多くの企業では、商品の在庫や社内資産などについて、定期的に棚卸しを行います。在庫リストの内容と実際の商品在庫とを照らし合わせ、在庫の情報をメンテナンスするのが棚卸しの目的のひとつです。

一方、「顧客」情報のメンテナンスについては、残念ながら放置されているケースが少なくありません。しかし、顧客情報も企業の重要な資産なのですから、商品在庫と同様に定期的なメンテナンスを行い、最新状態を保つことが重要だといえます。

この記事では、顧客リストをより有効に活用するうえで重要なポイントとなる、「顧客リストのメンテナンス」についてお話しします。

顧客情報は「生もの」である

顧客リストメンテナンスについて考えるにあたり、ぜひ念頭においていただきたいのは「顧客情報は生ものである」ということです。つまり、肉や野菜、果物などと同じで、そのまま放置しておくと次第に鮮度が落ちてしまいます。

実際、顧客リストに登録されている情報の何割かは、一定期間で役に立たなくなってしまうといわれています。

理由はいろいろありますが、分かりやすいのは転居によって住所が変わってしまうケースです。また、女性は結婚すれば住所だけでなく姓も変わる場合が多いですし、BtoBの顧客であれば、異動や昇進によって所属部署や役職が変わることもあるでしょう。

最近はGmailやYahoo!メールなどのフリーメールで顧客にコンタクトすることが増えましたが、メールアドレスは住所などに比べてさらに寿命が短いといえます。プロバイダの乗り換えで変わってしまうこともありますし、迷惑メール対策として、スマホや携帯のメールアドレスを頻繁に変える人も少なくありません。

住所やメールアドレスが変わってしまえば、紙のDMもインターネットメールも「不達」となってしまいます。
BtoB企業の場合、部署や役職が変更となっただけであれば不達にはならないかもしれませんが、例えば、昇進によって部長になった人にいつまでも過去の役職名でコンタクトし続けていては、あまり良い印象は与えられないでしょう。こうした状況を踏まえて考えれば、なぜ顧客リストメンテナンスが重要なのかは、おのずと明らかになるはずです。

顧客リストメンテナンスの進め方

では、顧客リストメンテナンスはどのように進めていけばよいのでしょうか?
顧客リストは日々の業務のなかでこまめにメンテナンスしていくのが望ましいのですが、リストの件数が何千、何万、あるいはそれ以上になると、日々のメンテナンスでリスト内のすべての顧客に対応するのは事実上困難になってきます。

このような場合は、定期的に顧客リストメンテナンスのための施策を展開します。
顧客リストメンテナンスの手法として一般的なのは、休眠顧客や離反顧客のセグメントに対してメンテナンス用のDM・メールなどを送付し、その結果をリストに反映するというやり方です。

例えば、RFM分析(※)などを行って一定期間取引のない顧客を抽出し、抽出した顧客にDMなどを送付します。そのうえで、DMが不達(持ち戻り)となった顧客にフラグを立てます。これを何度か繰り返し、何度アプローチしてもレスポンスのない顧客はリストから除外するのです。

メンテナンス用DMの作り方

この際にポイントとなるのが、メンテナンス用DMの作り方です。
メンテナンス用DMの最大の目的は、その顧客データの「生き死に」を確認することにあります。従って、受け取った相手がアクションを起こさずにはいられないような仕掛けをしておくことが重要です。

例えば、「セールのお知らせ」というような内容では、きちんと届いて開封されても「ふーん」で終わってそのまま捨てられてしまう恐れがあります。しかし、「アンケートをご返送いただくと、もれなく500円分のAmazonギフトを進呈します」のように書かれていれば、アクションを起こす確率はぐんと高まるのではないでしょうか。
このような「反応せずにはいられない」内容のDMを何度送ってもレスポンスのない顧客であれば、未練なくリストから除外することができます。

なお、顧客のコンタクト先が複数ある場合(例えば住所とEメールなど)、それぞれについて別々にメンテナンスを行い、「Eメールは到達するが紙のDMは届かない」といった細かい分析を行うのもよいやり方です。せっかく獲得した大切なお客様なのですから、可能な限りつながり続ける努力をするように心掛けましょう。

顧客リストメンテナンスも戦略的に!

以上、顧客リストメンテナンスの重要性と進め方についてお話しました。

今回ご紹介したのは、顧客情報の「生き死に確認」を中心とした一般的なメンテナンスの方法です。実際に顧客リストをメンテナンスする際は、自社のビジネスの形にあわせて戦略的かつ柔軟に実施するのがよいでしょう。

例えば、RFM分析といった方法を用いて顧客をセグメント分けしてアプローチしているなら、一定期間ごとに各セグメントの内訳を見直すべきです。また、顧客との密なつながりを特に重視するCRMを展開しているのであれば、顧客情報の「内容」の最新化に力を入れる必要があります。いずれの場合も、今回ご紹介した顧客リストメンテナンスの基本的な考え方・進め方を応用して実施することが可能です。

少なからぬコストをかけて獲得した顧客の情報をリストから除外するのは「もったいない」と思われるかもしれませんが、「届かない」相手にいつまでもコンタクトし続ける方が、実はもっと「もったいない」のです。

業務の効率化やコスト削減のためにも、顧客リストメンテナンスを計画的かつ戦略的に実施していきましょう。

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