近年、「まんが」をビジネス書や販売促進に取り入れるなど、ビジネスシーンでの利用が増えています。
テキストだけでは伝わりきらない内容を、「まんが」という表現を用いることで、よりわかりやすく、印象的に伝えられることに注目が集まっているのです。
今回は「まんがの魅力」を株式会社サイドランチ 代表取締役社長 志田隆一郎さまに存分に語って頂きました!

Q. 「ビジュアルで魅せる」まんがの魅力とは?

まんがの基本表現は「省略」と「強調」

志田さま:「まんがで魅せる」ことには、「演説」に似ている面があります。
演説の苦手な人は、抑揚もなくだらだらと話を続けてしまいがちですが、上手い人は「つまり○○だ」「だから○○すべきだ」というように要約し、必要な部分を強調して話すことができます。
まんがはその技法を紙面で使っています。例えば吹き出しです。吹き出しは、枠内にセリフを省略してまとめる必要があります。そして、重要な部分の説明までをテンポよく、シンプルに明確に伝え、重要な部分は文字の大きさなどの表現を変え、強調することができます。
元々「省略と強調」の技法は、物事を説明する上では有効な手段です。あとはそこにストーリーが加わり、そのストーリーに読者が感情移入していきます。まんがは読者が感情移入して楽しむものなので、キャラクターをもとに自分ゴト化することで、ストーリーへの入り方も変わってきます。まんがは共感要素が多いということですね。
また、画(ビジュアル)の方が文字よりも情報量が圧倒的に多いです。ある商品をテキストで「これは平べったくて…」と説明するより、画はパッと見て瞬間的に伝えることができます。

まんがのストーリー展開で読者をひきつける

また、まんがは「わかりにくいもの」を「わかりやすく」伝えることができます。
複雑なものを説明する際は、説明がどうしても枝葉に分かれてしまいますが、その場合は、一番相手に伝えたい“幹”の部分を抽出し、道筋をつけてまんがで伝えていくのが効果的です。枝葉の部分は別のストーリーで、例えば「続きはWebで」のように詳細を説明するページへとつなげてもいいでしょう。DSCF4151.JPG

弊社が手がけたものに、作文の書き方をわかりやすくまとめた本がありますが、この本は最初に最も伝えたいことをまんがで表現し、その後詳細をテキストで説明しています。
物事を伝える上で、「つかみ」といわれる部分は、最初の数ページ、最初の何行といわれます。そこをいかに活用するかが重要なのです。

神:歴史の授業の前は、よく「日本の歴史」というまんがを読んでいました。まんがで全体像を理解した上で授業を聞くと、理解が深まるといいますか、記憶にもしっかり残る気がします。

志田さま:歴史も断片断片で見ると面白くないですが、流れで見ていくととても面白いものになります。
今後は教育関連にも力を入れていきたいと考えています。画の描き方を教えていますが、いかに楽しく伝えるかを重要視しています。物事を覚えることが辛くある必要はありませんよね。

弊社では、企業の事故防止マニュアルなどもまんがにしています。本当に読んでもらいたいものこそまんがに向いていますね。「文字が多くて読んでもらえない」では、本質がずれてしまいます。企業系のマニュアルをまんがにすれば、社員やアルバイトの理解促進につながります。最近ではネットリテラシー系のマニュアルをまんがにすることが増えています。

物事の内面を強調し、本質を描写する「デフォルメ技法」

まんがの良さは「面白い」と「わかりやすい」の両方を兼ね備えていることです。これは意外と難しいことです。
イラストにすることで、実写よりわかりやすくなることもあります。「デフォルメ」といって、リアルに絵を描くのとデフォルメで画を見せるのでも異なります。例えばカメラを描く時、カメラのフォルムを正確に描写し、本体とレンズの比率も正確に描くのが基本ですが、まんがの場合は「カメラとは何か」という本質を描写することに重きをおきます。デフォルメの場合、カメラとは「レンズを通して相手を見るもの」であるため、本体よりもレンズを大きく描き、その中に目を描いたりします。本質的なところがデフォルメによって引き出されていくわけです。

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Q.「まんが×○○」まんが活用の可能性は?

「まんが×インバウンド」まんがは世界共通語

海外に展開した餃子チェーン店では、「日本式の餃子の食べ方」をまんがにしました。
日本人が外国人からお寿司の食べ方はこうだと言われると、「そうじゃない!」と言いたくなるように、台湾の方に餃子の食べ方を伝える際には、あるキャラクターを立てて、まんがで説明することですんなり受け入れられるようになります。キャラクターを立てることで感情移入しやすくなるからです。
言語に関係なく、ビジュアルでまず内容を伝えられるというのがまんがの一番のメリットですね。

別の事例では、日本遺産である斎宮(伊勢神宮につかえる斎王が暮らした御所)の歴史を漫画で知るというテーマで、縦スクロールまんがを作りました。これは5か国語で変換されています。まんがといっても見せ方は色々です。このまんがの特徴は、iPadなどのタブレット端末で見ることを想定し、通常のHPの見方と同じで縦スクロールで簡単に見ることができる点です。またセリフが横書きなので、外国の方も違和感なく読むことができます。日本のまんがは基本縦書きなので、そのままでは英語変換は難しいですが、横書きになっていることで、英語も仏語も…というように多言語対応が可能になります。インバウンド対応が可能になるわけです。

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他にも、東京大学や千葉工業大学など大学の研究室の研究成果をまんがにしています。
主な目的は、海外に向けた成果発表や学生に対する研究室のPRです。
海外で配布した際は、まんがなので面白いし、手にしてもらいやすいということで、午前中ですべてなくなる人気ぶりだったそうです。

「まんが×企業PR」社員のモチベーションUPに貢献

会社案内もまんがが有効だと考えています。特に海外支店を持つ日本企業では、現地社員に自社をもっと理解してもらい、好きになってもらうことができるのではないかと思います。
某大手企業が会社案内をコミック風に作りました。社員が日々働く様子がまんが化されており、差し込み広告も自社製品の内容です。自分自身の取り組みがまんが化されるととても嬉しいですよね。社員のモチベーションアップにもつながっているそうです。会社概要や沿革などをテキストで小難しく説明するより、まんがにすることで、社員に会社の精神が伝わり、会社愛も高まるのではないでしょうか。

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「まんが×デジタル」広がる可能性

まんが×タブレット端末という事例では、「分岐まんが」というものを作成しています。
携帯の「ジャイロ」という傾きを感知する機能を使って、ストーリーを分岐させることができます。
例えば、分岐を利用した街歩きまんがなら、観光気分を盛り上げる物語を展開することができます。ストーリー性を持たせることで、地図や動画とは違う印象に残るアプローチも可能です。

もう一つの機能として「GPS」を使ったまんがも展開しています。
例えば秋葉原でしか読めないまんがや、地方の名所や道の駅でしか読めないまんがというように地域限定のまんがを作成しています。

神:地方創生や地域活性化にとても有効な気がします!

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Q.コンテンツの充実が求められる時代。まんがというコンテンツの今後は?

志田さま:世の中には説明したいことが山のようにあります。文字だけで伝えていたものが、まんがやキャラクターを共通言語とすることで、地方活性化やインバウンド対応もできるのではと思っています。
まんがという共通言語を持つことは、それ一つで色んなことに展開できることだと思います。今までは動画や紙という分け方だけでしたが、まんがという共通言語を頭において、まんがを使った「動画」や「パンフレット」「アートデザイン」というように、まんがから分けていくという認識で提案ができるといいなと思っています。
イメージアップのために、人工知能をもとにバーチャルタレントやイメージキャラクターを作る企業も増えています。テクノロジーと2次元キャラクターの掛け合わせなど、今後も展開の幅は広がっていくのではないでしょうか。

編集後記

子どもの頃、某大手通信教育会社から送られてくるDMがとても楽しみでした。
「好きな人と一緒に、放課後勉強を頑張る!」といったような恋愛ストーリーが多かったように記憶していますが、パターン化されている内容だとわかっていてもついつい読んでしまう。これこそがまんがの強みだと感じます。
ストーリーに引き込まれることで自分ゴト化され、購買欲求へつながったり、行動への後押しにつながったりする。ある種妄想を膨らませて楽しめることが、人の潜在的な欲望を満足させるのかもしれません。
「もしドラ」をはじめ、ビジネス書や金融関連など専門的で複雑な内容をまんがで伝える企業が増えています。また、商品の宣伝ではなく、開発の背景や、使用シーンを交えてまんがで伝えることで、顧客心理に配慮することも可能です。
自分に必要な情報は、自分で検索して選択する時代。当社でも「まんが」を取り入れたプロモーション提案事例は増えています。
より消費者に寄り添ったプロモーションの手段として、「まんが」を取り入れてみるのはいかがでしょうか。

【当社事例】
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© 池田理代子プロダクション
ヤクルト本社さまの認知促進キャンペーン。ヤクルトが展開する化粧品のターゲット層をふまえて、「ベルサイユのばら」で有名な池田理代子先生による描き下し漫画を作成し、小冊子化。オリジナル漫画を読んでクイズに答えるキャンペーンを実施。

プロフィール
■志田 隆一郎

マンガ制作会社(編集プロダクション)株式会社サイドランチ 代表
2002年:有限会社エスアールシーを立ち上げる。
2005年:社名を変更し、株式会社サイドランチとする。
https://www.sideranch.co.jp/index.html

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