「ニューヨーク」と聞いて何を思い浮かべますか?きっと多くの人は、キラキラ輝くボールが巨大電光掲示板の上に落ちる、大晦日恒例のタイムズスクエアでのカウントダウンを思い浮かべるのではないでしょうか?観光に力を入れているニューヨーク市では、ここ数年でさまざまなデジタルプロジェクトが進んでおり、同時にアウト・オブ・ホームと呼ばれるデジタル掲示板がここ数年で急速に普及しました。今回はニューヨーク市の最近のデジタルインフラ事情に加え、アウト・オブ・ホームのメッカであるタイムズスクエアのプロモーション事例をご紹介します。

スマート化を推進する市にできた新しいものとは?

スマート化を着々と進めているニューヨーク。スマートフォンの普及で不要になった7,500以上の公衆電話を、「高速コミュニケーションハブ」となるキオスクに置き換える「Link NYC」プロジェクトが、今年2月よりベータ版として始動しました(https://www.link.nyc/)。このキオスクでは、無料Wi-Fiホットスポットとして高速インターネットへアクセスができるほか、緊急通報用番号911への連絡、市の情報案内番号311の利用や、USBケーブルによる端末機の充電などのサービスをうけることできます。今後は、内蔵されているインタラクティブスクリーンから国内無料通話や市内の観光情報までアクセスできるようになる予定だそう。

このLink NYCの仕掛け人は、市とCity Bridgeを筆頭に結成された企業グループ。実は、このプロジェクトに税金は一切使われず、すべて企業からの広告費で成り立っているそうで、Adweekによると、今後12年間でニューヨーク市が得る利益は推定5億ドルというから驚き。Link NYCのサイトでは、キオスクに登録されたスマートフォンから、性別や年齢、その他の属性に関する情報を、個人を特定せずに集め、それに基づいた関連性のある広告をタイムリーに表示することができるため、マーケッターにとってこのキオスクは顧客プロフィールを得るのにもすごく役立つとも言及しています。

もう地下鉄で困らない!駅のイメージを変えたツールとは?

一昔前までは、暗い・汚いの代名詞であったニューヨークの地下鉄でも、着々とスマート化が進んでいます。On the Go Travel Networkという、駅の中に設置されたタッチスクリーンでは、路線の運行状況や、行き先を入力して効率のいい乗り継ぎ方法を確認することができます。日本と違い24時間運行するニューヨークの地下鉄は、工事やシグナルの問題で急に路線が変わったり、遅延したりすることも日常茶飯事。車内アナウンスも早くて聞き取りづらいため、英語のわからない観光客にとっては何が起こっているのかわからず、パニックになることも。そんな時も、On the Go Travel Networkで瞬時に周辺の路線状況を表示することで、混乱を防ぐことができます。

メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティー(MTAと呼ばれる、ニューヨーク州の鉄道やバスなどの公共輸送を運営する独立法人)によると、現在ではブロンクス、ブルックリン、マンハッタン、クイーンズの30駅以上 (140スクリーン)にOn the Go Travel Networkが設置されており、今後も急ピッチで増設される予定です。約140万人以上が毎日使う地下鉄は、各企業にとっても絶好のマーケティングチャンス。このタッチスクリーンの待ち受け画面は広告としても機能しており、各駅を利用する人の人種、年収レベルなどの細かいプロフィールを分析しながら、関連のあるビデオ広告も流すことができるのです。

2015年のデジタルアウトオブホームアワード受賞キャンペーンとは?

Screen Media Dailyによると、2015年第3四半期時点で、22四半期連続でアウト・オブ・ホーム広告費は右肩上がりに伸びているそうです。

ニューヨークのアウト・オブ・ホームのメッカといえば「タイムズスクエア」。多くのブロードウェイミュージカルの劇場やチェーン店がひしめくこの場所は、各ブランドが観光客をターゲットに、さまざまな手法のプロモーションを実施する最高のプラットフォームになっています。各社さまざまな工夫を凝らした魅力的なディスプレイに、いつもは脇目も振らず早足でせかせか歩いている筆者もついつい上を見ながら歩いてしまうほどです。

そんな激戦区の中で、見事に2015年のデジタル・アウト・オブ・ホームアワードに選ばれたのが、Googleのアンドロイド「Androidify」キャンペーン。このキャンペーンでは、事前にアンドロイドのホームページで自分のアバターを作成・登録すれば、タイムズスクエアの特設スクリーンに自分のアバターを投影させることができます。また、スクリーンの前に立つと自分のアバターを呼び起こし、自分の動きとアバターの動きが連動するという仕組みになっている、近未来的なプロモーションです。

そのプロモーション手法と併せて話題になったのが、スクリーンサイズ。Time.comによると、ブロードウェイと45丁目に現れたのは、北米最大といわれる2万5千スクエアフィート(約2300平方メートル)の巨大デジタルスクリーン。ここに2万5千以上のアンドロイドキャラクターを映すというから、スケールの大きいこと!まさに、タイムズスクエアという立地を上手く使ったプロモーションの例です。

消費者が、「今すぐ」に何でもアクセスできる環境が当たり前になった時代。ニューヨーク市のデジタルインフラ整備が着々と整っていく中で、企業はスマートフォン経由でどんどん個人の属性や嗜好を瞬時に把握し、ロケーション機能を使って行動パターンまで読み解くことで、フレキシブルにマーケティングを展開していくことが可能になりました。さまざまな国からタイムズスクエアに訪れる人たちに対し、今後どのようなアウト・オブ・ホームプロモーションが出てくるのか目が離せません!

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