ネットからリアルへと送客をするO2O(Online to Offline)が、中国でも急速に普及しています。2014年のO2O市場規模は約378億ドル、2015年には、1月から4月の間だけで10,000個のO2Oアプリ・製品が誕生しました。どんなサービスにO2Oが活用されているのか、その事例をみてみましょう。

中国でも活用の場が広がるO2O! フードデリバリーや美容サービスにも

1.フードデリバリー

中国では、これまでにもマクドナルドやKFCなどのファーストフード宅配サービスがありましたが、最近では数万店のレストランから出前を注文できるアプリが登場し、マーケットを席捲しています。消費者は、特定のレストランでしか注文できないアプリより、地元の小さなレストランまで網羅するアプリを使う可能性が高いことが、こうした出前アプリにとって優位に働いています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、出前アプリによる売上高は、2013年には約100億ドルでしたが、2015年には200億ドルを超す見込みです。

2.タクシー

交通渋滞が深刻な中国では、特に通勤時間帯や雨の日にタクシーをつかまえるのは至難の業。それを商機にしたのが、O2Oの配車サービスです。運転手は、今どこに顧客がいるのか、どこに行きたがっているのかを把握できるので、効率よく車を走らせることが可能です。配車アプリのユーザー数は、2013年から2015年の2年間で3倍以上の4,5000万人にまで増加。その成功ぶりがうかがえます。

3.教育関連

教育熱の高い中国で、急成長しているのがインターネットを使った教育関連サービス。ITを利用した教育サービス業界における資金調達は、この数年増加の一途をたどっており、2014年には前年比400%アップ、3億ドル超という過去最高額を記録しました。オンライン学習には、多数の受講者が入れる教室を用意する必要がない、教材の印刷費が削減できる、受講者の個別管理がしやすい、などメリットがあります。逆に、実技指導やグループ学習など、対面式のほうが適している内容もあるので、その部分は従来型の授業で補完する相互送客が中国で広く普及、既存の教育関連企業が、サービスの一部をオンラインに変更する動きも見られます。

4.美容関連サービス

美容とおしゃれに敏感な女性をターゲットにしたO2Oの美容サービスが注目されています。オンラインでネイルアートや、ヘアカットなどを予約し、自宅で施術を受ける仕組みです。実店舗に比べて営業費がかからないため、料金を安く設定できます。美容院の稼働率が60%と苦戦する中、大手美容サービスアプリ「Helijia」の受注件数は、1日あたり平均10,000件強。2013年に起業したベンチャー企業ですが、2015年にはシリーズCラウンドで5,000億ドルを調達、事業を拡大する見込みです。

5.不動産サービス

低迷する中国の不動産市場で、余剰物件を販売するためにO2Oが活用されています。不動産サービス業者は、ウェブサイトで物件を紹介し、物件の販売主やエージェントから売り上げのコミッションを得る仕組みで物件販売の促進を図っています。販売数で中国最大手のディベロッパー「China Vanke」では、ウェブサイトを通じて物件を販売するエージェントを募集したところ、西安市だけで20日以内に10,150人が登録、また、2011年に設立された不動産ウェブサイト「Fangdd」は、40都市に500,000人のエージェントを有しています。

オンラインとオフラインの距離を縮める

ここでご紹介したのは「オンラインからオフラインへ」ですが、消費者の行動には逆の流れもあります。つまり、リアル店舗で商品の実物を見たり、店員から説明を聞いたりした後、ネットショップで購買をする、というパターンです。

この「逆O2O」は、リアル店舗がショールームのような機能を果たすことから、「ショールーミング」と呼ばれています。消費者がショールーミングをする主な理由は、ネットショップのほうが同じ商品を安く買える場合が多いからです。

中国は、他国に比べてショールーミングの傾向が強く、リアル店舗にとっては売り上げを下げる脅威。そうした背景から、オンラインとオフラインの距離を縮め、リアル店舗に客足を戻す方法のひとつとして積極的にO2Oが活用されているといってよいでしょう。

【参考サイト】

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