【スタートアップCEOインタビュー】シリコンバレー発!写真プラットフォームビジネス「Keepy」はなぜ強い?【後編】

子どもが描いた絵や造形作品などの画像をオンライン保存し、親せきや友人などと共有して楽しめるシリコンバレー発のアプリ「Keepy」。全米を中心にカナダ・オーストラリア・イギリスなど、約120万もの家族に愛用されています。スタートアップの始めたサービスが開始から5年間でこのように飛躍的に展開することができたのは、なぜなのでしょう?Keepy社のCEO、Offir Gutelzon氏へのインタビューから、同社のビジネスモデルとマーケティング成功の秘密を探りました。

ビジネスモデル

Keepyのダウンロードは無料です。1ヵ月間で7件のアイテムを投稿できますが、もっと多く投稿したい場合は有料版にアップグレードすると可能になります。有料版は、1ヵ月あたり550円、1年間なら3,600円の定額で利用量が無制限に。Keepyのビジネスモデルは「フリーミアム(無料の『フリー』と割り増し金のついた『プレミアム』の造語)」なのです。

基本的なサービスは無料で利用でき、使ってみてよいと実感した一部の人が、付加価値のある有料サービスにアップグレードすることで利益を上げるモデルです。

Gutelzon氏によると、無料ダウンロード後、有料版にアップグレードする利用者の割合は7%。一般的に、フリーミアムモデルにおいて有料版に移行するコンバージョン率(顧客転換率)の平均は2%程度とされており、7%というKeepyの数字はかなり高いといえます。有料会員になった利用者は期間中、何件でも投稿することができます。この有料会員が期限を更新して使い続けるリピート率もまた高く、約80%とのこと。米国のメディアでは「有料にするだけの価値がある」といった利用者の声が多く掲載されていますが、この驚異的な数字は一体どこから来るのでしょうか?

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支持される理由

まずポイントのひとつに、3者のステークホルダーが挙げられます。それは、子どもの思い出を残したいと思い最初に利用し始めるママ、そして一緒に子どものKeepyを共有するために招待をかける祖母、ママ友です。Gutelzon氏によると、最初に無料ダウンロードするのは85%がママです。そして彼女から紹介を受け、祖父母や兄弟、親せき、友人などもダウンロードすることになります。その中から自分自身も、より多くアプリを活用したくなりアップグレードして「有料版」に切り替える人が出てきます。このようにして、サービスの性質自体が、利用者の拡大につながる仕組みになっているのです。中でも、ママ・祖母・ママ友という密なネットワークが、収益を支える大きなカギになっているのです。

もうひとつのポイントは、信頼性の高さ。ごく親しい間柄でのみ情報を共有できるという閉鎖性が安心につながっています。子どもの写真などプライベート性の高いコンテンツを扱うため、「情報セキュリティには力を入れており、ブランドやロゴに対する信頼性が保たれている」とGutelzon氏は分析します。また多くのSNSにある、利用者に最適化した広告等の表示を行うためのアルゴリズムがKeepyにはなく、純粋に、子どもの記録を保存し身内でシェアするサービスになっているという点も、利用者の安心につながっていると考えられます。

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プロモーション

Keepyはプレスリリースを積極的に実施し、ワシントンポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙、TechCrunchなどさまざまなメディアで紹介されています。さらに、ママや親子といったターゲット層の心をとらえるため、大きくわけて2つのマーケティング方法をとっています。ひとつはWebベースでの広告宣伝、そしてもう一つはリアルベースでのプロモーションです。

まずインターネットでのプロモーションにおいては、Facebookのモバイル広告とママブロガーなどのインフルエンサーなどを活用しました。Facebook広告はターゲティング精度の高さが評価されていますが、Keepyの場合、最初にフリーダウンロードするのは85%が母親なので、リーチしたいターゲット層が明確です。当時はFacebookがアプリ広告を始めたばかりの時期で、広告料金も低額だったことも理由としてある、とGutelzon氏は話していました。子どもがいる母親たちへ訴求力があるママブロガーたちにKeepyを取り上げてもらうというインフルエンサー活用も、古くからある手法ながら、やはり効果が高かったようです。

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リアルベースでは、アメリカにあるイスラエルのコミュニティセンター(イスラエルはGutelzon氏の出身地)でアートのイベントを開催し、Keepyの名前を広めたこともありました。この時は、イスラエルの建国70周年にちなみ、子どもたちの描いた絵を集めて並べ、集合体としてイスラエルの国旗と「70」の数字の絵柄を浮かび上がらせるモザイク壁画を作ったそう。今後は、こうした親子の集まる場などと協業し、人とのネットワークを活用したプロモーションをもっと増やしていきたいと考えています。

そして、ひとたびKeepyというサービスを知ってもらうと大きな力を発揮するのがWOM(Word of Mouth)、口コミです。利用者が子どもの作品を共有したい家族や友人などを招待するという仕組みそのものが、利用者を拡大していくのです。
現段階では個人利用者に焦点を当てていますが、学校で子どもたちの作品集の制作に活用する、または、老人ホームで入居者が昔の写真を取り込み、ほかの入居者や家族との会話のきっかけに使う、といった利用の機会も広がりそうだということです。

日本では?

Keepyは日本でも利用できます。2017年に、パソコンやスマホのソフトウェア、ハードウェア製品の企画・開発・販売を手がけるソースネクストと業務提携し、同社が日本国内での販売代理店となってサービスを開始しています。まだ認知度はそれほど高くないのですが、docomoやKDDI、ソフトバンクなど、大手キャリアが提供する「定額制アプリ使い放題」サービスのコンテンツに参入できれば、利用者数が拡大すると見ているようです。

シリコンバレー発のKeepyが成功した理由、それはプラットフォームビジネスというビジネスモデルの組み立てに成功したことと、高いコンバージョン率や継続率を誇るようなサービスを生み出せたことにあります。子どもたちを取り巻く家族や友人などのステークホルダーに、「思わず見せたくなる=招待したくなる」ようなコンテンツをビジネスの軸に持ってきていることは着目すべき点でしょう。低コストで利用者を獲得する方法としても寄与しています。一方、事業拡大のためにはより多くの潜在ユーザー層を囲い込むため、今後もマーケティング施策を継続する必要があり、米国はもちろんのこと、日本での今後の展開からも目が離せません。

●Keepy HP https://keepy.me/
【Keepyアプリは下記よりダウンロードできます】 

●iOS版
https://itunes.apple.com/app/keepy-save-share-your-childs/id647088205?ls=1&mt=8

●アンドロイド版
https://play.google.com/store/apps/details?id=me.keepy&hl=en_US

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