小売店の販促においては、もはや常套手段ともいえる「折り込みチラシ」。もともとはエリアマーケティングの思想から出てきた来店誘引施策のひとつで、エリア内の見込み顧客を店舗に引き付けるのに高い効果を発揮します。

スマートフォンの普及が進むにつれて、折り込みチラシを取り巻く状況にもさまざまな変化が起こりつつあります。この記事では、スマホ時代の折り込みチラシ活用について考えてみましょう。

スマホやタブレットでチラシを閲覧

折り込みチラシは本来紙に印刷され、文字通り新聞に「折り込まれる」形で配布されるものですが、最近はこうした折り込みチラシを、PCやスマホ、タブレットなどで閲覧させるサービスが増えてきており、折り込みチラシは折り込みチラシとして従来どおり配布したうえで、電子化したチラシを自社のWebサイトやアプリなどからダウンロードできるようなサービスを提供しているサイトをしばしば見かけます。

こうした手法を取ることで、新聞を定期購読していない層の顧客やチラシ配布エリア外の見込み顧客にアプローチすることが可能です。自社Webサイトからのダウンロードだけでなく、「トクバイ」(※1)のようなサードパーティー製のチラシアプリにチラシを掲載することで、より広い層への拡散を狙うこともできるでしょう。

また、電子化したチラシには、画像の拡大やオンラインショップへの送客といったさまざまな機能を搭載することができるため、紙のチラシにない新たな可能性を追求することもできそうです。

スマホとの連動でダイナミックなコンテンツを提供

一方で、折り込みチラシとスマホを連動させることで、より表現力の高いメッセージを顧客に届けるような試みも進んでいます。例えば、チラシに印刷されたバーコードをスマホで読み取らせて動画のようなコンテンツを表示させたり、すぐに結果の分かる「抽選くじ」のような仕掛けを組み込んだりする事例があります。

動画は静的な文字や写真に比べて、多くの情報量を見る人に伝えることができます。飲食店なら新メニューのPR動画を流すのもよいですし、リラクゼーションサロンやエステといったサービスを提供するお店なら、店内の雰囲気を感じてもらえる動画を提供することで、来店ハードルを下げることもできそうです。

チラシに印刷したQRコードやシリアルナンバーをスマホで読み込ませて、くじの当たり判定ができるような仕組みもあります。リアルタイムに結果が分かるうえ、1枚ごとに異なるシリアルナンバーやバーコードを印字することが可能。シリアルナンバーを事前に管理しておけば、エリアごとの集客数や商圏分析、配布効果測定など、プロモーションの効果測定に大きく貢献します。

このように、紙のチラシとスマホを連携させることでチラシの魅力をより高め、レスポンス計測の行いやすさといったデジタルならではのメリットを取り込むことが可能です。

会員サービスと連携させてより高度なプロモーションを

なお、いわゆる会員サービスと折り込みチラシを組み合わせるのも、ありきたりのようでいて意外に効果的な手法です。ポイントカードのような会員サービスのシステムには、顧客の居住地や年齢、よく利用する店舗、購買履歴といったさまざまな情報が蓄積されています。これらの情報とエリアごとに配布されるチラシを組み合わせることで、より精度の高いエリアマーケティングを展開できる可能性があります。

例えば、紙のチラシにQRコード付きのクーポンを印刷し、クーポンを読み込むとスマホ内の会員向けアプリが起動するようにしておけば、チラシ経由で来店した顧客を会員情報と結び付けることができます。会員サービスで蓄積したデータをチラシ制作時の参考としたり、前出のくじ付きチラシのような仕組みを利用してチラシ側からインプットを得たりと、双方向でデータを収集・活用することができれば、データの持つ価値が何倍にも高まるでしょう。実店舗と併せてオンラインショップも運営しているのであれば、いわゆるO2O(オンライン・ツー・オフライン)施策の一貫として紙のチラシを組み込むのも面白そうです。

「新聞を読まない層」が増えていく?

以上、この記事ではスマホ時代の折り込みチラシ活用について、最近の事情を踏まえてお話しました。

近年、新聞の発行部数は減少の一途をたどっているといわれますが、これはそのまま折り込みチラシの配布部数の減少につながります。パソコンやスマホで手軽に情報を得られる現代において、紙の新聞を購読しない層は確実に増加していくことでしょう。こうした層にアプローチするため、折り込みチラシと併せてPCやスマホなどを活用したデジタルの販促施策にも力を入れていくことが望まれます。

とはいえ、現時点において折り込みチラシは依然効果のあるプロモーション手法のひとつであり、数年のうちに消えてなくなるというほど極端に衰退しているわけではありません。今はいわゆる「過渡期」であると心得て、折り込みチラシというアナログな手法とデジタル施策とをうまく組み合わせて、良い方法を模索していく時期なのかもしれませんね。

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