バリアブル印刷という言葉を聞いたことがありますか?

バリアブル(variable)は「可変の・変化する」という意味の英単語で、バリアブル印刷の直訳は「可変印刷」ということになるでしょうか。この言葉だけでは、あまりピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、実はバリアブル印刷は昔ながらの方法に新しい技術を取り入れた、強力なマーケティングツールのひとつでもあるのです。

この記事では、そんな「バリアブル印刷」の概要や利用シーンなどをご紹介します。

バリアブル印刷とは

バリアブル印刷とは、ひとことでいえば、一枚ずつ異なる内容の印刷物を作成する印刷手法です。

本来、印刷というのは同じ内容の文書などを大量に作成するために用いられてきた技術ですが、そうした大量の印刷物のうちの一部分(あるいはすべて)を異なる内容で出力するのがバリアブル印刷です。最もわかりやすい例のひとつとして、年賀状作成ソフトの住所差し込み印刷が挙げられます。その他、バーコード、QRコード、シリアルナンバー、続き番号などの可変印刷も身近でよく見られるでしょう。

消費者行動が多様化し、マス・マーケティングが通用しなくなるにつれて、顧客を「個客」として個別のアプローチを行うダイレクト・マーケティングがマーケティングの主流となりました。そうした中で、一人ひとりの顧客に対してカスタマイズされたメッセージを送るために、バリアブル印刷が積極的に利用されるようになってきています。以前は限定された用途に留まっているとされたバリアブル印刷ですが、JAGAT(公益社団法人日本印刷技術協会)は2018年のpage2018カンファレンスに際し、「実用期に入った」と見なしています。

さまざまな形のバリアブル印刷

バリアブル印刷では、通常、データベースから抽出した情報を土台になる文書などに埋め込む形で印刷を行います。身近な例を挙げると、DMのメッセージに受取人の名前が挿入されていたり、顧客ごとに異なるクーポンコードが印刷されていたりするようなものは、バリアブル印刷の技術を用いて作られています。

また、Microsoft社のワードやアクセスといったソフトに搭載されている差し込み印刷機能も、バリアブル印刷の一種です。エクセルで管理している顧客の情報を、こうしたソフトに取り込むことができます。オリジナル文書の中に宛名や名前、連番などを差し込む程度であれば、こうしたツールを利用することで、手軽かつ安価にバリアブル印刷を実現することができるでしょう。

バリアブル印刷のタイプ

一般にバリアブル印刷と呼ばれるものには次のようなタイプがあります。

  1. 1. 可変印刷
    例:トランザクショナルプリント(または、トランザクション印刷)。

    銀行や保険会社が月ごとに発送する請求明細に広告を入れるなど、個人に合わせて内容を変える方法。

  2. 2. バージョニング印刷
    印刷するメインの内容は基本的に同じ。支店名を変えて印刷するなど、バージョンが違うものを作成する方法。
  3. 3. パーソナリゼーション印刷
    例:卒業証書。
    個人情報(住所・名前など)を入れて、パーソナライズする方法。

実際のプロモーションでバリアブル印刷を利用する際には、作成する印刷物の用途やマーケティング上のねらいに合わせて、これらのタイプを使い分けます。

バリアブル印刷の具体例

それでは、実際に行われているバリアブル印刷にはどのようなものがあるか、具体例のなかで確認してみましょう。

  1. 1. 申し込み手続き書面の郵送
    サービス移行へのハードルを低減するため、申し込み手続き書面に工夫を施すパターン。書面作成と封入封緘し局出しまでをPOD(プリントオンデマンド)で対応しています。ユーザーが入力した翌日にデータを抽出し、KPに連携。その翌日には局出しというスピーディーな処理を行っています。
  2. 2. 応募作品をシールに印刷
    コンクールに応募してくれたユーザーに対し、応募作品をシールにして参加賞としてプレゼントするパターン。PODで参加賞シールの製造を行っています。作品のほかに応募者の名前や作品評価にもバリアブル印刷の技術が使われる場合があります。
  3. 3. エントリーカードの作成
    イベントへの参加者が当日に持参するエントリーカードの作成・局出しをPODで行うパターンです。エントリーカードを郵送する際の宛名情報のほか、イベント当日に必要な参加IDをバリアブル印刷で印字。イベントの受付システム構築からデータの抽出・管理も同じ印刷会社にて対応。
  4. 4. 名刺サイズのクーポン券印刷
    クーポン券に個別のIDを印字するパターン。
  5. 5. 飲食店のクーポン券印刷
    利用可能店舗の情報をバリアブル印刷で印字するパターン。店舗によっては約750種の店舗情報を刷り分ける場合もあります。

このように、バリアブル印刷にはさまざまなパターンの利用方法があります。プロモーションやイベントの内容に合わせて適切な方法を選び、参加者やユーザーが便利に使用できる印刷物を作成しましょう。また、便利であるだけでなく、「おしゃれ」「素敵」と思える印刷物なら、相手の心により深く訴えることもできるでしょう。次に、そのような事例をご紹介します。

おしゃれなバリアブル印刷事例:バースデーDM

このご時世、一人ひとりにカスタマイズされた情報を受け取ることに慣れた顧客は、単に自分の名前が差し込まれているだけのDMには驚きを感じなくなりました。 Webの世界では、CRMシステムに蓄積された顧客の属性情報や行動履歴を分析し、一人ひとりの顧客のためにカスタマイズされたメールマガジンを送付するような手法が当たり前のように用いられるようになってきています。

ではどんなDMが顧客の心を動かすのでしょう。

今回は、バリアブル印刷を用いたDMのなかでもバースデーDMをご紹介します。

バースデーDMは、「お誕生日おめでとうございます」のメッセージと合わせて、クーポンをつけるなどすることで既存顧客の引上げや、休眠顧客の利用促進につなげる施策として多くの企業が実施しています。コストをかけてDMを作るのですから、顧客が手にして、即ゴミ箱へ捨ててしまうようなものではなく、顧客の心をぐっとつかみ「またお店に行ってみようかな」「これからも使おう」と思うきっかけとなるようなDMにしたいですね。印刷会社が提供する高度なバリアブル印刷サービスを用いると、名前や文章といったテキストデータの差し込みだけでなく、背景色、画像、コンテンツなどを設定によって切り替えて、オリジナル度の高い印刷物を作成することができます。

背景画像:オシャレな黒板の画像を用いてみます。この画像をベースとしてメッセージを作成します。
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まず、拓也(たくや)さんあてのDM
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続いて、吉田さんあてのDM
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いかがですか? メッセージの内容・フォントが顧客ごとに変換できるのはもちろん、背景の画像に合わせて文字に奥行きを持たせたり、エフェクトをかけてピントを調整しているように見せることも可能です。このような形で、ご自身のお名前が「デザイン」されたバースデーDMが届いたら感動しませんか?

近年、SNSを連携させたソーシャルCRMが注目を集めていますが、SNSを連動させたキャンペーンにおいて、顧客が投稿した写真やメッセージなどをうまくコンテンツとして取り込めば、よりインパクトのあるDMを作ることもできそうです。

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アナログとデジタルの融合から生まれる新たなアプローチ

バリアブル印刷という技術自体は、決して目新しいものではありません。けれど、データベースの普及、データ分析技術の向上、人工知能技術の発達による高度なリコメンデーションの実現などを受け、バリアブル印刷の活用シーンは今後、次第に拡大されていくことが想像できますね。
紙のDMはインターネットメールなどに比べて制作コストがかさみますが、その分、デジタルにはない多くのメリットを見込むことのできるツールです。最新のデータ活用技術と「紙」というある意味アナログな素材の組み合わせによって、斬新なマーケティング・アプローチが生み出されることを期待したいところです。

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2019年3月更新

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