昨今、企業の顧客戦略においてカスタマー・エクスペリエンスの重要性が叫ばれていますが、消費者と直接やりとりをするコールセンターは、カスタマー・エクスペリエンスの向上に貢献できる重要なセクションです。 コールセンターでの対応次第では企業のブランド・イメージが大いに向上することもあれば、一瞬にして評判が落ちるような事態に発展することも起こり得ます。

この記事では、コールセンターにおけるカスタマー・エクスペリエンス向上において重要なポイントを、3つの視点からお話します。

「待ち時間」の苦痛を緩和する

1つめのポイントは、待ち時間を可能な限り短縮するということ。
コールセンターでの顧客満足度評価指標として、電話をかけてからオペレーターにつながるまでの待ち時間(応答時間)がしばしば用いられます。待ち時間はいうまでもなく短いほうが好ましいといえますが、限られた人数のオペレーターで運営されるコールセンターにおいて、「つながりにくい状況」の発生を完全にゼロにするのは困難です。

この待ち時間をいかに短縮するかが、コールセンターにおける顧客満足度に大きく影響します。
特に、クレームは時間がたてばたつほどこじれていく傾向があり、可能な限り迅速に「つながる」体制をつくることが重要です。

待ち時間短縮のための施策はいろいろと考えられますが、「1コールごとの対応時間を短縮する」というのも有力な施策のひとつです。過去の対応履歴、顧客・商品に関する情報などをオペレーターがスムーズに引き出せる体制が構築されていれば、効率的な応対が可能となり、ひいては待ち時間の短縮につながります。

また、電話がオペレーターにつながるまでの時間を顧客に提示するようなアプローチも有効です。待ち時間自体が短縮されるわけではないものの、「あとどのくらいでつながるか」の目安を知ることで、顧客の「待たされる苦痛」を緩和することができるからです。

適切な情報を迅速に提供する

2つめのポイントは、顧客の求める情報を迅速に提供するということ。
せっかく待ち時間を短縮しても、そのあとの対応が不満足なものではすべては台無しです。かかってきたコールを複数のセクションでたらい回しにしたり、情報確認のために何度も電話を中断して顧客を待たせたりしていては、良いカスタマー・エクスペリエンスを提供することはできません。

前項のポイントで述べた内容の一部繰り返しとなりますが、すべてのオペレーターが顧客に対して必要な情報を迅速に提供できるよう、ナレッジや顧客情報にスムーズにアクセスできる基盤を構築することが重要です。

フランスの大手損害保険会社であるGroupama社では、コールセンターのサービス品質改善のため、顧客に向けた「事故連絡用スマホアプリ」の提供に踏み切りました。

このアプリを使うと、顧客が事故現場からGroupama社に事故発生の連絡を行えます。アプリの画面にはオペレーターにつながるまでの待ち時間が表示され、カウントが0になるとセンターからコールバックされる仕組みとなっています。 アプリからの連絡はコールセンターに送信されますが、その際、アプリのユーザーIDに紐付けられた顧客の契約情報や担当販売員の名前、コンタクトしている理由、事故現場の位置情報などがオペレーターの端末に即時に表示されます。オペレーターは電話がつながった時点で必要な情報をほぼ把握しているため、スムーズな応対が可能となります。

何よりも心のこもった対応を

3つめのポイントは、心のこもった対応を行うということ。
「ワン・トゥー・ワンマーケティング」という言葉が登場して久しいですが、Webやソーシャルメディアの普及によって企業と消費者の距離が限りなく近づきつつある現代において、この考え方はますます重要なものとなってきています。

Webサイト上でも「心のこもったおもてなし」を受けられるようになった昨今、人と人が直接やりとりをするコールセンターにおいては、それ以上に真心を込めた対応を心掛けなければ、顧客に強い感銘を与えることはできません。オペレーターと顧客が直接リアルタイムに会話を交わすコールセンターだからこそ、良いことも悪いこともダイレクトに顧客の心に響くのです。

顧客への親身な対応を実現するためには、オペレーターが顧客の情報を十分に把握していることが大切です。 顧客の属性や契約情報、過去の対応履歴などをスムーズに検索・把握できる体制を整えることで、顧客を顔の見える「個客」として捉えることが可能となります。

人とITの連携プレーでカスタマー・エクスペリエンスの向上を

以上、コールセンターにおけるカスタマー・エクスペリエンス向上において、重要なポイントを3つお伝えしました。

良質なカスタマー・エクスペリエンスの提供には、オペレーターのマナーや口調といった属人的なスキルも重要ですが、データベースシステムやアプリといったITの力を活用することで改善できる点も少なくありません。 人の力とITの力を連携させて「心に残る顧客体験」を演出していくことが、これからのコールセンター運営において強く求められるようになるのではないでしょうか。

参考サイト

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