アパレル業界におけるCRM活用を考える

CRMを実践する目的のひとつは、顧客との長期にわたる良好な関係性を構築することにあります。

この本質はどんなビジネスにおいても共通ですが、その目的を達成するために何を重視し、どのような取り組みに力を入れていくべきかは、業種・業態や企業の規模などによって変わってきます。 

この記事では、アパレル業界でCRM施策を展開する際に押さえておくべきポイントをご紹介します。

※CRMに関してより詳しく知りたい方は「CRM(顧客管理)とは?導入するメリットから失敗しない運用までを徹底解説」こちらの記事もご覧ください。

「ニーズ」より「ウォンツ」

消費者の購買動機は、大きく2つに分けて考えることができます。ひとつは「必要だから買う(ニーズ)」、そしてもうひとつは「欲しいから買う(ウォンツ)」です。

お米や野菜などの日常的に摂取する食材、トイレットペーパーや赤ちゃんのおむつのような商品は、「必要だから買う」ニーズ商材です。対して、アクセサリーやスイーツ、お酒やオモチャ、ブランド物のバッグなどは、「欲しいから買う」ウォンツ商材です。

ニーズ商材の特徴は、消費者が自ら必要としているため、売り手が製品やサービスの「良さ」をことさらにアピールしなくても選択肢に入っている、というところにあります。一方で、品質や価格の面については、比較的シビアに評価・比較される傾向があります。

反対にウォンツ商材というのは、基本的には「あったらうれしいが、なくても困らないもの」です。従って、売り手は消費者に買ってもらうために購買意欲をかき立てるための工夫をしなくてはなりません。

アパレル商材は、大別するとウォンツ寄りの商材だといえるでしょう。このため、「いかにして顧客に買ってもらうか」について知恵を絞る必要があります。CRMを実践する際にも、このことを十分に念頭に置いておく必要があります。

顧客の嗜好を把握する

では、前述のような理解を踏まえて、具体的にはどのようにCRMを実施していけばよいのでしょう?

まず、ウォンツ商材の特性のひとつとして「嗜好性の高さ」を挙げることができます。

お米やおむつなどのニーズ商材にも、好みのメーカーやブランドといった「消費者の好み」で選ばれる傾向はありますが、「欲しいから買う」ウォンツ商材では、その傾向が特に顕著に表れるのです。

どれだけ高品質でも、認知度が高くても、あるいはお手ごろな価格であっても、その商品やサービスが消費者の嗜好にマッチしなければ、購入には至ることはありません。

このため、ウォンツ商材では「顧客一人ひとりの好みをきちんと把握したうえで、顧客が欲しいと思うものを欲しいタイミングで提案する」という姿勢が重要となります。従って、CRMでも売上データ分析から全体的な傾向を把握して一斉アプローチをかけるような活動よりも、「一人ひとりの顧客と密な関係を築く」という方向へ労力を傾けるべきだといえます。

「欲しいタイミング」を見逃さない

「一人ひとりと密な関係を築く」という話と関連しますが、顧客が商品を「欲しい」と思う瞬間をタイムリーに捉えてアプローチするという取り組みも、ウォンツ商材では重要です。

どんな商材も売るためのタイミングを見計らうことは大切ですが、定期的に必要性が生じるニーズ商材とは異なり、ウォンツ商材では「タイミングを逃したら二度とチャンスは訪れない」ということが理論上あり得ます。

例えば、「退院時に赤ちゃんに着せる可愛いドレスが欲しい」と考えている出産間近の女性がいたとして、出産から半年経過してからドレスの購入を勧めても、購入してもらうことは難しいでしょう。あるいは、「クリスマスだから恋人にネクタイを贈ろう」と考えている人は、クリスマスを過ぎたらもうネクタイには見向きもしないかもしれません。

アパレル企業における顧客管理の方法

アパレルのようなウォンツ商材では顧客が「欲しい」と思うタイミングを逃さないことが、非常に重要なポイントとなります。個人を特定してのアンケートや購入履歴などを参考に、「顧客が何かを欲しいと思うであろうタイミング(年末年始といったシーズン、誕生日、子供の入学・卒業、旅行といった、顧客一人ひとりのイベント)」を把握できれば、先回りしてタイムリーなアプローチをかけることが可能となります。アパレル販売においては、一般的な属性データ以外の詳細情報をどのくらい集められるかがキーとなるのです。

顧客ノートからCRMソフトへ

CRMソフトを導入すればこうした詳細情報を蓄積しやすくなりますが、まだ導入の予定がない場合は、まず顧客ノートを充実させることから始めるとよいでしょう。店舗での接客などを通じて得た貴重な情報(子供や親の誕生日、習い事、ペット、旅行の予定など)を記録に残し、後からCRMソフトにデータとして取り入れられるようにしておきます。こうしたデータがあれば、より顧客の好みやスケジュールに合った商品を薦められるようになります。

ちなみに、アパレル系ECサイトの大手であるZOZOTOWNでは、CRMを活用して顧客の詳細情報を管理し、130種類以上のパーソナライズドメールを送信しているとのこと。顧客の動向を把握し、適切なタイミングで適切な商品を提案する施策を展開した結果、従来と比べてコンバージョンが5~30倍にも上がったそうです。

顧客と友達のような関係を築くZOZOTOWNのCFM戦略、130種類以上のパーソナライズメールを自動配信 日経デジタルマーケティング

アプリの活用でさらに顧客を獲得し、売上を増やす

CRMの施策にアプリを活用することで、さらにマーケティングやプロモーションを充実させている企業もあります。

アプリ導入のメリットとして第一に挙げられるのは、タイムリーな施策を展開しやすいという点です。スマートフォンの中にアプリを入れてもらえれば、プッシュ通知を通じて新商品の入荷やセールのお知らせなどの情報をスピーディーに発信することができます。スマートフォンは常に携帯して持ち歩かれることが多いため、発信した情報をすぐに見てもらえる可能性が高く、また、若年層を取り込みやすいという利点もあります。さらに、スマートフォンのアプリはオムニチャネルの施策にも活用しやすいため、統合的なマーケティング施策を展開しやすいのも魅力です。

では、実際にアパレル業界で導入されているアプリの例を見てみましょう。導入を検討されている場合は、ぜひアプリの作り方や活用方法を参考にしてください。

  • ●レナウンの事例

レナウンのファミリー向けブランド「アーノルドパーマー タイムレス」は、店舗や通販サイトでの買い物でポイントやクーポンが付与される公式アプリを2016年9月30日に導入。2016年9月30日~2017年6月18日の間にプロパー(正価品)の売上げが前年比109%で推移したと発表しました。

レナウンによると、アプリの会員数は2017年6月現在で6万人を突破。同社はアプリ導入により好調となった原因として、次の3つを挙げています。

  1. 1.購買特性に応じたアプローチ

アプリの導入によって、顧客の購買傾向を分析できるようになり、パーソナライズされたアプローチが可能に。誕生月のクーポンの発行や居住地域に合わせた情報発信など、より個々の顧客に役立つ施策を展開できるようになった。

  1. 2.イベントと連動したアプリ会員向けフェア開催

イベントシーズンには会員向けのクーポン配布やポイントアップのフェアを行い、集客に成功。2017年のゴールデンウィーク期間中(5月1日~7日)の店舗売り上げは前年比120%にアップ。

  1. 3.メールで生まれるコミュニケーション

メールを通して、店舗以外でのお客様とのコミュニケーションが可能になった。アプリ会員のメール開封率は41%と非常に高い。

このレナウンのケースでは、アプリの導入が顧客とのコミュニケーション促進や集客力アップにつながり、CRM施策が強化されています。アプリをプラスすることでマーケティングやプロモーションの効果が上がった事例です。

アーノルドパーマータイムレスアプリ

【ブランド情報】arnold palmer timeless アプリ導入による来店促進が好調|RENOWN INCORPORATED

  • ●ユナイテッドアローズの事例

ユナイテッドアローズは2012年にハウスカードアプリ(リアル店舗のハウスカードサービス)を、2014年にオンラインストアアプリ(オンラインストアサービス)をリリース。2016年の8月にはこれら2つのアプリを統合しました。統合後には、インストール数が前年比306%、アクティブユーザー数が前年比370%に増加。ところが、その2つを統合した際に、同社が保有しているデータではアプリのユーザーを特定できなくなってしまったそうです。

そこで、元々導入していたアプリの成長支援ツールに、CRMデータと他のさまざまなデータとを統合するカスタマーデータプラットフォームを連携。その結果、データを全て一か所に格納して統合することが可能になり、会員の購入ルート(リアル店舗かオンラインストアか、あるいはアプリか)やWebやアプリでどのように情報収集を行っているかといったことを知ることができるようになったそうです。

ユナイテッドアローズは、当初はCRMから会員属性と購買データだけを使用し、Webサイトの閲覧ログデータを取得できていなかったといいます。しかし、会員属性と購買データだけではMA(マーケティングオートメーション)で顧客とコミュニケーションを取るタイミングを最適化するのが難しかったたため、カスタマーデータプラットフォームの採用を決定。CRM+アプリで、よりパーソナライズされたマーケティング施策を展開できるようになった事例です。

UNITED ARROWS LTD. 公式アプリ

一人ひとりのお客様を深く理解する

繰り返しになりますが、ウォンツ商材であるアパレル商材のマーケティングにおいては、一人ひとりのお客様について深く理解することが求められます。

ビジネスの形態が実店舗であってもECサイトであっても、あるいは両者を連携させたオムニチャネル施策を展開するのであっても、必要なときにスムーズに顧客の情報にアクセスできる体制を整えておくことが大切です。

ぜひCRMを導入し、日ごろから顧客情報を収集・蓄積・管理して、お客様との密な関係を築いてください。

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