商品やサービスを改善していくためには、「お客様のキモチ」を理解することが重要です。
このため、企業はしばしばモニターキャンペーンや顧客アンケートなどを実施してお客様の声を集めますが、実は、このようにして集めた「お客様の声」は、必ずしも顧客のホンネを表しているとは言い切れないのです。

この記事では「お客様の声」と「顧客のホンネ」の違いを理解し、「お客様が真に望むこと」を発見するための方法について考えてみたいと思います。

「お客様の声」と「顧客のホンネ」は似て非なるもの

顧客理解のために取る施策の王道は、なんといっても顧客アンケートでしょう。
顧客アンケートを実施することで、日ごろ触れることのできない顧客の「生の声」に触れることができます。

しかし、ここでひとつ注意したいことがあります。それは、アンケートで収集した「お客様の声」が必ずしも「企業に対して求めること」とイコールであるとは限らないということです。
元ハーバード大学名誉教授のセオドア・レビット博士は、著書『マーケティング発想法』の中で、「ドリルを買いに来た人が求めているのは、ドリルではなく穴である」と述べました。つまり、顧客はドリルそのものが欲しいわけではなく「壁に穴をあけたい」のであって、そのニーズが満たされるのであれば買うのは必ずしもドリルでなくてもよいというわけです。

この考え方は、マーケティングに携わるうえで非常に大切なものだといえるでしょう。アンケートで収集した「顧客の声」から顧客の真の願いを導き出す際にも、同じような発想の転換・視座の切り替えが有効です。

「声」の裏に隠された「願望」を発見する

自分自身の要望(ニーズ)を的確に言語化するのは、いうほど簡単ではありません。これが、「お客様の声」が「顧客の望み」とイコールでない最大の理由だといえるでしょう。

例えば「レジにいた店員の応対が不親切だった」という苦情の背後には、「丁寧な対応を受けて快適に買い物をしたい」という願いがあるかもしれません。「発送通知が届かなかった」というクレームの裏にあるのは、「希望の日に商品が届くという安心が欲しい」という願望かもしれません。「不満」や「怒り」といった面に現れやすい感情はニーズと比べて表現しやすいため、往々にして「顧客の声」は不満やクレームの形であらわされるのです。

顧客理解を深めるためには、そうした表面的な言葉だけに惑わされないよう心がけなくてはなりません。
言葉をそのまま受け取るのではなく、「なぜこの“声”を発したのか?」という背景を推察し、そのうえで、願望を叶えるための最適な方法を模索することが大切です。

「観察」と「感情移入」で顧客を理解せよ!

顧客の本音や真の願望を理解するためのひとつの方法として、顧客の行動を観察し、顧客になったつもりで考える(=顧客に感情移入する)というアプローチがあります。

例えば、商品やサービスのターゲット層が集まる場所へ出かけていって彼らの言動を丁寧に観察することで、ターゲットの行動・思考に関するパターンが浮かび上がってきます。あるいは、モニター座談会などを開いてターゲット層を集め、顧客が商品を使う様子をじっくり観察すれば、商品に潜在する問題点が浮き彫りになるかもしれません。

いずれにしても重要なのは、ターゲット顧客を深く理解しようとする姿勢です。顧客に自分自身を重ねることで、「声」の裏に潜む「本音」や「真の願望」に想いを馳せることが可能となります。

データを駆使する最新アプローチ

なお、昨今では顧客をより深く理解するために、データ分析や人工知能技術なども積極的に活用されるようになってきています。CRMに蓄積された顧客属性や行動履歴データ、アンケート結果、SNSから得られるビッグデータなどを組み合わせて分析し、そこから浮かび上がる「パターン」から顧客の本音や隠れた願望を推測することで、思いもよらない潜在ニーズに気づける可能性があります。

高度情報化時代を迎え、こうした手法の実用化は今後も急速に進んでいくことでしょう。

データ駆動経営、データ駆動マーケティングという言葉が盛んに聞かれるようになってきましたが、顧客に関する種々のデータの重要性はますます高まっていくものと思われます。

アナログ的なアプローチと最新のデータ駆動アプローチ、現時点ではどちらも有効な方法です。両者をうまくくみあわせ、顧客理解に取り組みましょう。

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