「デジタルツイン」という言葉を聞いたことはありますか?
デジタルツインは、近年になって製造業界隈を中心に認知度を高めつつあるキーワードですが、遠からずマーケティングの世界にも活用される可能性があります。

この記事では、「デジタルツインとは何なのか」ということについて概観したうえで、近未来におけるマーケティング分野への展開について思いを馳せてみましょう。

そもそもデジタルツインとは?

「デジタルツイン(Digital Twin)」とは、ひとことでいうなら、何らかの事物をデジタル的に再現した「デジタルの双子」です。例えば、自動車や飛行機などの製品、あるいは工場や大規模なプラントといった物理世界の対象事物の状態を、デジタル世界上にリアルに再現したものなどです。

デジタルツインはIoT機器から送られてくるセンサーデータといったものをもとに構築され、実際の対象物と寸分違わぬ動作をします。デジタルツインを活用することで、製品の故障予測や工場の機器の制御などが容易になるといわれていて、GE(General Electric Company)をはじめとした数々の企業において導入が始まっています。

デジタルツインの活用シーン

デジタルツインはさまざまな分野において有効に活用できる可能性がありますが、2017年現時点では製造業を中心に話題を集めているようです。

製造業における活用の具体例としては、工場内の機械から送られてくるセンサーデータをもとに実際の工場の様子をリアルに再現した「工場のクローンモデル」の構築を挙げることができるでしょう。大規模な工場では、複数の機械を使って製品を生産しています。機械が故障して生産ラインがストップすると多大な損害が発生しかねないため、工場においては設備のメンテナンスが非常に重要な課題となります。しかし、いくつもの機械を常に最適の状態にメンテナンスするのは簡単なことではありません。
デジタルツインを構築してシステム上でシミュレーションを行えば、機械の故障時期を予測したり、より効率のよい生産ラインの動かし方を調べたりすることが可能となります。

このほか、航空機のデジタルツインを構築してメンテナンスに役立てたり、レーシングカーのエンジンの状態把握のためにデジタルツインを活用したりする事例も見られます。

マーケティングにおけるデジタルツインの活用

このような事例を読むと、「デジタルツインは工業分野で活用されるもの」という印象を持たれるかもしれませんが、実をいうとデジタルツインをマーケティングの世界に活用しようという動きもあるのです。

近年になって、SNSのデータやWeb上でのユーザの行動履歴といったビッグデータをマーケティングに活用する動きが活発化してきています。こうしたデータをうまく集め、CRM上のデータと連携させてターゲット顧客のモデルをデジタル的に再現し、顧客行動の予測やシミュレーションに役立てることは十分可能に思えます。

現時点では「デジタルツイン」という言葉で表現されていないにせよ、既にそのような分析手法を用いている企業もおそらくあるでしょう。

米国では、マーク・サーガル博士が「Baby X」というプロジェクトを進めています。
このプロジェクトは、人間の赤ちゃんのモデルをデジタル上でリアルに再現しようというものですが、ゆくゆくはこうした技術を応用して、ターゲット顧客のペルソナをリアルなデジタルツインで構築するようなことも可能となるのではないでしょうか。

モニタ上のペルソナに「この商品のパッケージは何色がいいかな?」と質問すれば、「そうね、赤がいいんじゃない?」と即座に返事が返ってくる……そんな時代が訪れるのも、そう遠い日のことではないのかもしれません。

まとめ

人工知能やIoT技術の進歩により、データ分析やシミュレーションを取り巻く世界にはいまだかつてない大きなイノベーションが起こりつつあります。デジタルツインもそうした革新的な技術のなかのひとつだということができるでしょう。

マーケティング領域におけるデジタルツインの活用可能性は現時点ではまだまだ未知数ですが、「いずれ訪れるかもしれない未来像」として、心の片隅に留めておきたいですね。

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