お客様との良好な関係性を構築し、効率的な顧客分析を可能にする「CRM」。いまやビジネスに欠かせないツールの1つになりつつあります。

この記事では、CRMの導入を検討されている方に向けて、まずCRMとは何か、今なぜCRMが重要視されているのか、そして、CRMの導入によってどのような効果が見込めるのかを説明します。そして、それらの基礎知識をベースに、CRMに蓄積したデータを用いた顧客のセグメンテーション手法について解説していきます。

そもそもCRMとは?

近年ビジネス分野で注目が高まるCRMですが、実はどのようなものかよく分からない……という方も多いのではないでしょうか。まずは、簡単におさらいしてみます。

CRMとは、企業が顧客一人ひとりを識別し、長期的に良い関係を築いていくための手法、あるいはそうした取り組みを指して使われる言葉です(※1)。 Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の頭文字3つを並べたもので、日本語では顧客関係管理と訳されています。

顧客を「顔のない群衆」ではなく一人ひとり個性を持った個人のお客様=「個客」として識別・把握すること。そして、そのように識別した顧客の満足度向上を図り、同時に企業の利益を高めていくことが、CRM導入の究極的な目的です。

CRMでは、顧客を識別するために、顧客一人ひとりに対して固有の ID(顧客番号/会員番号)を付与し、そのIDとひもづけて顧客のさまざまな情報を蓄積・管理するといった手法が取られます。顧客とのより良い関係性を保つための一連の活動は、一般にはマーケティングの一貫と考えられています。けれども、CRMはマーケティング領域のみにとどまらず企業が全社を挙げて取り組むべき活動であり、経営戦略の一貫として捉えるべきものでもあるといえるでしょう。

(※1)CRM活動を支援する情報システムを「CRMシステム」と呼びますが、場合によってはシステムそのものを「CRM」と呼ぶケースもあり、文脈によって使い分ける必要があります。

なぜ今CRMが必要なのか

CRMの重要性への認識は年々高まっています。

その背景にはいくつかの事情が考えられますが、ひとつには生活者のライフサイクルの多様化、そして消費行動の変化を挙げることができるでしょう。

インターネットの普及により、生活者が入手することのできる情報は格段に増えました。生活者はかつてのように企業が一方的に発信する情報を受動的に受け取るだけでなく、インターネット上からさまざまな情報を容易に入手できるようになったとともに、「購入」の時間や場所も多様化しました。

また、生活者自身が、気に入った商品やサービスの情報をTwitterやFacebookなどのSNSを通じて友人や知人にシェアするのが、ごく当たり前のこととなりました。

そのため、以前に比べて企業からの一方通行のコミュニケーションは届きにくくなり 、双方向のコミュニケーションを前提として、顧客との間に良い関係性を構築・維持していく必要に迫られています。

市場の成熟や国際化の進展に伴って、企業間の競争が激化していることも、CRMが重視されるようになってきた背景として大きな事柄です。市場にひしめく競合他社に打ち勝って自社のシェアを確保するためには、継続的に新規顧客を獲得し続けるとともに、既存顧客との良好な関係性構築に注力し、長期的に上位顧客へと育成することが非常に重要だからです。

CRMの導入で期待できる効果

CRMの導入で、どのような効果が期待できるのでしょう?

ECサイトやメールなどのオンライン上のコミュニケーション、実店舗や電話での問い合わせなどのオフライン上でのコミュニケーションなど、さまざまなチャネルで接点を持つ顧客を、一元管理することからCRMは始まります。顧客を「個客」として捉えて、オンラインとオフラインを合わせた購買履歴や問い合わせ履歴などの「行動」と「顧客情報」をひもづけることで初めて、複数のチャネルを通じて接してくる顧客に対して適切なアプローチを提供することができます。

例えば、同じビタミン剤を購入する顧客でも、初めて購入した層と、美容系の商品を複数回購入している層とでは、効果的なアプローチ方法は当然違ってきます。CRMにより蓄積した過去の購買履歴などの情報を分析することで、「ニーズに合った商品」を「適切なタイミング」で提供していくことができ、顧客満足度は格段に高まります。同時に、狙った層に対して効果の高いアプローチをかけることが可能となるため、マーケティング活動の費用対効果を高める効果も狙えるでしょう。また、CRMの取り組みを通じて蓄積される情報は、その後の事業戦略の立案のための、価値ある資産となっていくはずです。

「顧客」は、企業が利益を上げ続けていくために何よりも大切な存在です。CRMの導入により、顧客を「顔の見えない群衆」ではなく「個性のある一人の人間」として捉え、パートナーとして長きにわたって良い関係性を構築・維持していくことが可能となるのです。

CRM導入のゴール

では実際にCRMの導入を検討する際には、そのゴールをどこに設定するとよいのでしょうか。

顧客一人ひとりの購買上のステータスを把握し、それぞれに最適なオファーを提示することで購入につなげることも、短期的には大切な目的のひとつでしょう。しかし、CRMの最大の目標は「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化」です。顧客との間に良好なリレーションを構築し、顧客に提供できる価値(バリュー)を最大化させることこそが、CRM導入の最重要目的だといえます。

この目的に取り組むにあたっては、一人ひとりの顧客の属性を把握するのはもちろんのこと、自社の製品・サービスに関する購買活動が現在どのような状況であるかを把握し、可視化する必要があります。つまり、「顧客のセグメンテーション」を実施するのです。

そのための基本的な手法として広く用いられているのが、「RFM分析」です。

RFM分析とは

RFM分析は、顧客の購買履歴をもとに購買力などを評価する手法です。

R(Recency/最新購入日)、F(Frequency/購入頻度)、M(Monetary/累計購入金額)の3つを指標として顧客の購買行動を分析し、顧客のセグメンテーションを行います。

20170704顧客.pngRは「最後に購入してからどれくらいの期間経過しているか」、Fは「これまでに何回購入したか」、Mは「累計でいくら(何円)購入したか」を表し、この3つの指標を組み合わせて分析することで、自社にとっての優良顧客・重点対策顧客を見つけ出すことができます。

RFM分析を行う際には、顧客の購買履歴をもとにR、F、Mのそれぞれに対してランク付けを行い、あらかじめ決めておいた基準に基づいて計算して順位をつけたうえで、顧客をいくつかのセグメントに分割します。

ポイントはランク付けの方法

ランクは一般に5段階でつけられることが多いのですが、1~5のそれぞれの値に具体的にどういう層を割り当てるべきかは扱っている製品やサービスによって異なります。赤ちゃんのおむつのように低価格で頻繁に購入される商材と、自動車のように高額で数年に一度程度しか買い替えない商品とでは、R、F、Mそれぞれの値に対する考え方は当然違ってくるでしょう。製品・サービスの特性に合わせて基準を変えることで、セグメンテーションの精度が上がります。

顧客分析をどのように活用するのか

このようにRFMなどの手法を用いて顧客分析を行ったら、個々のセグメントに対して適切な施策を打っていきます。

施策の内容もケースバイケースですが、例えばF、Mの値が高く、Rの値が低い顧客は、かつてはたくさん買い物をしてくれたが、最近は足が遠ざかっている顧客とみなすことができます。そのようなセグメントに対しては、「お得意様限定のシークレットセール」のように、再来店を促す施策を試してみるとよいかもしれません。 あるいは、Rの値が低いということは、その顧客の年齢が上がったために、生活の環境や必要としているものが変化しているかもしれません。セグメントごとに同じ施策を行った後に、そうした個々の顧客の事情に合わせて新たな施策を実施していくこともできます。

逆に、Rの値が高く、F、Mの値が低い顧客は、最近初めて購入した新規顧客とみなすことができるので、「今回しか買えない限定セット」や「会員登録から一か月間のみ有効な期間限定クーポン」などを提供して、未来の優良顧客に育成していくことが必要となります。 このときも、CRMのデータなどを活用しながらそれぞれのセグメントをさらに細かく分けた施策を行うこともできるでしょう。例えば、「今回しか買えない限定セット」を、年齢層ごとに何種類か用意するといったことが可能です。ただし、セグメントを細かく分けるとそれだけコストもかかるため、費用と効果のバランスに注意することも大切です。

施策実施のタイミングもポイント

RFM分析においては、R、F、Mそれぞれの数値の変化を追うことができます。RやFの値が低くなってきた顧客に対しては、休眠顧客となるのを阻止するために、早めに対策を打つことがポイントとなります。

すべての顧客に対して一律の施策を打っても高いレスポンスは期待できませんが、しっかりと顧客分析を行い、それぞれのセグメントに対して適切な施策を打つことで、無駄なコストを掛けることなく、打った施策のレスポンス向上を見込むことが可能となります。

RFMだけではなく、多軸での分析を

RFM分析は伝統的な購買活動分析手法であり、正しく取り組むことで一定の効果を上げていくことができますが、昨今では購買履歴以外にもWEBやソーシャルでの活動履歴などを含めて、総合的に分析する手法も発達してきています。

データの分析・活用技術は、日々進化し続けています。

CRMを通じて収集・蓄積したデータからより深いインサイトを得て成果につなげていくために、高度な分析までを視野に入れた専門的なソリューションの導入も、ぜひ検討してみてください。

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