どの業界でも課題として大きい「省人化」。業務効率化のためにも、売り上げを上げる必要もあり、各社がさまざまな施策を打っています。それは食品流通業界においても同様です。

しかし実際は、消費者ファーストといえどもメーカー、流通それぞれの思惑が相容れず、販促施策に迷うこともあるものです。何が消費者にとって“ささる”のかということは、個人的な感覚や想像ではむずかしく、データによるエビデンスが助けになります。

そこで今回は、データを利活用した“売れる売り場”作りのポイントを、流通の仕組みを熟知し俯瞰できる販促ポジションならではの視点から、解説します。食品流通業界はもちろんのこと、一般的な“売れる売り場”作りのヒントにもなる情報をご紹介します。

一番の課題は「省人化」

“働き方改革”により、食品流通業界も「業務効率化」は必須となっています。例えば、食品流通の最終購買段階である小売の店頭において、消費者に購買衝動を与える重要な役目を果たす、POPといわれる販売什器や販促ツール類については、設置する担当者を配慮し、より簡単に組み立てられることが求められます。また人不足のため、店舗を巡回して商品の展開方法を紹介するラウンダー需要も増えています。このように、少ない人員で業務効率を上げる「省人化」は急務といえます。

エンドユーザーである顧客の本音とインサイトを捉えた施策

こうした省人化や業務効率化などの課題を解決するためには、消費者である顧客の本音とインサイトをいかに正確にとらえるかがカギになってきます。なぜなら、漠然とした施策では、効率的かつ効果的に売り上げを上げていくのはむずかしいためです。

顧客の本音とインサイトのトレンドは「簡便」「時短」

昨今の顧客の本音とインサイトのトレンドワードは、「簡便」「時短」です。

食品小売店で特に売れているのは、主婦の悩み・課題を解決する商品です。共働きの世帯も増えていることもあり、「簡便」「時短」といった切り口の訴求がささります。

例えば、次のような例が挙げられます。

食器用洗剤:こすらなくてもつけ置きで油汚れがとれる簡便性を追求した商品。

カレールウ:
【外的要因】食中毒の流行時期には、しっかりと煮込むことで不安が少ないカレーやシチューなどの煮込み料理が売れる
【母親の心理】「短時間で簡単に子どもに野菜を食べさせられる料理が作りたい」といった商品がささる。

顧客の本音とインサイトを捉えた施策

こうした顧客の本音とインサイトを捉えた施策は、次のポイントで行うと効果が期待できます。

最後の一押しは消費者心理に合わせる

重要なのは、CMなどのマス広告とトンマナはそろえつつも、棚前での最後の一押しは、消費者心理に合わせることです。デザインやコピー、価格などを消費者心理に沿って構築することが大切です。

時代のトレンドに応じて商品の見せ方を変える

同じ商品の見せ方を「A面→B面」へ変え、消費者に気づきを与えることも重要です。例えば、カレールウのCMの場合、ある時は“簡単に野菜がしっかりとれる”を訴求し、夏の暑い時期などにはは“煮込み料理は食中毒対策にもぴったり!”と訴求します。また食器用洗剤は、普段は“つけるだけ!簡単!”と訴求していても、梅雨や夏場の衛生管理が気になる際には、“つけ置き30秒で除菌も完璧!”にするといったように、訴求を変えて商品を見せていきます。このように、時代のトレンドに応じて、商品の見せ方を変えることで、より効果的に訴求できます。

データの必要性と利活用方法

この消費者の本音やインサイトの根拠となるのがデータです。なぜ、データが重要になるのでしょうか。

「消費者」を考えた売り場作りが最重要

まず、メーカーと流通(小売)にはジレンマがあります。

メーカー:消費者とのコミュニケーションを作るのが上手

流通(小売):売り場作りが上手

このように、それぞれが得意分野を持っていますが、お互いがメーカー視点や流通視点と別々の視点で考えているため、相容れない状況に陥りがちです。

最も重要なのは、メーカーと流通の接点を探し、「消費者」のことを考えて売り場を作ることにあります。その3者を俯瞰して見ることができるのは、販促を企画し、アウトプットを制作をしているポジションです。販促の視点から、「流通戦略」をしっかり立てることが大切です。

“売り上げに直結する”店頭ソリューションサービス

店頭の事情まで熟知していることも重要

消費者のことを考えて売り場を作るためには、売り場のことをしっかり熟知していることも大切です。

例えば、鰤(ぶり)が旬の時期に、テレビCMでポン酢メーカーが“鰤しゃぶにはポン酢”と訴求していても、店頭では鰤とポン酢が離れて売られていることはよくあります。一般的な食品スーパーでは、鮮魚コーナーとポン酢を売る棚は遠く、一緒に売られていることは少ないのです。

つまり、プロモーション戦略を立てる際には、店頭の事情まで把握して行う必要があるということです。

売り場作りにデータ活用を!「売り場作りはサイエンス」

流通現場にそのようなプロモーション提案をする際は、やはりエビデンスとなるマーケティングデータが必要になります。

ポイントカードシステムを導入している食品スーパーなどで取得可能なID付きのPOSデータ「ID-POS」はもちろん、実際に商品を購入した消費者がどのように食しているか、リアルな食卓事情を流通現場の担当者に見せることで、それが強力な説得材料となり得ます。

例えば、そのリアルな食卓事情のデータを取得できる共同印刷のサービス「リア食」を活用すると、次の疑問も解決できるようになってきます。

「実際に鰤しゃぶって家で食べているの? どちらかというと外食メニューでは?」

「食卓でどのように調理されていることが多いの? プロモーションとは関係ない食べ方されていることが多いのでは?」

「この食材や商品を売りたいが、売れないのはなぜ?」

つまり、「リア食」のデータで実際の消費者の食卓をのぞくことにより、消費行動の深いところを把握し、効果的な販促を考えることができるのです。

このように、データ情報を利活用して流通に対応したプロモーションを行うことで、消費者に正しく必要な情報や商品を訴求することができます。

メーカー・流通双方のディスカッションを

また、データを見ながら、このデータからどういった消費者心理が読み取れるのかを、各メーカーの担当者が集まってディスカッションを行うことで、データ分析の新たな視点を得ることもできます。「リア食」では「リア食ワークショップ」と名付けたディスカッションを行っています。

メーカー側は、流通側に商品を良い棚に置いてもらう必要があるため、プロモーションは重要になります。流通が興味をひくプレゼンを行うためにも、メーカー・流通双方の事情を熟知したポジションの視点が重要になるのです。

データを生かした売り場作り提案の事例~ハロウィン

サイネージ×販促ツール事例(ハロウィン)

共同印刷は、6月に開催された「第1回店舗運営EXPO【夏】」に出展し、「リア食」データを活用した店舗販促の提案をご紹介しました。その内容の一部を、売り場作り提案の事例としてご紹介します。

今回は販促カレンダーに合わせて、メーカー各社が検討し始める「ハロウィン」をテーマに取り上げました。

最近のハロウィンの傾向として、数年、市場は伸びていない現状があります。「リア食」のデータを見ても、多くの家庭では“ワンポイント的に”ハロウィンのカボチャを使ったり、ゴーストの抜型を使ったりすることなどはしているものの、大々的にパーティなどイベントとして行っている家庭は少ないのがわかっています。

そこで、「大々的に店頭でハロウィンを推しても、あまり効果的ではないのでは?」という仮説を立て、今回は“イージーハロウィン”と題し、ハロウィンの雰囲気を楽しむことを訴求しました。

消費者目線

消費者目線では、子どもたちが楽しめるように、多少はハロウィンの雰囲気を取り込むものの、あくまでも“お母さんに負荷のかからない”レベルのご提案をしました。

流通目線

流通目線では、あくまでも全館でハロウィンのフェスタ感を出していくことをご提案しました。例えば、野菜コーナーではカボチャなどを使った、簡単で「これなら手間をかけずにできそうだ!」と思わせるハロウィンメニューをご紹介。加工食品コーナーではハロウィンカレーやドリアなどを展開することをご提案しました。流通には、全館で実施できる“モチベーションテーマ”を考え、提案をすることが大切です。

まとめ

確実に効率的に売り上げを上げていくためには、メーカーから小売り(流通)、消費者という一貫した商流を熟知していることが何よりも重要です。

その中で、必要なデータを活用し、店頭プロモーションやツールなどの企画に活かすことで、消費者、小売り(流通)、メーカーの3社がwin-win-winの関係になることができます。

共同印刷はこの3者の立場や課題を熟知し最適な売り場作りからプロモーション企画まで丸ごと提案可能です。また「リア食」などから取得できるデータをエビデンスとした付加価値提案も可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

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