ベジタリアン訪日客への「早急なる食対応」をオーストラリアから学ぶ

2018年12月に3,000万人を超えた訪日観光客。訪日観光客の中には肉や魚を食べない「ベジタリアン」が4.7%を占めており、「日本にはベジタリアンメニューがない所が多く困る」という観光客の不満も多く聞かれます。今回、訪日観光客数がここ5年で約2.5倍と急激に増え、国民の約11.2%がベジタリアンであるオーストラリアを例にベジタリアン対策を紐解き、日本のベジタリアン対応の現状と、レストランやスーパー、コンビニなどで急務である食対策について考えていきたいと思います。

訪日観光客の動向

上述のように訪日観光客は、前年度比で8.7%アップの3,000万人突破、オリンピックを控えさらなる増加が見込まれています。しかし日本での食事、ベジタリアン向けの対応には追いついていません。スタートアップ「フレンバシー」によると、ベジタリアン訪日客の割合は2017年では4.7%、ベジタリアンの割合が多い国として、インド・英国・スイス・ブラジル・台湾・イスラエル・オーストラリアなどが挙げられています。

なお、「ベジタリアン」には卵や乳製品は大丈夫なベジタリアン、野菜や果物だけのヴィーガン、そしてイスラム教徒のようにな宗教的制約を受ける人もいます。ここでは、これらの人々を総称し「ベジタリアン」とします。これらの訪日客が日本でどのような食体験をし、どのような対応を必要としているのでしょうか。オーストラリアの事情から対応策を考えたいと思います。

オーストラリアにベジタリアンが多い理由

ベジタリアンが多い理由として、食アレルギーに悩む人や動物愛護の考えが他国よりも強く根付いており、それによりベジタリアンへの転向者が増えているということが挙げられます。さらに、多文化主義の国で民族数も多く、仏教徒やイスラム教でハラール食品で特定の処理法を施した料理しか口にしない人も多数いるのです。

あるオーストラリア人の訪日旅行での体験

2018年、リサーチ会社「レイ・モーガン」が発表した報告では、オーストラリアの国民総数に占めるベジタリアンの割合は約11.2%、また訪日観光客も上述のように増加し、必然的にベジタリアンの増加が想定されます。

筆者の知り合いのオーストラリア人は、日本の風景や文化、サービスが好きで5回ほど旅行していますが、ベジタリアンのため自由に食事を楽しめないことが悩みだといいます。ホテルや旅館によっては対応食を提供するところもありますが、まだ魚の出汁を使う場合がほとんど。また、ベジタリアン向けレストランも少ないので、キッチン付きの民泊などで自炊で対応することもあるそうです。けれども、観光や移動に時間がかかれば自炊の時間が取れず、コンビニで塩昆布のおにぎりやゆで卵、生野菜、フルーツなどで対応しなければばなりません。せっかくの旅行で、コンビニの食事で済ますのは寂しいと言います。

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※宿泊先での朝食。右の下がベジタリアン用の朝食です。一見動物性たんぱく質は使われていないように見えますが、みそ汁には普通の出汁(魚)が使われています。

オーストラリアにおけるベジタリアンへの対応とは?

オーストラリアでは、スーパーマーケットでもベジタリアン専用コーナーが設けられ、ほぼすべてのレストランやカフェが、ベジタリアン向けのメニューを用意しています。

1、レストランの対応

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メニューにはベジタリアン向け表示があり、他にもグルテンフリーやデアリーフリー(乳製品を使用しない)などの明記があるところもあります。例えば、上の写真はある寿司ショップのメニューです。この中で赤丸で囲んだ寿司パックはすべてベジタリアン向けで、元々ベジタリアン用には「Vegetarian(ベジタリアン)」と明記され、いなり寿司など一般向けでも食べられるものには「V」マークが表示されています。またグルテンフリーを「GF」の短縮形で明記しているところもあります。さらに最近では、専門レストランも各地に誕生し一般客が足を運ぶ現象も起きています。

2、スーパーマーケットやショップの対応

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※ベジタリアン向けの食品を揃えたコーナー

オーストラリアではベジタリアン専用の食品店があり、普通のスーパーマーケット(以下スーパー)でも専用の食品コーナーが常設しています。例えば、各地にあるチェーン店スーパー「Woolworths」では、電子レンジで温めて簡単に食べられるベジタリアン食品として、味付けした豆料理や豆腐料理などがあります。

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※温めるだけで食べられるものが置かれている

このコーナーには、他に温めるだけで簡単に食べられる食品、例えば上の写真『チックピーでできたベジ・バーガー』や『ベジ・ミンス』などがあります。スーパーでは商品が充実していますが、オーストラリアのコンビニではベジタリアン用の食材も限られます。食品はスーパーやベジタリアン専門店での買い物が通常です。

日本でのベジタリアン対応の現状

対して、日本の現状はどうでしょうか。例えば、成田空港ではヴィーガンレストラン「 T'sたんたん」、羽田空港では「Healthy TOKYO Cafe & Shop」、関西空港では「for MUSLIM VISITORS」というパンフレットを発行しハラールフード提供の飲食店を紹介するなど、渡航者の玄関口である空港の対策は少しずつ進んでいます。また、大阪の「近鉄リテーリング」では、2018年に大阪上本町駅エリアの日本料理店・洋食店・中華料理店・カフェでベジタリアンメニューを導入、また、東京駅にあるラーメン屋「ソラノイロNIPPON」ではベジタリアン向けのラーメン「ベジソバ」を開発、健康志向の強い一般人にも人気が出ています。さらなる対応が必要ですがコストなどの現実的な問題を考え、大掛かりではなくてもできることはたくさんあります。

今後の早急なるベジタリアン対策とは?」

【その1】食材の見直しとメニューの追加

まず通常メニューにおける見直しでそのまま対応できるものの把握と、いくつかの対応食の追加が通例です。しかし、これらで意外と盲点なのが、実は自国のメニューや食材を改めて見直すことで対応可能になるということです。

というのも、日本は国土が小さく島国で元々自給物資が他国に比べ乏しい部分があり、歴史的に肉以外の様々なものを食したり、精進料理などの文化があります。豆腐やソイミート、味噌に醤油などの豆類食材に調味料、きのこに海藻、こんにゃく、グルテンとは無縁の米など、海外のベジタリアン対応と相応できる食材が豊富です。

また、日本では料理での「旨味」が大切にされています。出汁も魚以外に海藻や野菜、きのこなど種類が豊富で、これらを考えると対応食の無限の可能性とビジネスチャンスが秘められているとも言えます。例えば、2014年に大阪でオープンしたヴィーガンレストラン「パプリカ食堂ヴィーガン」では、 目指すところが「肉食もする一般客」でベジタリアン以外も楽しめるようにメニューへ工夫を凝らしています。「舞茸を使ったカキフライ」や「長芋で作ったうなぎのかば焼き」など、肉を使わず素材と旨味などの工夫から、菜食料理には見えない味にまで進化しているそうです。

【その2】スーパーマーケットやコンビニの即急対応

そして、訪日客には民泊やコンドミニアムなどで、自炊しながら旅行する人もいます。そのため、日本食材の中にベジタリアン対応できるものがあり、それを理解してもらう必要があります。オーストラリアのような専用コーナーがベストですが、それ以外にも、ローコストで即対応可能な方法として、それらの食品を外国語で表示、シンボルマークでの差別化の対応でまかなうことも可能です。

さらにコンビニでは、時間を選ばず手軽な買い物ができるメリットを活かし、オーストラリアのようなレトルト食品や電子レンジなどで簡単調理できる食品の販売が急務です。おにぎりやサラダなどもありますが、バリエーションがなく日持ちがしない、また、コスト面での長期保存の視点から考えれば必要不可欠です。手軽に手に入ることは、訪日ベジタリアンにとってはかなりの利便性になるのです。

【その3】訪日ベジタリアン向けの言語対応と情報提供

そして、ベジタリアンに限らず、避けて通れないのが言語の問題です。特に、一般レストランでは、外国語表記やシンボルマークを使った表示が必要です。また、そこに使われている材料、写真を載せたメニューがあればベストです。

さらに、これらの対応とともに外せないのが自店舗(自社)の「情報提供」。訪日客が情報収集をする際、アジア系はSNSが圧倒的に多いですが、オーストラリアでは「Tripadvisor」や「Google」での検索が多いと言われています。そのためオーストラリアなどではWeb上でのPR、例えば、食べログと自治体との連携でレストラン紹介を行うサービスなど、それらへの対応が必要になります。さらに、外国語によるレストラン予約アプリケーション、例えば「Open Table(Priceline Group Inc)」や「Happy Cow」などは、ベジタリアンが利用できるレストランを紹介しています。ターゲットを絞ったPRは必要不可欠です。

まとめ

このように、オリンピックを控えたインバウンド対策は急を要します。これらへの対応は、自社以外に外部の力を借りるのも手と言えます。例えば、「外国人ユーザビリティ調査」や接客の時間短縮を図れるような「接客アプリ」の導入、小型サイネージでの多言語対応サービスなど、様々なサービスが用意されています。ベジタリアンへの食対応は、日本の飲食や観光業界に大きなビジネスチャンスをもたらすかもしれません。これらサービスの活用も有効なビジネス運営につながるでしょう。

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