テクノロジーが変える販売促進!アイトラッキングやIoTで収集した顧客行動データを活用する技術とは?

消費者の行動には、消費者自身も明確には理解していない「本音」が現れることが少なくありません。こうした無意識の本音を読み取って分析することで、マーケティングや販促に役立つ貴重な知見を得られる場合があります。例えばIoTデバイスの1つである「アイトラッカー」と呼ばれる道具を利用して顧客の視線の動きを調査・分析すると、商品の陳列やパッケージの印象、カタログ、DM、Web画面などのレイアウト、デザインといったさまざまな消費者のタッチポイントに関して、思いがけない課題が浮き彫りになることがあります。

この記事では、アイトラッカーを用い、特に店頭における顧客の視線の動きから顧客の心に潜む本音を探る手法について解説します。また、顧客行動を店頭販促や集客に活かすその他のIoT事例もご紹介します。

顧客も知らない顧客の本音

私たち人間は朝起きてから夜眠りにつくまでの間にさまざまな行動をとりますが、こうした行動のすべてを意識的に行っているわけではありません。米ニューロ・フォーカスのCEO、A・K・プラディープ氏は自著の中で、脳の情報処理の最大95%を潜在意識が行っていると明かしています。

参考:マーケターの知らない「95%」 消費者の「買いたい! 」を作り出す実践脳科学

例えば、目の前に並んでいる2つのよく似た商品のうち、ふとどちらか片方を手に取った直後に「なぜそちらを選んだのですか?」と尋ねられたら、明確な答えを返せない人は少なくないでしょう。しかし、「なんとなく」選んだだけのつもりでも、無意識下ではそちらを選ぶためのいくつもの意思決定が行われているのです。

こうした無意識の行動を何らかの形で読み取り、その結果を分析することで、マーケティングや販促に役立つ貴重なヒントを得ることが可能となるのです。

アイトラッキングによる視線計測とは

こうした無意識下の行動を計測するための手法のひとつが、アイトラッキングです。

アイトラッキングは、アイトラッカーと呼ばれる専用の装置を用いて消費者の視線の動きを計測し、その結果を解析して知見を導き出す手法です。店頭調査では、視線の動きや方向などを検知する特殊なゴーグル型、あるいは眼鏡型の機器(アイトラッカー)を被験者に装着してもらい、対象物を見る際の視線の動きを計測します。

例えば、被験者にアイトラッカーを装着した上で店舗のエントランスから入って店内を歩いていただき、任意の製品群が並んでいる棚の前まで行った際にまずはどこに視線が向いたのか、どのぐらいどの順番で見たのか、そこから最終的に何を手に取ったのか、といったことを計測・記録していきます。さらに視線計測後にインタビューを行うことが多く、「なぜ見たのか」あるいは「なぜ見なかったのか」を明らかにし、被験者の無意識を探ることで店頭の課題を把握していきます。

アイトラッキングをWebサイトの設計に利用するケースも多く見られます。この場合は、PC装着型のアイトラッカーを使います。アイトラッカーを装着したPCを通して被験者にWebサイトを閲覧してもらい、視線がどのように動くかを把握したうえで、もっとも見てほしい情報やページにうまく視線を誘導できるよう、動線上にコンテンツ、情報を配置します。Webサイト設計のノウハウとして有名な「サイト閲覧時のF字型視線動向」も、こうした実験・分析の結果から導き出されたようです。

なお、アイトラッカーによっては瞳孔の大きさや脳波(脳血流)も同時に測定できるもの、脈拍や体温など生体反応を測定する機器と組み合わせた測定方法などもあります。マーケティングは今や人間の五感すべてを測定した上で仮説を組み立てる、科学的なアプローチを用いるようになっています。

視線計測の結果を店頭販促に活用する

アイトラッカーを用いた計測とインタビューを任意の被験者数で実施し、得られた結果を分析していくと、「どの棚に置いたものが目を惹きやすいか」「最終的に買わせたいものはどこに置くべきか」といった傾向を導き出すことが可能です。そのようにして得られた知見を利用すれば、店頭における商品ディスプレイやパッケージ、棚の配置、商品POPのデザインや配置などを検討する際に役立てることができます。例えば、視線の動きを活性化するために、消費者の目を引きやすい商品はなるべく分散した配置にする、またあまり視線が向かない「デッドスペース」の対処には、視線を誘導する案内パネルやPOPを適正な場所に設置する、といった知見の活用が考えられます。

また、顧客が商品を手に取って購入する(レジに並ぶ)までの様子をトータルで観測することで、購買プロセスを把握することも可能です。アイトラッキングの結果をもとに仮説を立て、改善策の実施・検証といったPDCAを繰り返していくことで、店頭販促戦略の改善に役立てていくことができます。

アイトラッキング検証の具体例

アイトラッキングは、店頭におけるディスプレイ以外にも、さまざまな業務の改善に活用できます。ここでは、業務改善に向けての検証にアイトラッキングが使われた例をいくつかご紹介します。

コールセンター業務改善

スキルの高いコールセンターオペレーターの技術を共有するために、アイトラッキングを活用した例です。アイトラッキングのほかにインタビューとアンケートを実施し、また、オペレーターの姿勢、視線、キーボード操作の撮影も行うことで、オペレーターの処理能力を検証しました。その結果、オペレーションのスピードと視線の動きには高い関連性があることや、スキルの高いオペレーターの視線の動きは規則性があり安定していることがわかりました。

通販ユーザーの行動調査

通販カタログで買おうと思うポイント、または買わなかった理由は何かを明確にするためにアイトラッキングを活用。競合5誌の印象と当該カタログとを、アイトラッキングおよびアンケートによって比較したところ、デザインや訴求ポイントに勝ちパターン(ベンチマーク)を発見できました。

申込書改善

保険会社の申込書をアイトラッキングによって検証。申込書の不備率が高く、途中脱落者が出ている現状の改善を目指しました。検証の結果、視線が左右によく動く申込書は不備が少ないことを発見。補助線やチェック欄をうまく配置することで申込書を改良しました。さらに、具体的な記入例やわかりやすい但し書きで、視線の滞留個所(モチベーションダウンポイント)がなくなるようにしました。

DM改善

カード会社のDMレスポンス率がじわじわと低下していたため、現状の課題から新デザインを開発。新旧デザインをアイトラッキングで比較検証しました。アンケートやインタビューも併せて実施した結果、各誌面でのIポイント(興味を引き付けるポイント)が視線を活性化していることや、高級感を意識し過ぎた「暗さ」よりも読みやすい「明るさ」の方が好印象であることなどがわかりました。

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データがマーケティングの鍵を握る

アイトラッキングの例に見られるように、データを収集・解析し、分析結果から知見を導き出すのはマーケティングの伝統的な手法ですが、近年になってデータの重要性はますます高まってきています。IoTが追い風となり、SNSなどから得られるソーシャルデータ、 IoT機器から得られるセンサーデータなどがデータ分析の世界に登場し、マーケティングに活用できるデータの幅は日増しに広がりつつある状況です。実際にどのようなIoT事例があるか、次項から見ていきましょう。

IoTを活用した販売促進・販売活動のアイデア

近年、販売促進や販売活動におけるIoT活用の事例が増えています。そうした活用例には新しい技術をプロモーションに活かすためのヒントがたくさん含まれています。ここでいくつかご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

「サントリー GREEN+(グリーンプラス)」

サントリー食品インターナショナル株式会社による、社員の健康増進のためのポイントサービス。オフィスに設置される専用の自動販売機(IoT自動販売機)で飲料を購入すると、IoTデバイスのSmart Beacon®が反応し、スマートフォンのアプリ内にポイントが貯まる仕組みになっています。また、規定の歩数以上歩くことでもポイントが貯まり、貯まったポイントでサントリーの“トクホ飲料”に交換できます。販売促進と健康増進という2つの目的を1つのアプリで達成できるというアイデアが秀逸です。

SUNTORY GREEN +

「インテリジェント・ラベル」

SBクリエイティブが「リテールテックJAPAN 2018」の日本マイクロソフトブース内においてデモを披露した、インストア向けのIoTデジタル販促サービス。商品棚にTOF(Time of Flight)センサーを設置し、来店客が商品を手に取ると、それに合った情報をデジタルパネルに表示できます。このセンサーによって得られるデータから、来店客の数のほか、それぞれの客の移動速度や方向なども知ることができます。販促とデータ収集を同時に行うことができ、効率的です。

インテリジェント・ラベル|SB Creative

「つながるファーマーズ」

日本ユニシスの提供する直売所販売支援サービスで、松本ハイランド農業協同組が2017年11月に実証実験をスタートさせています。農産物直売所にIoTカメラを設置し、生産者がスマートフォンアプリを通して売れ行き状況をリアルタイムで確認できるようにしたものです。適切なタイミングでの出荷作業が可能になり、販売活動の支援につながります。

日本ユニシス JA松本ハイランドと、AIを活用した直売所販売支援サービス「つながるファーマーズ™」の実証実験を開始|日本ユニシス

IoTを活用した集客のアイデア

IoTは販促活動の一環となる“集客”にも活用されています。以下、2つの例をご紹介します。

GMOリピーター

GMOコマース株式会社によるリピート販促サービス。自動で来店履歴の取得や分類を行い、顧客一人ひとりに合わせた情報発信ができます。BeaconやWi-Fiで、「どの顧客がいつ来店したのか」のデータを自動で取得し自動でメルマガ配信やアプリへのプッシュ通知を行います。

GMOリピーター

VACAN

株式会社バカンによる、商業施設の空席情報を提供するサービス。IoTとAIを活用して店舗の空席状況をデジタルサイネージに一括表示することで、店舗の混雑状況が一目でわかるようにしています。曜日別、時間別の客入り傾向を分析し、運用の最適化も行います。

https://www.vacanapp.com/

以上、今回の記事ではアイトラッキングの概要・応用例やIoTを活用した販売促進、集客などのアイデアについて紹介しました。
ぜひ、アイトラッキングやIoT技術をはじめとした新しい手法を取り入れて、貴社のマーケティング戦略に新しい風を呼び込んでみてください。

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