イタリアで一家に一台!?キッズタブレット「CLEMPAD」の大ヒットの背景を探る!

イタリア知育玩具マーケットを牽引している老舗おもちゃメーカーCLEMENTONI社。同社が販売するキッズタブレッド「CLEMPAD」は、今や、一家に一台、それどころか幼児一人につき一台と言われるほどイタリアっ子に大人気。なぜ爆発的なヒットにつながったのか?その理由を探ります。

■キッズタブレット「CLEMPAD」とは?

「CLEMPAD」は、CLEMENTONI社が長年扱ってきた知育玩具をもとにした知育アプリが約20種プリインストールされている、子ども向けのタブレット端末です。専用サイトClemstoreにアクセスすれば、子どもの年齢や趣味に合わせて他にも魅力的なアプリを無料ダウンロードできるようになっています。利用できるブラウザは「Planet CLEMENTONI」と限定されており、このブラウザを通してネット接続することで、独自ネットフィルターが機能。親は、セキュリティコードが必要な管理画面で接続範囲を設定したり、子どもがどのサイトにアクセスしたかを確認できるようになっています。

大手ショッピングサイトの消費者レビューを読むと、3歳以上のキッズタブレットとしては、豊富な知育アプリが搭載されていることや、安心できるコントロールシステムを搭載していることに対して高く評価しているコメントが目立っています。

(参考)
Amazonイタリアより

■イタリア人と歩んできたSAPIENTINOシリーズ

イタリアでも教育の現場にICTが導入されるなど、小さい頃からパソコンやモバイルに触れる環境が整いつつありますが、そうした追い風がこのキッズタブレットのヒットを後押ししています。

また、CLEMPADがキッズ向けタブレット市場において一人勝ち状態にあるのにはもうひとつ重要な要素があります。それは、そもそもこのアイテムが、50年来長く親しまれてきている知育玩具SAPIENTINOシリーズの延長線上に生まれた商品であるという点です。

1967年、SAPIENTINOは、就学前の子どもを対象とした知育ゲーム機として登場。2つの電子プラグで関連性のある絵を押さえると正解を告げる音が出るというとてもシンプルなゲームでしたが、これがヒットします。

以降、電子辞典の新シリーズを発売したり、イラストではなく実写を用いて歴史や地理を勉強できるようになるなど、学習要素を強めていきます。また、電子プラグから指でタッチする形態に、そしてペン一本で遊べるシリーズへと変化し、扱いやすくなった結果、これらが売れ筋商品になりました。

2005年にはゲーム業界の流れに乗り、テレビにつなげてコントローラーで遊べる商品が売り出され、急速に消費者に浸透していきました。2011年にはタッチスクリーンタイプが、ペンタイプはワイヤレスに姿を変え、2012年にタブレット式CLEMPADを発売し、今に至ります。

つまり、親世代、あるいはその上の世代が小さい頃にSAPIENTINOシリーズに親しんできた歴史があり、親としても、小さい頃から知っているSAPIENTINOシリーズのCLEMPADなら安心して持たせてあげられるという信頼感が根強い人気に結びついているのです。

2014年2月3日付イタリア有力紙レプブリカ紙経済版によると、CLEMENTONI社は90年代の知育玩具のブームをきっかけにドイツ、スペイン、フランスへと関連会社を展開。CLEMPADはイタリア国内にとどまらず、言語を変えてヨーロッパ全域に市場を広げ、会社の業績は右上がりに成長しました。2012年のタブレット発売時には、売り上げは6.4パーセント増の1億3300万ユーロを達成しています。

(出典)

■ヒットを支えたプロモーション広告とは?

CLEMPADは、幼児や子どものおもちゃとしてはイタリア人家庭にとって決して安いものではありません。レビューやサイト記事を見ても、このタブレットは特別なプレゼントとして選ばれていることがわかります。まだ、親戚で集まる機会の多いイタリアでは、親から子だけでなく、祖父母や親戚、知り合いなど贈り物を贈り合う機会が多くあります。50年という歴史の中で、常に知育玩具業界をリードしてきたCLEMENTONI社のSAPIENTINOシリーズの延長線上にあるCLEMPADは、“親や親戚からのプレゼント”として選ばれる下地が既にあったといえるのではないでしょうか。

さらに、この最新アイテムをアピールするテレビCMも、ユニークなストーリー展開で話題となっています。

CLEMENTONIのテレビCMは常に子どもが主役、そして家族を意識しています。

たとえば、少し前にはこのようなテレビCMが放送されていました。

大雨の中帰って来た父親がインターフォンを鳴らし、玄関扉を早く開けてくれと頼みます。しかしSAPIENTINOで遊んでいる子どもたちは、インターフォンでつながった父親に、SAPIENTINOのクイズを投げかけるばかりでなかなか開けてくれません。そのうち父親はずぶ濡れに…。やっと家の中に入れた父親は、怒るどころか「楽しく遊んでいる子どもたちは憎めないよね」、とでも言いたげな笑顔を見せます。

そんなユーモアがあり、心温まるコマーシャルは、大人たちに濃い印象を残しているのではないでしょうか。

(参考)

ヒットのきっかけとなったテレビコマーシャル(CLEMENTONI社チャンネルより)

(大ヒットしたペンタイプ)


(CLEMPAD)

もちろん贈り主の年代によっては、テレビCMやチラシよりもインターネットを介したプロモーションの方が有効な場合もあります。CLEMENTONI社はイタリアの会社には珍しく多くのSNS上に公式アカウントを設けています。HP内にはブログがあり、子育てに関する記事が記載されています。Facebookでは商品の紹介が毎日投稿され、インスタグラムでは待ち受け画面にも使えそうな写真や季節のグリーティングが投稿されています。Google+、twitter、Pinterestにも公式アカウントを持ち、積極的に情報を発信しています。こうしたSNS活用は若い親世代へのアピールに欠かせません。

ソフトは老舗のものでありながら、ハードはしなやかに時代に対応し変化していく。それがただの古臭いゲーム玩具で終わらず、親から子へと引き継がれ時代を牽引するキッズタブレットとして支持されている要因ではないでしょうか。イタリアでは不景気が長く続いていますが、その中で“売れ続けている”CLEMPADにはさまざまな意味で学ぶべき点が多くありそうです。

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