これぞインスタ映え王道プロモーション!モノではなく夢を魅させる

2017年の流行語大賞にも輝いた「インスタ映え」。写真共有SNS“インスタグラム”でいかにおしゃれに見せるか、それを企業や商品のプロモーションで使うのはもう当たり前になっています。今回はその「インスタ映え」を徹底的に活用して、ターゲット層とつながる方法や企業プロモーションでさりげなく活用した事例をご紹介します!

売り切れ御免!20万人が待ち焦がれる美術館とは?

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ニューヨークからはじまり、ロスアンジェルス、サンフランシスコ、そしてマイアミと若者の間で知らない人はいない売り切れ御免の美術館。

その名も、「ミュージアム・オブ・アイスクリーム」。

名前の通り、アイスクリームの美術館です。「予告なしで5万枚のチケットが3日で完売!」「今もなお20万人が待機中」など、全米のミレニアル世代をとりこにしているホットな場所です。美術館に行くために、わざわざ飛行機に乗ってくる若者たちもいるようです。

前情報は「ピンクのビジュアル」というだけの謎に包まれた美術館。実際に、筆者がサンフランシスコのチケットを入手する際も大変苦労しました。前回の開催時から「待ち」登録をし、追加開催の発表を待ちます。オンライン販売開始時間からスタンバイしてアクセスし、待たされること50分。すでに半数以上の日程が販売終了していました。

さて「この美術館」いったい何なのでしょうか?いわゆる一般的な美術品が置いてあるわけではなく、特定ブランドのアイスクリーム新製品をPRする店舗でもないようです。スポンサー企業名も冠に掲げておらず、ありきたりなイベントスペース、というわけでもないのです。

美術館の情報によると、『誰もが皆大好きで、子供時代に夢見た、アイスクリームがいっぱいの世界(アイデア)を実際に体現したアート空間』だそうです。

※ミレニアル世代とは、1980年代から2000年前後に生まれた世代のこと

全米ミレニアル世代をそこまで惹きつける理由は?

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ずばり①「インスタ映え」するから、②「神出鬼没的な特別感」があるからです。さらに、③「アイスクリーム」という嫌いな人がほぼいないと思われる、誰もが共感(SNS共有)しやすい「安全な」テーマであるからです。

「ミュージアム・オブ・アイスクリーム」を一言でいうと、インスタグラム用の撮影スタジオ兼遊園地なのです。ターゲット層である若者達が、インスタグラムで共有するためのコンセプトを徹底しています。インスタユーザにとって、とにかく写真映えするカラフルさやキレイさ、そして自分は「希少価値の高いチケットがとれた」という自尊心をくすぐる特別感、さらにアイスクリームが嫌いな人はほとんどいないよね、といった安心感があることなどが有効に働いています。

そして、あくまでも美術館という設定なのがポイントです。またミレニアル世代が好む、「ミレニアルピンク」で美術館全体の統一感をもたせているのも、インスタ映えする理由です。

では、誰が何のために作ったのか?

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一言でいうと、それは「謎」です。少なくとも美術館の成功は、ターゲット層にそういった裏事情を考えさせないことがポイントになっているのではないでしょうか。

というのも、正式にはいわゆるスポンサー企業がどこで、提供されるアイスクリームの商品やブランドが何であるかの情報は公表されていません。美術館がメインですから、裏のビジネス事情は謎に包まれているように見せているのです。その点は「有名アトラクションリゾート」的なアプローチと似ているかもしれません。美術館そのものの体験型コンテンツやそのブランド価値を全面に出し、それらを裏で支えるスポンサーなどは付属的なもので、行ってみて「たまたま目にする」程度の見せ方をしているのです。

そこがまた、ミレニアル世代にうまく受け入れられた理由の一つとも言われています。目的が『ターゲット層に自ら積極的に話題にしてもらい、ポジティブにつながる機会を得る」ものと仮定するならば、企業名や商品名、お金の流れは徹底的に隠してもいいのです。

純粋に美術館だとすれば、特に企業プロモーションは関係ないかもしれません。入場料に関しても、一律38ドルと45分程度の体験型空間としてはやや割高な値段設定ですから、十分に利益が出るように思います。(参考:サンフランシスコの近代美術館の入場は25ドル)
実際に行ってみてわかったのは、プロモーションとして地元の中小アイスクリームブランドや、ショップの商品がコーナーごとに提供されており、協賛企業を募って運営されているということです。美術館の案内員(有名アトラクションリゾートにいるような、アトラクション説明や誘導をするお兄さん・お姉さん)によると、「都市ごと」や「一定期間」で、提供するアイスクリームやスィーツもかわる仕組みなのでリピーターも楽しめる、とのことでした。一巡すると全部で5−6種類のアイスクリームや綿菓子をもらえたので、実は相当数の企業が関わっていることになります。

企業プロモーションとして学べることは?

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このアイスクリーム美術館の仕組みから学べることは2つあります。1つは、「徹底したインスタグラムユーザー・ファースト」戦略です。インスタグラムにおける「楽しく」て「美しく」て「キレイ」な非日常と、自慢したくなる特別感。ターゲットのニーズや想定されるアクションから、受け入れられるものを徹底して作り上げることが重要です。共有される空間の「コンセプト」や「ストーリー」を、しっかり練り込んでぶれないようにするのです。単一企業や商品のプロモーションをする際には、インスタ目線でそういった「空間」や「コンセプト」をまず徹底的に作り上げる、ということを検討して見るのも良いでしょう。

2つ目は、「マルチスポンサーシップ」のあり方です。この美術館の場合、単体ではブランディングやプロモーションできない、いわゆる中小サイズのアイスクリーム店舗、ブランドなどをまとめ、スポンサーにする機会を与えています。しかも企業名や冠スポンサーなどのわかりやすい形ではなく、あくまで商品提供という形でコンテンツ(この場合美術館)を支援しているのです。オリンピックを控えた日本にもこの美術館が来る可能性は十分あります。「インスタ映え」を狙いつつ、「同業他社」が一つとなり、地域や業界全体で新たな「コンセプト空間創設」も検討の余地があるかも知れません。

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