おむつも替えられない、家のことを何もしない、仕事だけで子育てにもあまりかかわらない。実は数年前まではこれがアメリカの典型的な「パパ」像でした。ところがここ数年で「ミレニアル世代」とよばれる1980~2000年頃に生まれた世代が結婚し、子どもが生まれたことで大きく社会が変わり、消費トレンドや「ミレニアルパパ」をターゲットにした独自のマーケティングキャンペーンが展開されています。今回は他の世代とは違った家庭観を持つミレニアルパパの実態に迫り、そこからプロモーション戦略のヒントを見つけていきましょう。

Millennial Marketing社によるとミレニアル世代は現在アメリカで約25%の人口を占め、そのうち、53%に子どもがいます。(ちなみに日本では2013年現在でミレニアル世代は人口のおよそ19%です。)この世代は自分と同じ学歴を持つ女性と結婚する傾向が多く、それが共働きや主夫の増加という家族構成につながっています。

Pew Researchによると、アメリカにおける共働きの割合は2012年では全体の60%となっています。全体の62%が共働きで子どもを育てることが理想と答えており、1965年時点と比べると父親と母親の仕事・家事・育児のバランスが近づいてきていることがグラフからもわかります。バリバリと仕事をする女性を妻に持つことで、その分家事や子育ても平等になっていき、子どもへの関わり合いやお金のかけ方も他の世代と比較して特徴があるのが「ミレニアルパパ」なのです。

特徴1:パパは一緒に買い物したいし、自分で決めたい。

Mintelのリサーチによると、80%のミレニアルパパは食料品の買出しは自分でするか、家族と一緒に行うようです。ママが書いた買い物リストを手にスーパーをうろつく姿はもう昔の話。今は買いたいものを自分で厳選し、購入するのが典型的なパパの消費行動パターンです。さて、このパパの買い物リストにあなたの会社の商品を載せるにはどうしたらよいでしょうか?子育てを重要視しているミレニアルパパのハートを射止めるには、まずパパの役割が家族にとってどれだけ重要かということを認識させ、賞賛するようなブランドメッセージを送ることが重要なポイントとなります。

ある朝のニューヨーク。このトレンドを象徴するかのようなコマーシャルがニュース番組で放映されていました。風邪で真っ赤になった鼻をティッシュで押さえながら、涙目でドアを開ける白人男性。「デーブ、話の邪魔をして大変申し訳ないのだが…明日病欠させてください…」オフィスにいるのかと思いきや、彼の目の前にいるのは無邪気に笑い、飛び跳ねる赤ちゃんの姿。「Dads don’t take sick days(お父さんは病欠をとりません)」のコピーで終わる風邪薬「Nyquil」のコマーシャルはまさにこのミレニアルパパの家族観とぴったりマッチしています。婉曲な表現を使わずにストレートにメインポイントを短く、おもしろく伝えていることでターゲットになるパパたちへしっかりとリーチしています。

また、パパが子育てに関わっていることを強調する広告はママへの好感度もアップすることがアンケート調査からも明らかになっています。

特徴2:「価格」より「質」が大事。ブランドは自分のアイデンティティの一部

子どもをもつとさまざまな出費が重なり、懐がさびしくなるもの。しかし、ミレニアルパパの買い物は違います。「家族のためならちょっと高くてもいいものを選びたい」「自分の価値観と合うブランドの商品を選びたい」という考え方のもとに購入を決定します。従来はファミリー向けの販促方法の一つとしてクーポンを使う戦略が多かったのですが、これはミレニアルパパには逆効果。BrandSpark International社のアンケートでは34%のパパがクーポンをオンラインやレジで使うと安っぽくみられるのではないかと危惧しています。

自分の愛用するブランドを自分のアイデンティティの一部と考えるのもミレニアルパパの特徴。「共感性」「信頼性」がキーワードです。その成功例として「パパ」であることを幸せに思う気持ちを見事に表現し共感するブランドストーリーを作り上げ話題になった広告といえば、Uniliver のDove Mens+Careの「Real Strength」キャンペーン。親になれば誰でも経験するありふれた子どもとの風景が美しく描写されていて、思わず涙腺がゆるくなります。また、このキャンペーンが成功したのはコマーシャルだけでは終わらずに#Real Strength をつけて、ツイッターやインスタグラム、フェイスブックなどで消費者との会話を広げていったことにも起因しています。消費者が自分の意見を言えるSNSのプラットフォームでディスカッションをさせた結果、人々の印象に強く残り、Doveブランドのファンになっていくという好循環を作りだしました。

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特徴3:家族の時間が一番大事。子どもの時間の使い方にもこだわります!

Mintel社の調査によると、ミレニアルパパの49%が子どものプレイデート(親同士が約束して決まった時間に子ども達を遊ばせること)のスケジュールを決めたり、外に出かける予定を積極的に立てるそうです。一世代前の割合と比べると26%上昇しています。子どものアクティビティにお金を惜しまないミレニアルパパ。パパ向けに子どもと一緒にできるアクティビティ案を商品とリンクさせてSNSに投稿するという手もありです!

特徴4:ママよりもハイテク。バーチャルグッズや体験にお金をかけるのが好き

Ipsos MediaCT社の調査によるとミレニアルパパは子どもと一緒にオンラインビデオを見る割合がママより高く(74%パパvs 58%ママ)また53%のパパが子どもと一緒にみるオンラインビデオに没頭してしまうと回答しています。子どもに関わるゲームやテレビ番組やアプリなどのダウンロードコンテンツについては、パパがクレジットカードで買い物する傾向が高いことも判りました(68%パパvs 56%ママ)ビデオゲームで育ったミレニアル世代の背景がこのトレンドを象徴しているかのようです。マーケティング戦略として、パパと子どもが興味をそそり何度も見たくなるようなビデオコンテンツ作りが重要になってきます。

世界トレンドとして関心の高まるミレニアル世代。他の世代とは一味違う独特の価値観を持つこのグループの消費トレンドやマーケティング戦略はアメリカだけにとどまるものではありません。日本においても共働き率が高まっているなど、同じような社会的変化は起きており、日本のミレニアル世代へのマーケティングや販促施策においても今後さらに意識を研ぎ澄ませて戦略を立案していく必要があります。

参考サイト

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