小売り流通業界では、「消費者×メーカー×流通」の関係性が重要となります。百貨店、総合スーパー、ドラッグストアなど業態が変わっても、小売り流通は基本的に考え方は同じです。その上で、特に購買者が多く、多くのメーカーが買い場としているドラッグストアならではの販促のポイントがあります。今回は、ドラッグストアの抱える課題を踏まえた上で、小売り流通全般にも共通する解決策、販促・プロモーション施策について解説します。
■ドラッグストアの特徴
ドラッグストアを重視して販売するメーカーは非常に多く、OTC医薬品・化粧品・ヘアケア・歯磨き粉など多岐にわたる商品を取り扱うメーカーが存在します。食品スーパーの住居系・日用品系の売り場と比べると、ドラッグストアは品ぞろえも良いのが一般的で、購入客も多いです。
小売流通業界では、時代の流れとともに、「百貨店→GMS(ゼネラルマーチャンダイズストア/総合スーパー)→コンビニエンスストア(CV)→家電量販店や衣料品店→ドラッグストア」という順番で市場が拡大してきています。
よく、ファーマシーとドラッグストアが混同されることがありますが、似て非なるものです。ファーマシーとは、昔はよく見られた「街の薬屋さん」のこと。個人商店であり、薬局も行っていることがあります。一方、ドラッグストアは、品ぞろえ量と幅広い地域での店舗展開によるネットワークで売っている業態です。
■ドラッグストアが抱える現状の課題
続いて、ドラッグストアが抱える現状の課題を見ていきましょう。
1.成長の鈍化による「メガ化」
ダイヤモンド・ドラッグストアが発表した2019年の「ドラッグストア売上高ランキング」によれば、ドラッグストアは全部で27,000店ほどあり、売上高トップのツルハHDですら約7,824億円と、8,000億に届いていないというのが現状です。
このように成長が鈍りつつある中、ココカラファインがマツモトキヨシHDとの経営統合に向けての協議を進めるとの発表をしました。近い将来、ココカラファインとマツモトキヨシHDが合併することにより、売上高・店舗数共に、断トツでトップの規模となることが予想できます。
このように近年では、ドラッグストア業界の生き残る道として、「メガ化」が進んでいるのです。
2.薬剤師などの「人手不足」
またドラッグストアは、国の方針で売り上げのアップダウンが激しい業態です。なぜなら、もともとは薬屋であるためです。医薬品は第1~3類に分かれており、第1類は薬剤師しか売ることができません。そのため、人材確保が大変で「人手不足」が大きな課題となっています。
■ドラッグストアの課題解決策
では、どうすればドラッグストアは主に成長鈍化の課題を解決へと進めていけるのでしょうか。
1.統合などにより、体力をつけておく
先にご説明した通り、「メガ化」が良い例です。統合などを行い、体力をつけておくことが必要不可欠となっています。
2.ユーザー情報所有の強みを活かし、PBを強化し差別化する
ドラッグストアなどの小売流通は、ユーザー情報を確保しているという強みがあります。それに比べて、メーカー側はユーザー情報を持っていないため、常にドラッグストアの状況を把握していかないと、自社の商品が入っていかなくなってしまいます。
さらに最近ではドラッグストアのPB(プライベートブランド)が増えています。個人情報を持っているため、実はPB開発がしやすい環境にあるのです。最近ではドラッグストアのPBをメーカーがOEMとして作るというケースも増えています。
■メーカーの生き残り施策
では、メーカーのドラッグストア販売における生き残りについては、どんな対策が考えられるでしょうか。それにはドラッグストアの商流である「メーカー→卸→小売り」の流れを理解することが必要です。
メーカーは自社商品をドラッグストアで売りたいという場合、その商談は「メーカーのマーケティング担当者が、「卸の営業」と「ドラッグストア本部のバイヤー」にプロモーション、価格、売り場作りの交渉などのプレゼンをかけることになります。このとき、メーカー側は、「商品の能力」、「USP(Unique Selling Proposition)/独自の強み」がより重要視されます。
売り場でエンド(定番棚よりも通路に面していることから最も客の目に付きやすく、大量に商品を陳列できるスペース)をとるためにはしっかりしたプレゼンが重要になってきます。
■ドラッグストアとメーカー双方の「売る」ポイント
続いて、ドラッグストアとメーカーがお互いにどのようにかかわることで、より商品を「売る」ことができるのかという点について解説します。基本、流通全般の「売る」ポイントは共通ですが、ここではドラッグストアならではのポイントをご紹介します。
【課題】「ユーザー志向<メーカー志向」な商品開発になりがち
メーカーは商品開発に関してのノウハウを持っているため、「ユーザー志向<メーカー志向」な開発になりがちです。このことは、メーカーが流通全般からよく指摘される点です。
【解決のポイント】
●流通とメーカーが共に開発する
昨今、CVS(コンビニエンスストア)は、積極的にメーカーと一緒に商品を開発しています。例えば、“セブンで先行販売”というのが好例です。ある意味プロモーションに近く、PBとは異なる商品開発の方法です。この方法はドラッグストアでも同じように展開できるのではないでしょうか。
●メーカーは流通のバイヤーの心をいかにキャッチするかが重要
流通側のバイヤーは、良い商品を良い広告で売って売り上げを伸ばしたいという思いがありますが、広告である程度の売り上げが伸びても、いずれその伸長率は鈍化します。そのためバイヤーは常に新しい商品やトレンドなどのオンリーワンを求めており、メーカーはバイヤーの心をいかにキャッチして情報提供できるかが重要でしょう。
■ドラッグストアでプロモーションを展開する際のポイント
ドラッグストアでプロモーションを展開していく際の、具体的なポイントをご紹介します。
●お客様のアテンションをどう高めていくかを考える
クローズドキャンペーン(商品を購入してもらうことが前提となる、購入者限定キャンペーン)や、エンドにおいて、どうお客様のアテンションを高めていくかがポイントです。実施する際には、戦略に沿ったストーリーで、最終的に店頭プロモーションに落とし込む必要があります。さらに、流通も展開しやすく、納得できるものである必要もあります。流通が納得するエビデンスがあれば、双方が納得できるはずです。
●ターゲットが購入する最後のタッチポイントで情報発信の仕方を変える
例えば、化粧品は販売される場所がドラッグストアとバラエティショップとでは、顧客層が異なります。そのため、ターゲットが購入する最後のタッチポイントにおいて、情報発信の方法を変えることが大切です。例えば、「効果効能」なのか、「価格訴求」なのかといったことです。
分かりやすい例に、洗濯洗剤のプロモーションがあります。
ある洗濯洗剤は、イメージ戦略やUSPのために、CMでは「白くなります」を訴求していました。しかしドラッグストアの購買層に合わせて、店頭では「すすぎ1回でOK」を訴求したところ、他社製品に比べて売り上げを伸ばすことができたのです。洗濯洗剤の効能として、きれいになることは当たり前で、価格帯も競合とほとんど変わらない製品にとって、最後の一押しで競合製品との違いを明確にすることができたことが、消費者の購買行動につながりました。最後のタッチポイントでは購買層に合わせて、キーワードを探すことが大切です。それを画像で見せるのか、POPで見せるのか、パッケージで見せるのかなどやり方は様々です。
●トンマナの統一は必要
またトンマナはCMなどのマス広告のイメージで何となく統一してしまいがちですが、店頭での訴求は視認性を高める工夫をほどこすなど、慎重に考えるべきです。
●商品の信頼感、安心感、メリットが想像できるようなアプローチが重要
商品の信頼感、安心感、メリットが想像できるようなアプローチが重要です。つまり、この商品を買うと自分は“笑顔になれる”、“嬉しくなる”と思えるようなモチベーションをプロモーションで与えることが何より大切です。
まとめ
以上、ドラッグストアや、ドラッグストアで商品を販売するメーカーの課題と解決策、そしてドラッグストアにおけるプロモーションのポイントについて解説してきました。
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