外出先で、スマートフォンの電池残量が残りわずかで困った経験はありませんか? 誰もが経験するこの「困った」を解消したのが、百貨店などの店内で行っている「無料スマートフォン充電キオスク」です。アメリカではここ数年、無料充電キオスク「ChargeItSpot」を多くの場所で目にするようになりました。
消費者にとってありがたいサービスを提供しながら、実は店舗や企業にとってもメリットが多数あるこの画期的なツールを分析します。

■無料スマートフォン充電キオスク「ChargeItSpot」の仕組みとは?

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百貨店の店内を歩いていると、縦長の自動販売機のような機械が、買い物客の目を惹きます。これが無料スマートフォン充電キオスク「ChargeItSpot」です。1機で8台のスマートフォンを充電できるこの充電キオスクは、使い方もいたってシンプル。まず、タッチスクリーンに電話番号を入力し、追加の認証として、画面の画像から一つを選択します。ロッカーにスマートフォンを入れ、充電コードを挿します。ロッカーは施錠され、他の人に盗まれる心配もありません。充電完了を待つ間、店内でゆっくりショッピングを楽しめます。充電を終える際は、タッチスクリーンに電話番号と認証の画像を再入力することで、ロッカーが解錠します。

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この充電キオスクを展開しているのが、ペンシルベニア州フィラデルフィアのスタートアップ企業、ChargeItSpotです。2011年に起業し、現在ではアメリカ全土35州とカナダのブランド店舗などで充電キオスクのリースを展開しています。6年間ですでに30万台以上の携帯端末を充電した記録をもつ、成長中のベンチャー企業です。
ChargeItSpotは、店舗のほか、トレードショーやカンファレンスなどのイベント会場、スポーツスタジアム、カジノ、そして病院の待合室などにも設置されています。

充電する際、スマートフォンに入っている個人情報が充電ケーブル経由で漏れてしまうのではと心配する方もいるかもしれません。しかしChargeItSpotはスマートフォン内の個人情報へのアクセスは一切されないため、安全に充電することができます。

また、ChargeItSpotは充電が30%以下になると、近くの充電キオスクを自動で見つけて知らせてくれるモバイルアプリのサービスも展開しています。スマートフォンを一日中使い続ける現代アメリカ人にとって、ChargeItSpotのサービスは、今後なくてはならないものになりそうです。

■企業側のメリットとは? 店舗での売上効果にもつながる!?

では、企業側がこのキオスクを使うメリットとはなんでしょうか?
Eコマース市場が拡大していくアメリカでは、店舗への来客数が年々減少傾向にあります。どうにかして消費者に店舗に足を運んでもらおうと、イベントやプロモーション活動など、さまざまな施策をしている状態です。

充電キオスクを利用すると、充電の間、消費者は必然的に店内にいることになります。調査の結果、消費者が長く店内にいればいるほど、購買率や購買額に大きく影響することが判明しました。

National Retail Federationによると、平均50分という時間が高級デパートのNeiman MarcusやBergdorf Goodmanでのキオスクでの充電時間です。さらに、サーチ会社GfKの調査では、充電キオスクを利用した顧客は、利用しなかった顧客の2倍の時間、店内にとどまり、当初の購入予定金額より29%多くお金を使っていたことがわかりました。同調査では、充電キオスク1台で年間約80,000ドルの売上アップが見込めるという結果がでたのです。

消費者は店内にいても、スマートフォンで通販サイトなどと比較しながらショッピングする傾向があります。充電キオスクでスマートフォンを充電している間は、他の情報が入らず、消費者が店内の商品だけに集中するという点は非常に大きなメリットです。充電キオスクは、企業側にとっても直接売り上げに繋がる確かな店舗ツールとなっているのです。

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■「ブランドマーケティング」という観点からの企業側メリットとは?

さらに、充電キオスクはマーケティングの観点から見てもさまざまなメリットがあります。その一つが、キオスクのタッチパネルスクリーンです。このスクリーンは、店内のセールの宣伝をしたり、近くのレストランのスペシャルオファーを表示したりと、広告としての機能も果たしています。

また、キオスク利用時に任意でメールアドレスを入力した人に向けて、企業がセールやディスカウント、イベント情報などのメールを送り、新たな顧客情報の取得方法としても役立っています。

ChargeItSpotでは、2017年より新しいマーケティングサービス機能として「Quick Poll」という、タッチパネルを利用したオンラインアンケートを始めました。「The Drum.com」の記事によると、サービス開始後の1週間で、24台のキオスクから3,700ものアンケート回答を得て、70~90%という高い回答率となりました。この機能を活用することで、消費者の真のブランドロイヤルティを測定することも可能です。

今や、アメリカ人の90%がモバイルフォンを持つ時代(※)、無料で充電できる充電キオスクの需要は、アメリカではますます高まり、キオスクを活用した新しいビジネスやマーケティングも誕生していくでしょう。

※Pew Research Center Internet Project Survey調べ


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