが必要です。そして、各拠点の原稿を取りまとめる本部の作業負荷が非常に大きくなります。
杉山:位置情報広告のよさを生かした広告展開がしにくそうですね。
橋本:そうですね。そこで「Smart e-Geo」では、まず最低出稿料金を月1万円に設定し、予算のハードルを下げています。またバナー画像作成の手間とコストについては、各拠点が自分たちで原稿の内容を考えて入稿できるように、「申し込みフォーム」を独自に開発しました。このフォームに必要事項を入力し、ボタンをクリックするだけで、バナー画像を自動生成できます。
杉山:これなら、オンライン広告の出稿に慣れていない人でも入稿しやすいし、バナー画像を作成するコストも削減できますね。
橋本:広告内容は各拠点が主体的に作成できるので、本部の管理負担を大幅に減らせます。店舗数の少ないチェーン店や潤沢な予算を確保しにくい企業にも、気軽に使っていただきたいと思います。
■「継続」こそが、成功の秘訣
杉山:ヤマハ音楽振興会さま以外にユニークな活用事例はありますか。
橋本:全国チェーンの清掃代行業者さまが継続利用しています。
杉山:位置情報広告とは相性がよさそうですね。
橋本:エンドユーザーからの申し込みは、エアコンがフル稼働する8月と大掃除をする年末に集中するので、その期間だけ広告を出せばいいと考えがちですが、普段から認知度を高めておかないと、繁忙期に受注できなくなるそうです。
配信プランを利用するかどうかは各店舗が独自に判断しているのですが、利用しない店舗の売り上げは横ばいか減少傾向で、利用している店舗は2~3割アップするようです。
杉山:認知のための広告展開が大切なのですね。
橋本:特に“継続”することが重要です。営業活動をしていると、お客さまから「位置情報広告を利用したものの、思ったような効果を出せなかった」というお話を伺うことがあります。しかし、詳しく聞いてみると、刈り取り施策として短期間で何百万円もの費用をかけて実施してしまったケースが大半です。
杉山:「Smart e-Geo」をはじめとする位置情報広告は、刈り取りには適していないということでしょうか。
橋本:刈り取りだけに使おうとすると、思うような結果を出しにくいということです。認知を広げ、記憶していただくための媒体として、継続的に利用し、チラシなどほかの刈り取り施策と組み合わせるのがベストだと考えています。組み合わせることで従来と同じ刈り取り施策を行ったとしても成果は向上すると思います。
■位置情報広告の可能性は、さらに広がる
杉山:ほかの業種ではいかがでしょうか。
橋本:学習塾や不動産会社も、活用をイメージしやすいと思います。学習塾では、拠点の周辺だけでなく、高校の周囲などターゲットが集まる場所に配信しています。不動産会社では、鉄道の沿線で展開することが増えています。
杉山:「○○線沿線の物件に強い」といった認知を形成するわけですね。
橋本:はい。また、メーカーも活用できるかもしれません。例えばある新商品を出すタイミングで、その商品を扱う小売店(百貨店やドラッグストアなど)の商圏内に「Smart e-Geo」で広告を出稿し、認知が形成されるまで継続する…といった使い方ができそうです。ほかにも、大型イベントの会場やその周辺でも活用できる可能性があります。
■新しい広告体験を提供できるサービスへ
杉山:お客さまからはどんな評価をいただいていますか。
橋本:一部の企業さまからは「手ごたえを感じる」という喜びの声を直接、頂戴しました。また導入企業数は着実に増えており、活用中の企業さまは次々と長期プランに契約を変更しています。やめてしまう企業さまは、今のところほとんどありません。
杉山:「Smart e-Geo」を継続することで効果を実感しているお客さまが多いということですね。
最後に、今後のビジョンを教えてください。
橋本:効果の高さをより多くのお客さまにアピールして、利用者数をさらに増やしたいと思います。
ただし課題もいくつかあります。例えば、今の申し込みフォームではバナー広告しか申し込めないので、インフィード広告も申し込めるようにしたいですね。
杉山:当社は広告媒体の取り扱いという新領域に進出でき、クライアント企業さまは広告費の抑制と効果の最大化を同時に実現できる。
一方で、各拠点が出稿する広告を通じて、地域の活性化にも貢献できる。「三方よし」的なサービスですね!
橋本:そうだと思います。また、当社が本社の広告担当部門だけでなく、各拠点ともつながりを持つことになるという点が、従来の広告媒体とまったく違います。
このようなサービス内容は、一般的な広告代理店では対応が難しいのかもしれません。
杉山:エンドユーザーだけでなく、クライアント企業さまにとっても新しい広告体験を提供できるのですね。今後のさらなる発展に期待しています!
共同印刷マーケティングソリューションズ株式会社
営業推進部 部長
橋本 良一
1991年日本写真印刷株式会社(現 Nissha株式会社)入社。医薬品・化粧品・食品・宝飾品などのSP営業を担当。2013年からマーケティング、商品開発、新事業立ち上げをマネジメント。M&Aにより2019年から共同印刷グループに合流。以来、営業推進部にて領域拡大・新規開拓に取り組む。経営コンサルタントとしても活動しており、10年超のキャリアがある。株式会社11KA代表取締役。中小企業診断士・行政書士。
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