世代別ビューティトレンドと“Made in Japan”コスメへの期待

美容ジャーナリスト/美容アナリスト 奈部川貴子様へのインタビュー

2017年11月24日に開催された共同印刷主催の第1回女性市場研究会では、「世代別ビューティトレンドとメイドインジャパンコスメへの期待」という題目で美容ジャーナリストの奈部川貴子さんに講演いただきました。今回は、この講演の内容からさらに踏み込み、より詳しく奈部川さんへインタビューした内容をお届けします。

美容関連の専門的な視点からの見解や最新トレンドなど、特に化粧品販促に携わる担当者の方は必見です!

奈部川様の取り組みと共同印刷との関わり

――奈部川様は美容ジャーナリストとして長く美容・健康企業の商品開発やコンサルティングに携わられていますが、ご自身は、どのようなテーマに取り組まれているのでしょうか。

奈部川様「私は女性誌の美容に関するページの執筆からキャリアをスタートし、その中で最新のトレンド情報に触れる機会や化粧品会社さんとのお付き合いなどが増え、商品そのものや販促企画などにも関わることが増えました。現在も美容関係のお仕事を継続しており、共同印刷の講演会やセミナーで登壇もしています。
個人的には、3年ほど前から『フェイスマップ』という顔のお手入れを通じたリフレクソロジーの研究をしています。顔のお手入れをすると美容効果が上がるのは当たり前ですが、それに加えて顔の反射区を刺激することで、脳神経の活性化を図ることができるなど、健康増進面での期待もされています。今後はそういった美容×健康増進の面でも情報を発信していきたいと思っています」

――共同印刷との取り組みがスタートしたのは、社員が奈部川様のご講演を聴いて、ご協力のご相談をしたことがきっかけと聞いています。

奈部川様「はい、毎年ビックサイトで行われている『ダイエット&ビューティフェア』で、『売れる化粧品のヒント』という講演をご覧いただいた共同印刷の社員さんにお声がけしていただいたのがきっかけでした。共同印刷さんが化粧品開発展への出展を検討されているということで、そのコンセプトを作る上で協力してもらえないかとご相談いただき、取り組みを開始しました。その後も、共同印刷さん主催のビジネスモデル研究会で、キーノート講演のスピーカーなども行っています」

■Made in Japanコスメへの期待と、インバウンドや海外市場の今後は?

――第1回女性市場研究会では、「世代別ビューティトレンドとメイドインジャパンコスメへの期待」と題してご登壇いただきました。Made in Japanコスメへの期待は高まっており、インバウンド市場も拡大されているとお話されていましたね。インバウンド、アウトバウンド含め、国内の化粧品メーカーは大いに海外市場に期待していると考えられます。このMade in Japanコスメは今後、どのようになっていくとお考えでしょうか。

奈部川様「2020年の東京オリンピックに向け、訪日外国人を意識した『Made in Japan』、つまり日本の美意識や哲学、和の心や日本の自然のエッセンスといった、日本人らしさを組み入れた化粧品ブランドが多く出てきています。Made in Japanコスメはグローバルで見ると一つのブランドとして確立されており、国内生産したものを特にアジアへというのが大きな流れとなっています。
最近も大手化粧品メーカーが国内工場を新たに設立するというニュースがありましたが、Made in Japanコスメを中国、台湾、香港、東南アジアへの国々へ輸出するという傾向が強まっていることが分かります。
これまでは化粧品の輸入額のほうが輸出額を上回っていましたが、ごく最近、これが逆転し輸出額のほうが上回りました。日本の少子高齢化による人口減少による国内需要の減少をカバーする上でも、各社が海外輸出でバランスを取り、ビジネスの成長を狙っていると考えられます。
共同印刷さんの調査結果からも顕著に出ていましたが、Made in Japanコスメに対する好感度や信頼感は、海外ではとても高いです。化粧品は肌に直接つけて浸透させるものなので『丁寧に』『真面目に』作られている安心感がアジア圏の人々に響いているようです」

繊細で工程の多い、日本のスキンケアは外国にも受け入れられるか

――日本人のお手入れはとても繊細で手間がかかっている印象がありますが、そのスキンケアの習慣は海外の女性に受け入れられるものでしょうか。欧州では朝起きてすぐ洗顔するという習慣はあまりないと聞いたことがあります。

奈部川様「日本の女性は世界で一番丁寧にスキンケアをしている民族だと思います(笑)。清潔感があると言いますか、水で洗顔するという習慣も、水がきれいだからできることであって、欧米では生活水の環境はよくないことが多い。ヨーロッパに行くと、水で肌が荒れたりすることもありますが、水できれいになるという感覚はないかもしれません。

また欧米では、日本製化粧品の完成品である『モノ』への信頼は非常に高いですが、スキンケアの手技や工程を評価されているかと言われると少し別、という気がしています。フランスでは日本のスキンケアを『レイヤリング』ぶと呼ぶそうです。層を剥がすようにメイク落としでメイクや汚れを落とし、さらに洗顔をし、今度は化粧水や美容液、クリームなど何層も重ねていく様子を見て、そう呼んでいるようです。丁寧だという認識はあるようですが、もはや『神がかっている』という感覚で浸透はしておらず、自分たちなりのスキンケアの中に日本製品を取り入れているという感じです。

それに加えて、日本は高齢化社会であるのに対し、アジア圏は平均年齢が若いといった、国民構成比や気候の違いもあるため、日本製品をそのまま海外に持っていってもマッチングしません。現在の日本ではそれほど問題になっていない大気汚染も、中国などでは深刻な問題となっています。空気で肌が荒れるということもあるため、化粧品のスペックに求めるニーズの違いにも注意が必要になります。多くのメーカーさんは、こうしたことはすでによく研究されていますが、国別に開発をするというのは基本ですね」

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化粧品の「パーソナライズ」化がトレンド

――奈部川様の講演の中で、これまで化粧品が年齢でカテゴライズされていたものがどんどんボーダーレス化し、個々人の悩みに応じて『パーソナライズ』された商品の提供(=価値の提供)で絞り込む流れになるというお話について、研究会来場者の関心はかなり高かったようです。

奈部川様「私が『パーソナライズ』という言葉を使い始めたのは2年前くらいからでしょうか。当時この言葉は海外ではグローバルトレンドとして取り入れられていましたが、日本ではまだなじみがありませんでした。ところが昨年秋頃から急激に日本国内でもパーソナライズ化粧品が増えはじめたのです。
市場が飽和状態の中、消費者が求めるのはいかに自分にマッチングするかです。消費者のニーズを満たすためには『私にぴったり』を見つけてもらう必要がありますが、『自分にとってのぴったりが分からない』『どれが何に効くのか分からない」などが本音ではないでしょうか。そこで一人ひとりの好みに合わせた商品を提供できるサービスが求められています。

最近ではパッケージも、たとえばガーリー(Girly:女の子らしい)なものとシンプルなものの2パターン用意し見た目のパーソナライズを図ったり、ファンデーションの色数を増やして(一人ひとりに)ジャストフィットな色を用意したりするなど『自分にぴったり』を提供する化粧品メーカーが増えています」

「自分にぴったりの満足感」という価値をいかに発信できるかが課題に

奈部川様「『パーソナライズ』とはいえ、“オーダーメイド“のトレンドがくるというわけではありません。“私にぴったり合わせてくれる”『満足感』という価値を、メーカー側がいかに発信できるかが課題だと思います。

例えば、20~30代向けの新しい切り口として、老化予測ができるようになってきています。肌診断のようなものですが、今トラブルはなくとも、肌タイプや持っている素因子から今後のトラブルを予測し、そのトラブルに合った化粧品を使いましょうと提案するサービスです。これも一つの新しい流れだと思いますし、『個』に合わせたサービスと言えると思います。

また、一つのコスメで色んなことが完結するという『オールインワン』が流行っていますが、その一つ一つがパーソナライズされており、バシッと合っていないと、消費者の満足感は得られません。以前は使うアイテム数が多く、それぞれの使用量や使用する部位の使い分けなどで調整できていたものが、『Simple is best.』でシンプルケアが好まれる時代では、ステップが少なくなった分、本人に合っていないとより満足感は少なくなってしまいます。

アメリカでは『オーダーメイドシャンプー』が人気です。『パーソナライズ』×『マッチング』というのでしょうか。髪は人それぞれ白髪だったり、抜け毛だったり、髪の染めすぎだったりとトラブルはさまざまですし、持って生まれた髪質と後天的なトラブルの掛け合わせもあり、複雑な悩みが多いところです。これは個人へのマッチングというところで、流行しています。
他に、欧米ではファンデーションの色を『個』に合わせるというサービスが人気です。今後日本でもトレンドになるかもしれません」

「化粧品のパーソナライズ化」による「ペルソナ」について

――化粧品がボーダーレス、カテゴリーレスになる中で、今後“価値観から把握する”「ペルソナ」というものが重要になってくるのではないかと感じたのですが、この点、いかがでしょうか。

奈部川様「時代は『ボーダーレス』です。エネルギー業界やエンタメ業界など、昔ははっきりとサービスが分かれていたものが、今は垣根がなくなってきています。化粧品の分野でも同様で、昔はメイクとスキンケアが分かれていましたが、ここ1年くらいでメイクとスキンケアが重なるような、新しい価値を提供する化粧品が出てきています。分かりやすい例で言うと、マスカラと養毛剤が一緒になった商品や、ほんのり色はつくけどケアもできるといったメイクとスキンケアをブリッジする商品。トーンアップクリームなどもいい例で、ファンデーションよりもスキンケア寄りで、下地なのか、日焼け止めなのか、BBクリームなのか分からない、といったように、カテゴリー分類が非常に難しくなっています。

使う人によって目的が変わってくるため、今までの枠組みの価値観を外して、使う消費者が使い方や目的を選ぶ時代になってきていると言えます。つまり、複数の目的を果たす『マルチパーパス』なモノ(商品)であるがゆえに、メーカー側がお客さんを規定することができなくなってきているのです。イコール、ペルソナもくくれないということです。

高齢者の方は目的別の商品を好みますが、多くの方はすでにマルチパーパス的な商品を自由に使いこなすようになっており、特に若い方は簡単にアレンジができてしまいます。ステップを踏んだスキンケアというのを知らないまま、オールインワンが当たり前の中で化粧品に触れてきているので、マルチパーパスをすっと受け入れてしまっているのです。
個人的には化粧品とペルソナの関係性というのは難しくなってきているのではないかと感じています」

今後の共同印刷の取り組みに対して期待する2つのこと

――今後、共同印刷の取り組みに対して期待することなどがありましたら、ぜひ教えてください。

1.複数の企業が力を合わせて事業機会を創出できる「プラットフォーム」に

奈部川様「プラットフォームになれるといいですよね。各社の営業や販売の部分でどのように事業機会を創出できるかが課題だと思います。一社一社ではむずかしいことも、何社か集まればできるというような機会を設けてみる。例えば、展示会などはいい例だと思いますが、何社か集まって、多くの企業にとって関心が高いであろう『輸出関係』という切り口で展示会に出展してみるのもニーズはあるような気がします。
また、現地のマッチングや現地法人との橋渡しを行い、現地での販促手段を確立できるといいと思います。複数の企業が力を合わせて事業機会を創出できるようなプラットフォームになるということですね」

2.販促手段の分析・効果検証にニーズあり

奈部川様「どのような手段で情報拡散していくか、ということは化粧品会社の永遠の課題です。今、Instagram などを活用したSNSマーケティングが人気ですが、『Instagramは効果が出る』など、販促手段の分析・効果検証などを行うことは十分ニーズがあるのではないかと思います。
また担当者は、広告代理店などから日々、さまざまな商品を売り込まれる中で、情報の取捨選択がむずかしい状態にありますので、販促手段の情報を整理して可視化することは有効だと思います。正しい販促費の使い方を常にアップデートできている状態というのも、ニーズはとてもあると思います」

編集後記:
グローバルな視点でのお話はとても興味深く、今後のビジネスモデルを考える上でとても勉強になりました。
消費者のライフスタイルの変化に伴い、化粧品などの日用品に求められるニーズはどんどん複雑に変化しています。その変化に対し、どのような顧客コミュニケーションで、いかに継続的に需要を喚起し続けることができるのか、今後も奈部川さんのお力をお借りしながら、新しいソリューションを追求していきたいと思います。

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美容ジャーナリスト/美容アナリスト 奈部川貴子

株式会社ベイズガーデン代表。
化粧品をはじめ、エステティック、SPA、ダイエット、健康および美容医療など、美容全般に精通。女性誌においては、深く掘り下げる独自の視点で取材を重ね、最先端のスキンケア事情をとてもわかりやすく記事にすると高い評価を得る。
女性誌・化粧品広告・Webサイト等の制作経験とビューティビジネスのコンサルティング経験を活かすべく、2001年に美にまつわる制作会社ベイズガーデンを設立。 2017年3月、11月に開催した共同印刷主催のビジネスモデル研究会にて、キーノートスピーカーとして講演いただいた。

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