今さら聞けない「英国EU離脱」。販促担当者が知っておくべき基本ポイント総まとめ!

6月23日に行われた英国の国民投票によるEU(欧州連合)離脱派の勝利は、英国のみならず世界の金融経済を震撼させました。今回のベルリンの壁崩壊以来の衝撃といわれる英国EU離脱を受け、今後予想される貿易問題をはじめ、販促担当者が戦略を練るうえで知っておくべきポイントについて英国現地からのレポートです。

EU離脱のメリットとデメリット

まずは英国のEU離脱に伴い、現在懸念されているメリットとデメリットを見てみましょう。

■英国内におけるEU離脱のメリット

目玉となった離脱のメリットは、 ボリス・ジョンソン前ロンドン市長をはじめとしたEU離脱派が主張した、「EUに払っている週あたり3億5000万ポンドの予算をNHS(国民保険サービス)に回す」という公約。高齢者や低所得者などを中心とした層に支持され、根拠のない数字として財務省特別委員会が異論を唱えたものの、離脱派の勢いは衰えることはありませんでした。 
その他、自国のことは自国で決めるEUに縛られない自由貿易、大量の移民による英国国民の雇用不足の解消、社会保障支出の削減による財政負担の減少、難民流入による社会不安とテロへの恐怖がもたらした安全保障問題の改善、などがメリットとして挙げられています。 

■英国内におけるEU離脱のデメリット

逆にデメリットについて整理します。EUという「単一市場」へのアクセスを失う可能性が高く、英国は各国と貿易協定を締結し直すことになります。その際EU離脱のペナルティ、およびEU残留国への見せしめとして高い関税をかけられる可能性が高く、食料品や生活必需品の多くを輸入に頼っている英国経済はそれらの値上がりの結果、消費の大幅減退という大打撃を受けることは間違いありません。 

EU離脱により、これまで英国を拠点としてきた金融業や製造業が同国を離れ、フランクフルトなど他国の主要都市に新たな拠点を設ける動きが出るでしょう。こうした海外現地法人の英国撤退が相次ぐことが懸念されてはいるものの、英国のGDPに占める製造業の割合は約10%であり、建設業やサービス業などの内需の約90%と比較すると、製造業撤退の影響は大きくはないと言う見方もあります。ポンド安によって、英国から大陸ヨーロッパやその他地域への輸出は有利になること、また2020年までに現行の20%から18%に引き下げる方針の法人税をさらに引き下げることによって、海外現地法人の引き揚げを最小限に留めることができるかもしれません。 

英国への直接投資の減少とロンドンを中心とする金融ハブとしての機能低下によって、英国の国際収支は大幅に減退しポンド暴落を招き、これらがもたらす経済悪化と失業者増加が不安視されています。しかし、金融インフラ喪失の懸念については、EU非加盟国であるスイスとノルウェーを参考にしてみるとその影響は少ないとの見解もあり、国際金融ハブとして英国がこれまで築き上げた金融仲介や資産運用の知識は、EU離脱後も簡単には消滅しないと考えられています。 

また、昨年の国民投票で一度は収まったスコットランドの独立機運が高まり、北アイルランド、ウェールズにまで独立の波紋を広げる可能性も案じられています。

日本におけるEU離脱のメリットとデメリット

つづいて日本における英国のEU離脱のメリットとデメリットを見てみましょう。

■日本における英国EU離脱のメリット

ポンド安・ユーロ安になるため、海外旅行に行きやすくなり、また円高還元セールなどがすでに行われていますが英国製品や欧州からの輸入品が安くなります。しかし、輸入品が安くなると、国産品の売り上げも落ちるという側面も見落とすことはできません。 

■日本や他国における英国EU離脱のデメリット

世界通貨のバランスが崩れて経済に悪影響を与える結果、リスクオフで円が買われ、さらに日本の株価も下がるため、英国に会社や工場を持つ現地法人も影響を受けます。EU内でドイツに次ぐ2位の経済国であるイギリスの離脱によりユーロの価値も下がり、ユーロ圏と取引していた国が連鎖的に経済的ダメージを受け残留国にそのしわ寄せがいき、特にEU経済トップのドイツに一気に負担がかかると予想され、EU離脱ドミノが起こる可能性も否めません。 
さらに、円高により海外からの日本への旅行客減少が見込まれ、インバウンド需要等が高まりつつあった現在の日本経済においてこの影響は打撃です。

EU離脱後のEU諸国との新協定とは

国民投票の翌朝、デーヴィッド・キャメロン前首相がEU離脱の責任を取り首相辞任を表明し、7月13日に「氷の女王」「オシャレ番長」の異名を持つテリーザ・メイが、マーガレット・サッチャー以来の女性首相として、第76代英国首相に就任しました。 
英国の交渉方針が決定する年内に、離脱条件が定められたリスボン協定第50条が行使されると見られていますが、第50条を発動させた国は他の全加盟国の同意がないと再加盟ができません。メイ新首相のもと英政府の関係省庁や英議会は、40年間積み上げてきたEU法から英国を除外し、EUの法律や規制を英国法に取りこんでいくことになります。第50条発動後交渉期間2年間で貿易における新協定を終結せねばなりませんが、EU理事会などの手続きや貿易協定の仕切り直しなどの複雑な過程を経ることになり、離脱後の新体制の全貌が明らかになるまでには実際にはさらに長い時間がかかると言われています。 

また、7月26日にテレーザ・メイ英首相は、安倍首相をはじめとする各国首脳との電話による会談を行いました。会談では防衛や経済上での日英関係を深めながら、世界のさまざまな問題における日英協力の重要性についての話し合いがなされました。メイ首相は、ソフトバンクのARMホールディングス買収が、英国でビジネスを行うことへの信任表明を反映しており、英国が日本の対英投資を重視していることを強調しました。

EU離脱における各企業の懸念について

英国内での混乱がまだまだ続く中、マーケティング戦略を組み立てる上で、どのような点に留意すべきでしょうか? 

EU圏内に多数拠点を持ち、フランスに本社を置く食品系企業勤務の在英邦人駐在員Oさんは、EU離脱後の懸案事項を2つ挙げています。 

  • ヨーロッパから原料等を輸入しているため、原料費等の高騰
  • ポンドが弱くなっているため、本社に対する売上額の目減り

今年度分はリスク回避済みですが、来年度以降に関しては政府のEUとの交渉結果を注視しながら動いていくことになるそうです。 

Oさんの場合はほぼローカル採用に近く、日本との商業上のつながりは少ないそうですが、日本企業がイギリスや欧州で今後貿易やマーケティングを行っていく上で、知っておくべきポイントでしょう。 

英国のEU離脱ショックを受けた急速な円高を背景に、特に日本の輸出企業は業績への大きな影響が懸念されています。販促担当者は、今回の英国EU離脱の騒動を対岸の火事とせず、引き続き英国とEUの動向を踏まえた上で、自社のマーケティング戦略を長期的に検討することが求められてくるでしょう。

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