【対談】共同印刷×ハウステンボス 顔認証入室システムが実現する、ホテルの「新しい宿泊体験」

1992年に開園した日本最大級の広さを誇るテーマパーク・ハウステンボス。プロジェクションマッピングやVRといった最新のテクノロジーを駆使したイベントやアトラクションが人気で、年間約300万人が来場しています。

そんなハウステンボスの認定ホテルの一つが2015年7月に園内にオープンした「変なホテル」です。フロントで出迎えてくれるのは恐竜型のロボットで、空中操作ディスプレイを使ってやり取りします。最近では無人の「スマート・コンビニ」がホテル内に導入されるなど、テーマパークと同様に最新のテクノロジーによってエンターテインメント性の高い空間を生み出しています。

2018年12月にオープンした新規棟に導入された顔認証入室システムも、「変なホテル」に導入されているテクノロジーの一つです。「変わり続ける」というコンセプトから名付けられた「変なホテル」の大江岳世志総支配人は、共同印刷が開発した顔認証入室システムを導入したことで、さまざまな変化があったと言います。

開発を担当した共同印刷プロモーションメディア事業部の田河毅宜と共に、顔認証入室システム導入までの経緯や導入後の反響、共同印刷の持つテクノロジーとの連携から生まれる未来の構想について語っていただきました。

新規棟に顔認証入室システムを導入

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田河:ハウステンボスの直営ホテルの中でも、ひときわ個性の強い「変なホテル」ですが、2018年12月にオープンした3期棟(サウスアーム)に顔認証入室システムを導入されたのはなぜですか。

大江: 顔認証入室システムは1期棟と2期棟にも導入しています。「変なホテル」が重要視しているエンターテインメント性を考えれば、3期棟にだけ導入しないという選択肢はありませんでした。

また、全56室の3期棟がオープンしたことで、「変なホテル」は全200室にまで部屋数が増えました。従業員の数は変えずに部屋数を増やすためにも、顔認証入室システムの導入は重要な要素だと考えていました。

田河:フロントに立ち寄らなくてもチェックインできる「フロントレス」の導入が最終目標でしたね。大江さんと一緒に何度も佐世保の保健所に足を運んだものの、旅館業法の壁が立ちはだかって実現しなかったのが残念です。

大江:3期棟はテーマパークから一番近いのですが、チェックインをするために、一度フロントのある1期棟に立ち寄らなくてはなりません。ハウステンボスはご存じのようにヨーロッパの街並みを再現するため、石畳になっています。その上を何時間も歩くとやはり疲れます。お客さまがテーマパークで遊ばれた後に、余計に歩いていただかなくても済むようにフロントレスにしたいと思っていました。

当初は、ルームキーを渡すためにフロントがあると思っていましたが、旅館業法が定めるフロントの本当の役割は、お客さまの本人確認だと理解できました。ハウステンボスの「変なホテル」の構造では本人確認ができないという理由でフロントレスが認められませんでしたが、旅館業法を理解できたことは大きな実りです。何棟にもわかれているホテルでも、入り口であるフロントを必ず通るような構造のホテルであれば、フロントレスが認められる可能性はゼロではないということに気づけたので、今後もフロントレスに挑戦していきたいです。

田河:旅館業法は2018年6月に一部緩和されました。今後、宿泊施設はどんどんIT化が進むと思いますから、旅館業法のさらなる改定も期待できるのではないでしょうか。「変なホテル」でフロントレスが認められる日が来るかもしれませんね。

ユーザビリティに優れているから、認証に失敗しない

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大江:1期棟と2期棟の顔認証入室システムではカメラを利用しています。撮影された画像が認証しにくかったり、複数のお客さまが写り込んだりすると認証エラーが発生しますが、カメラの場合、撮影した画像をお客さまご自身で確認することができません。そのためエラーの原因がわからず、問い合わせが多数発生していました。

今回の顔認証入室システムの導入では、カメラではなくタブレットを使ったことが、とても大きなポイントになったと感じています。

田河:実際にどんな効果がありましたか。

大江:大きな効果としては、タブレットは使い慣れているお客さまが多いこともあり、「使いこなせない」というご指摘がほとんどないことです。

田河:今回のアプリケーションは、アプリ設計会社ではなく建築士の方とタッグを組んで開発しました。アプリケーションにどんな機能を持たせるかよりも、どんなお客さまでも直感的に利用していただけるように、ユーザーインターフェイスを高めるほうが重要だと考えたからです。

ホテルの建物の一部としてなじみ、お客さまに違和感なく使っていただけるよう工夫したことが功を奏したのかもしれません。

大江:また「顔はめパネル」を画面上で再現したことも、顔認証の認識率の高さにつながっていると思っています。

顔認証を始めようとすると、タブレットの画面に「兜(かぶと)」「舞子さん」「恐竜」という3種類の顔はめパネルがランダムに登場します。顔はめパネルが顔認証に最適な位置へ自然と導いてくれるため、認識率がすごく上がりました。顔はめパネルを見ると、何となく顔をはめてみたくなるというお客さまの心理をついた良い工夫です。

また3種類ある顔はめパネルのどれが出てくるのか事前にわからないため、ご家族やお友達と違いを楽しむことができます。エンターテインメント性を高めることにも一役買っています。

田河:お客さまからの反響はいかがですか。

大江:とても好評です。顔はめパネルの種類を増やしてほしいというご要望が多いですね。お客さまがご自身の顔はめパネルの画像をSNSに投稿してくださるおかげで、「変なホテル」のPRにも一役買ってくれています。「変なホテル」のオリジナルキャラクターの顔はめパネルを作成したいです。

8割のお客さまが顔認証を選択

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田河:お客さまの反応が上々だと聞いて安心しましたが、「変なホテル」で働く方々の反響はいかがですか。

先ほどタブレットの話が出ましたが、オリジナルの専用端末に不具合が生じたら、専門のスタッフが対応しないといけないため復旧までに時間がかかります。交換するだけで不具合に対応できるよう、専用端末を使わず既製品を使うなど対策は打ったつもりですが…。

大江:対応しないといけないような不具合は今のところ生じていませんし、顔認証の認識率が上がったことで、従業員の作業効率は格段に上がっていると思います。

例えばご家族でハウステンボスに来ていただいて、お父さまだけ疲れてしまい先にホテルに戻られるといったことは多いと思います。カードキーだと、お父さまが寝てしまったことでご家族がお部屋に入れなくなったり、カードキーを紛失してしまったりということも多いです。

田河:顔認証なら複数の顔を登録することができるので、ご家族全員がそれぞれ顔を登録しておけば、お部屋に入れないというトラブルはなくなりますよね。また、カードキーを失くすこと自体がありません。

大江:「変なホテル」は、カードキーを利用したいという方にも対応していますが、今のところ8割のお客さまが顔認証入室システムを選択されています。

カードキーの再発行コストはバカになりません。カードキーだけで運用しているホテルの場合、かなりの損失を抱えているケースは多いと思いますよ。

田河:そうしたホテル業務の実態を知る機会はこれまでなかったのですが、導入前にホテル業務の流れなどを伺うことで、開発に生かすことができたと感じています。ただ、ギリギリまで顔認証入室システムと予約管理システムの連動が上手くいくのかが見えず苦労しました。

大江:そうですね。当社はNECの予約管理システムを利用していますが、領収書を発行するのはまた別の会社で、“お客さまの情報を各社が管理している”という構造でした。

ですから顔認証入室システムを利用するにあたっての一番の課題は、お客さま情報をどのように集約させていくかだったと思います。

田河:ホテルの建設はどんどん進みます。そのなかでタブレットを配置するならば、当然ですが配線なども考えないといけません。顔認証入室システムと予約管理システムの連動が上手くいくのかが判断できない段階で、ホテルの内観に関わることは決めていかなければなりませんでした。けっこうな綱渡り状態だったと思います。

大江:結果的にすべて問題なく導入することができました。お客さまからの問い合わせやクレームも発生しておらず、大変感謝しています。

デジタルサイネージの活用でサービスの幅を広げたい

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田河:今後の展望をお伺いしたいのですが、やはりフロントレスが目標でしょうか。

大江:ハウステンボスの「変なホテル」の環境上、フロントレスは難しいと思いますが、先ほど話したように、旅館業法が緩和されれば不可能ではないと思っています。引き続き取り組んでいきたい目標の一つです。同時に、共同印刷のデジタルサイネージを使って、キャッシュレスを実現できたら良いと考えています。

田河:顔認証でチェックインをしてしまえば、チェックアウトまで財布を出す必要がなくなる。そうなるとすごく便利になりますね。

大江:そう思います。これまでハウステンボスの情報を流すなどの用途でデジタルサイネージを利用してきました。しかしその使用方法は、あくまで宣伝を兼ねた情報共有止まりでした。

顔認証とデジタルサイネージを連動させてキャッシュレスの仕組みを構築したいという思いは以前からあったんです。ホテルで顔認証をすれば、テーマパークでもその顔認証を利用いただける。そうした連携に挑戦すれば、より利便性は高まるはずです。

田河:「変なホテル」はとても先進的な取り組みで、ハウステンボスというテーマパークは、新しいテクノロジーを次々と導入しながら成長する未来都市のようなイメージを持っています。デジタルサイネージを活用したキャッシュレスの仕組みができれば、社会に対してまた新しい話題を提供することになりますね。

大江:「変なホテル」に宿泊いただくお客さまの多くが、当ホテルに新しい体験から生まれるワクワクやエンターテインメント性を期待されています。新しい話題を提供し続けながら、「変なホテル」をお客さまにもっと喜んでいただけるホテルへと成長させていきたいです。

※このインタビューは、2019年3月に行われたものです。

■取材協力
変なホテル事業開発室 総支配人 大江 岳世志さま
ハウステンボス株式会社

https://www.huistenbosch.co.jp/

■プロモーションメディア事業部 田河毅宜
2008年入社。入社から5年間、大手自動車メーカー様、大手生命保険会社様などの営業担当として、製造はもちろんデザイン・制作、システム、ロジスティクスなどを組み合わせた様々なソリューションを立ち上げ。
2012年より新規事業開発部門で、新たなサービスの開発を担当。
流通業界向けソリューションメニューの開発、地方創生プロジェクトの立ち上げを経験。
現在は、当社IoTソリューションの開発プロジェクト責任者として活動

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