顧客からのクレームは、現場の人間にとってはあまりうれしいとは思えないかもしれません。実際のところ、クレーム対応に日々悩む人も少なくないでしょう。しかし、つきつめると、企業にとってクレームほどありがたいものはありません。クレームは、商品やサービスに対する隠れた不満を明らかにして改善へのヒントを与えてくれるばかりか、顧客とのつながりをより密接にするきっかけともなるからです。

クレームは「氷山の一角」にすぎない

商品やサービスに対して不満を抱いている顧客のうち、実際にクレームを申し出てくるのは10%にも満たないといわれています。つまり、クレームが1件発生したということは、その背後に同じ不満を感じている顧客が9人は存在する可能性があるのです。

これは非常に怖いことに思えますが、一方で、10%の確率で寄せられたそのクレームは、企業側にとって大変貴重でありがたいものともいえます。

クレームが発生したということは、なんらかの形で顧客の期待を裏切ってしまったことにほかなりません。しかし、あえてクレームとして声をあげてもらえたからこそ、企業はそのことに気づくことができるのです。

「苦情」ではなく「フィードバック」と捉える

クレームは一般的に「おしかり」「怒り」の形で寄せられることが多いため、現場で顧客対応を担当する側にとっては、あまりうれしいものではありません。しかし、前述のとおりクレームは、顧客の隠れた不満や、提供する製品やサービスの不具合に気付くきっかけを与えてくれます。製品やサービスの品質改善のための重要なヒントともなり得る、貴重な「ご意見」でもあるのです。

「クレーム=苦情」と考えてやみくもに敬遠するのではなく、「クレーム=顧客からのフィードバック」と捉えて前向きな姿勢で対応しましょう。これが、クレームを「宝」に変えていくためのポイントといえるでしょう。

「クレーマー」はファン予備軍!?

企業の製品やサービスに対して苦情を申し立てる人のことを、一般に「クレーマー」と呼びます。なかには、金品の受領を目的として本来の苦情の域を超えたクレームを執拗(しつよう)に申し立てる悪質なケースもありますが、クレーマーすべてが悪質と考えるのは早計です。

顧客関係性構築という観点から考えると、実はクレーマーほど熱狂的なファンになる可能性を秘めているともいえます。クレームは受ける側にとって楽しいものではありませんが、それはいう側も同じです。わざわざ時間をさいてまで苦情を伝えてきてくれるのは、商品やサービスに対して一定以上の関心を抱いてくれているからこそ、と考えることもできるでしょう。届いたクレームを真摯に受け止め、顧客の期待を超えるような対応ができれば、「自社のファン」に変えることもできるのです。

クレーム対応の方法

では、実際にどのようなクレーム対応を行えば、顧客満足度を上げ、顧客と良い関係を築いていけるのでしょうか。ここでは、クレーム対応の方法を紹介します。

クレーム対応に必要な準備

クレームを処理する際には、対応を明確にしておくことが大切です。そうすることで、冷静にクレーム処理できるようになります。まずは、クレーマーの心理や特性について理解するようにしましょう。事前に準備しておくことで、どうしたらよいか予測しながら対応できるようになるため、より質の高い応対が可能になります。

マニュアルを作成する

クレーム対応に必須といえるのが、マニュアルです。マニュアルによって、対応者全員が一定水準の質を保つことが可能になり、迅速な対応につながります。

クレーム発生時にスタッフがあわてることのないよう、電話応対、メール返信、詫び状作成など、状況別に使える例文をマニュアルにまとめておくのです。会社規定の書き方・定型文があれば、それも記載しておきましょう。ただし、マニュアルの頼りすぎには注意が必要です。マニュアルをもとに臨機応変に対応することが、顧客満足度向上につながるでしょう。

社内全員に共有

マニュアルの資料は、本・冊子などの紙媒体やネット上で見られるように、データ化して保管することが大切です。必ず社内で共有し、社員やアルバイトスタッフがいつでも確認できる場所に保存するか、一人ひとりに配布するようにしましょう。

昨今では、製品・サービスに対して不満を抱いた顧客がSNS上にネガティブな情報を流してしまう、いわゆる「炎上」という現象が深刻な問題となっています。この「炎上」も前述のように前向きに受け止め、不満の解消と満足度の向上を念頭において対応することで、逆に多くの熱狂的なファンを獲得する機会に変えることが可能です。そのためには、「炎上」時のマニュアルも作成し、社内で共有しておくことが大切です。

特別な場合の対処方法や、日常的に寄せられるクレームへの対応を共有する際には、情報を一元管理するシステムを利用すると、効率性が上がるでしょう。具体的には以下のシステムの利用が考えられます。

  • ・CRM
    クレームを顧客とひも付け、いつ、どの顧客からどのようなクレームが寄せられ、それに対してどんな対応をしたのか、といった履歴情報を一元管理します。適切に活用していくことで、クレームの傾向を把握・分析して顧客満足度の向上に役立てることができます。
  • ・クラウド
    コールセンターや店舗に寄せられたクレームをクラウドで一元管理するシステムも登場しています。クレームが発生した際に各部署に対応の指示を送ったり、対応の進み具合を共有できたりする場合もあります。

研修(セミナー)を受講してスキルアップ

社内でクレーム対応の研修に参加したり、専門家による講習を受けたりすることで、実践を想定した対応力を身に付けることができます。特に、接客業や営業、コールセンターといった顧客と接する仕事の場合は、アルバイトのスタッフもクレーム対応を行う可能性があります。担当するスタッフすべてが、研修を受けてスキルを習得する必要があるでしょう。

具体的な方法のひとつとして、「ロールプレイング」が挙げられます。スタッフがクレーム対応を実際に演じてみて、その様子を第三者に見てもらうという方法です。第三者から指摘された点の修正を繰り返すことで、質の高いクレーム対応に近づけていくことができるでしょう。

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クレーム対応のコツ

クレーム対応に大切なことは、相手の立場になって考え、誠意を持って対応することです。誠意を持って対応するには、基本的なクレームへの対応手順を身に付けておく必要があります。しっかりとした対応をすることで、「また利用したい」という満足度につながるでしょう。

具体的には、以下の4つの基本的な手順を習得することが必要です。この手順は、電話の対応だけでなく店舗での接客やメール、文書、手紙での対応にも役立つでしょう。

  1. 1.相手の気持ちに寄り添い、お詫びする
  2. 2.事実確認を行う
  3. 3.解決策・代替案を提示する
  4. 4.再度のお詫びと感謝を述べる

クレームを顧客からの貴重なフィードバックと捉え、それを製品・サービスの品質向上に最大限に活用していく――市場競争が激化するなか、今後はそうした姿勢がますます重要となっていくはずです。必要に応じて適切なシステムの導入・運用なども検討し、顧客の満足度を高めるスピーディーなクレーム対応をめざしましょう。

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